2018.07.24
プロが語る採用の潮流 人材確保のヒントがここに
買手市場から売手市場へと激変してきた採用事情。しかし、こうした流れは過去にもあったはず。これまでの採用を振り返り、「いま、本当に必要な採用手法」のヒントを探ります。
今も昔も主流は採用ナビ
厚生労働省が今年1月に発表したデータによると、2017年平均の有効求人倍率は1.50倍。8年連続で上昇を続け、過去最高だった1973年以来44年ぶりの高水準となっています。
人口減少、景気回復による採用意欲の向上、働き方改革など、いくつもの要因で大きく変化しつつある雇用事情。では、新卒を中心とした採用の手法はどのように変化してきたのでしょうか。人事の最新動向を調査するProFuture株式会社/HR総研の首席研究員、松岡仁さんは言います。
「実は採用手法のメインストリームは、ここ20年ほど変わっていません。1990年代後半から2000年代に入ってからは、マイナビなどに代表される『採用ナビ』や、自社のWebサイトが新卒採用のメインストリームであり続けています。企業はまずWebでプレエントリーしてもらい、興味を持った学生を会社説明会やセミナーに呼んで詳しく説明する。そして興味を持った学生にエントリーしてもらい、書類選考を経て面接、採用するという流れです。それ以前は、Webではなくハガキで資料請求したなどの違いはあるにせよ、企業側の手法に大きな変化はありませんでした」
この頃の手法を象徴するのが、『母集団積み上げ方式』という考え方です。例えば、今年は何人採用したいから、採用予定人数の何倍の人に内定を出し、さらにその何倍の人と面接するため、会社説明会はこれだけの人数を集めなければいけない・・・と母数を積み上げていく考え方です。そのため、企業はいかに多くの学生にプレエントリーしてもらうかを重要視していたのが、従来の採用手法だったのです。
人は欲しいがハードルは下げない企業側
では、企業側と学生側のマインドはどのように変化しているのでしょうか?
「学生のマインドでいうと、今も昔も景気に関連している部分が大きいと言えるでしょう。学生は景気がいいと、大手志向になります。これは企業の求人数が増えることで、『自分も入れるのでは』と考える学生が増えることが背景にあります。これを象徴するのがバブルの頃で、当時は新卒の約3分の1が上場企業に入社したと言われています。一方で、雇用側のマインドは大きく変わっています。バブル期の頃は、採用計画を何が何でも達成することが命題でしたが、いまはそうではありません」
いま、少なくない企業にとって課題となっているのが、バブル期に採用した社員の処遇。採用のハードルを下げて大量に採用した社員が今、企業の「負の遺産」となって重くのしかかっているケースも少なくありません。こうした過去を踏まえて、「人材は欲しくても、採用のハードルを下げない」のが、今の企業側だと松岡さんは指摘します。
「1人でも多くの人材を獲得したいが、採用のハードルは下げない」
こうした企業の思惑から、今、採用手法に大きな変化が生まれつつあります。それが「インターンシップ」と「逆求人型サイト」。次頁でこの動きと背景を詳しく見ていきましょう。