【編集部オススメのチャットボット】SYNALIO 事例詳細|つなweB

 

潜在層にはオートリプライ機能

「SYNALIO」は、オートリプライを主軸に据えた、人工無脳型のチャットボット。開発力だけでなく、開発スピードでも定評のある(株)ギブリーが昨年11月にリリースし、今年7月にもいくつも追加機能の実装を発表したばかり。SYNALIOがユニークなのは、チャット形式による質問にも応答できる仕組みは備えておきながら、推奨する利用方法は、想定される「知りたい内容」を選択肢に集約して、自動応答できる仕組みのみで展開することだ(01)。

昨今のチャットボットへの風潮は、人工知能を搭載しない人工無脳型でも、ある程度の自由度がある文字入力に対応し、自動応答できるかどうかを気にしがちだ。SYNALIOは、人工無脳型を採用して開発コストを抑制し、月額の運用コストもより低く設定しながら、さらに他の人工無脳型と明確に一線を画した使い方といえる。

「私たちの目的はチャットボットづくりではありません。“マーケティングツール”を提供したい考えのもとで、開発したのがSYNALIOです」(大熊勇樹さん、以下同)

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01  目指す姿はマーケティングツール
「SYNALIO(シナリオ)」は、人工無脳型チャットボット。オートリプライ機能を中心に、潜在ユーザー層へのリーチや興味喚起、実名データを持たない匿名ユーザーを育成するマーケティングツールとして開発。初期費用9万8,000円(税抜)+月額5万円~(税抜)で利用できる

 

CVアップに徹したチャットボット

つまり、コンバージョン(CV)のアップを徹底的に意識したソリューションとしてSYNALIOというサービスを公開した、ということだ。

「従来のチャットボットは、CS(カスタマーサポート)の有人化の代替に力点を置くケースも多いですが、もっとCVを導くことを目的化して、その前提に立って最適なUXや機能を追求し開発しました」

SYNALIOは、コメント入力欄も設置可能で、有人切り替えにも対応できる機能も搭載しているが、意識的にコメント入力欄の実装を推奨していない背景には、CVアップへの強い意識があってこそだ。

「コメントを入力するユーザーは、その対象に対して顕在度がかなり高いと想像できます。あまり関心がないユーザーや、ふらっと訪問したユーザーに対して、コメント入力を求めるのは相当大きなハードルがある、と考えています。入力したコメントの精度を追求するAIではなくて、潜在層でも比較的先に進みやすいUXを意識していくと、ある程度知りたい項目が並んでいて、ボタン遷移だけで進んでいける仕組みに徹したほうが“ターゲットファーストになる”と判断しました(02)」

確かにボタン遷移だけで知りたい情報がつかめるなら、ライトユーザーほど楽でありがたい方法だ。そうしたインサイトを追求したツールがSYNALIOといえる。

02 ライトユーザーを取り込みコンバージョン(CV)へとつなぐツール
SYNALIOがユニークな点は、CVを意識したツール設計。文字入力=一定の関心層(顕在層)、というハードルに着目し、ハードルを越えがたい潜在層にリーチしやすい仕組みとして、意図的にオートリプライ機能を前面に出している

 

使いやすい、操作しやすいUX

SYNALIOの導入に適した商材やサービスについて尋ねると、「検討期間が長い商材やサービス」「潜在層を掘り起こしたいケース」に向いていると話す。

「安価な消費財をはじめ、自分一人で判断しやすい商品は、もともとチャットボットに頼らずとも判断できるでしょう。慎重に検討を進める必要がある商品や、誰かに相談しながら進めたい案件にSYNALIOが活きてきます。例えば不動産、塾やスポーツジムの入会施策など、何度も買い換えたくない対象についてです。気軽に接触できるコンタクトポイントになるので、分母を増やしながら、徐々にエンゲージメントも高めていく過程で、力を発揮します」

実際の現場に即した場面を見ておこう。ユーザーの立場では、任意のサイトに訪問すると、数秒後にSYNALIOのチャットボットウインドウが起動。ウインドウ内にはユーザーが気にしやすい項目が複数並んでいるので、後は選択肢を選んでコンテンツへとたどりつけばいい(03)。

一方、導入する側が気になる管理画面も、直感的に操作しやすいUXに基づく設計。各ユーザーをクッキーで管理し、クッキーの履歴にあわせてラベルの付与が可能となっている。再訪ユーザーなら、再訪回数に応じて、質問や選択肢の内容を変えてアプローチすれば、ユーザーの要望により近い対応も可能になる。ラベルごとでシナリオを決めておけばいいのだ(04)。

03 WebサイトでもLINEでも利用可能
Webサイトの場合、訪問後の数秒後を目安に(時間は導入側が任意に設定可能)チャットボットが起動。想定ユーザーの気になる項目がリスト形式で並び、任意のボタンを選ぶと詳細ページへと遷移する設定が可能だ(左)。LINEとの連携も可能で、LINEで会話を進めるとSYNALIOが起動する(右)
04 企業担当者が操作しやすい管理画面
管理画面は、専門的な知識が乏しい担当者でも操作しやすいUX、という設計思想で開発された。例えば「シナリオ設定」だと、項目同士をつなげていく簡単な操作で設定が完了。操作時間を短縮できるので、その分を全体設計や戦略面の検討にまわしていけばいい

 

「匿名マーケティング」の追求

ギブリーは、SYNALIOによるアプローチを「匿名マーケティング」と呼び、周知を図っている。ピンと来づらいなら、「実名データを持たないユーザーへの最適なマーケティング」と言い換えていいだろう。

「メールアドレスや実名データの取得はできるに越したことはありませんが、実名データ以外のことが把握できなければ、結局成果は見込めません。むしろ、実名データがない“だけ”で、それ以外の行動履歴、過去の会話ログを分析できており、匿名ユーザーごとで効果的なアプローチを最適なタイミングでできるようにしておけば、潜在層の顕在化にもつながります(05)」

SYNALIO自体が、予算や人手の限られた中小企業にとって現実的で検討しやすい提案にもなっている。企業規模を問わず事例が増えている背景には、SYNALIOが現場の現実にフィットしやすい運用コストと、成果に紐づける利用方法で成り立つからだろう。マーケティングツールの新基軸となるか? 今後の展開が楽しみだ。

05 SYNALIOがユーザーにどう接触するのか
一般的に、Webサイトへの初訪問ユーザーの大半は離脱する。各離脱ユーザーをいかに再訪問させてホットリード(見込み顧客)化できるか。そこで、各段階のユーザー(青)に最適な動き(オレンジ)で働きかけるのがSYNALIO。セグメント管理に徹する場合、SATORI社のMA(マーケティングオートメーション)との連携も可能だ

 

 
遠藤義浩
※Web Designing 2018年10月号(2018年8月18日)掲載記事を転載

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