2018.07.27
360度のオフィス体験で新入社員気分が味わえる 応募者数が昨対比120%に!
博報堂アイ・スタジオにおける新卒採用の課題は具体的な業務内容がイメージしづらい「総合職」をいかに募るかであった。その課題に臨んで出された解答は「360度の臨場体験」であった。
実際の社員目線から、会社の業務内容や空気感を伝える
デジタルクリエイティブに特化した制作会社である博報堂アイ・スタジオでは、一般的な企業と同様に新卒と中途採用を例年実施している。生活者体験(CX)視点のエグゼキューション(制作手法)提供でクライアント企業の課題解決支援を行う同社では、他社にはない工夫を凝らした採用サイトを構築し、学生に新しい体験を提供したことで注目を集めている。
2019年新卒に向けた採用サイトのコンセプトは「ONE DAY at the Office」という博報堂アイ・スタジオのある日の打ち合わせのシチュエーションをWebブラウザー上で疑似体験できるというもの。しかも、そこに登場する人物は、すべて実際に博報堂アイ・スタジオで受託したプロジェクトを動かしているメンバー本人であり、それぞれの一人称視点に切り替えられるというユニークなインタラクションを得られる。さらに画面上をクリックまたはタップしたままドラッグすれば、視点を360度動かすことが可能で、あたかもプロジェクトメンバーの一員になったかのような体験が得られるのだ。
「採用サイトに訪れたときの最初の体験でここまでやらなければ、学生さんに会社の“空気感”は伝わらないと思った」と語るのは採用サイト制作のプロジェクトリーダー堀井正紀さんだ。

総合職の理解を深めるための施策
しかし、そもそも採用サイトになぜそのようなギミックを導入したのだろうか。その背景には博報堂アイ・スタジオの昨年度の採用で起きた出来事が関わっている。現在、約350名の社員を擁し、毎年20名程度の新卒社員を採用する博報堂アイ・スタジオ。前年度はエンジニアやデザイナーの採用に力を入れていたが、売り手市場の中、それ以外の職種での志望度を思うようにあげられないといった事態が発生した。
人事部でその理由を調べていくうちに、同社の「総合職」にあたるプロデューサーやディレクターといった職種の理解が、エンジニア職やデザイナー職と比べて深まっていないのではないかという課題が浮上してきたのだ。
確かに、すでに働いている社員にとっては自明なことであっても、職務経験の乏しい新卒学生にはディレクターとプロデューサーの役割の違いをきちんと理解するのは難しく感じられる。そこで、堀井さんらのチームでは、前年度に新卒入社した社員からのアイディア出しなども受けながら、それぞれの職種の具体的な仕事内容を疑似体験できるサイトの構想を固めていった。それを実現する表現手段として登場したのが前述の視点を360度動かせる採用サイトだ。
「FPSゲームのような視点で動的なギミックを出しつつも、仕事内容や視点をしっかりと理解できるだけの情報の深さも追及しました。そのリアリティを出すために行ったのが、実際に私たちが行っている案件を見せるというものでした。プロデューサーがどのような思いでプロジェクトに取り組んでいるのか、ディレクターがどの部分に気をつけて進行しているのかといった詳細をきちんと見せていくために、それぞれの視点を切り替えられる表現が最適ということになりました」とプロデューサーの川﨑大地さんは語る。
