面談の裁量権は現場のメンバーに委ねよう!5つのメリットを解説 事例詳細|つなweB

いまどきの成功パターンとなる面談の流れ

最初の面談を終えて次に進みたいと思ってくれた候補者には、現場のメンバーに面談をしてもらいます(01)。まずは、候補者が入社した場合に所属する部署のメンバーが良いでしょう。というのも、企業にマッチする候補者とは、社内のコミュニティに馴染み結果的に高いモチベーションで働くことができる人と言い換えられるからです。

01 面談の流れ
一次面談では社長や広報などが自社プレゼンを行い、二次では担当部署の上司などが業務説明を行う。三次では候補者と近い立場の人や候補者が興味のあることに詳しい人がより詳細な業務説明を行い、採用したいということになれば人事や社長がオファー面談を行うというのが最近では王道の面談の流れです

そのため、一緒に働くことになるメンバーが、不快に思うポイントや仕事への温度感などにミスマッチなところはないかを判断するのが適切です。候補者にとっても、より具体的な業務内容や仕事の様子などを聞くことができます。彼らが知りたいのは、入社後に自分をとりまくコミュニティや具体的な仕事内容、どんな人がいるのか、続けていくとどんなキャリアステップが歩めるのかといったことだからです。ここでの裁量権は、面談を担当したメンバーが持ちます。

さらに次に進む候補者には、より近い立場のメンバーが面談を行うのが望ましいです。年齢が近かったり、前職の業種が類似していたり、チャレンジしたいことが一緒だったりといった観点から、候補者にあわせて柔軟に対応します。それまでも、候補者に心理安全性を保って本心を話してもらうための配慮をしているのですが、やはり社長や未来の上司にあたる人には多少なりとも遠慮をしてしまうものです。より自身に近い立場の人との面談で、さらに疑問点や懸念点を聞きやすくなり、自身が入社後に働く姿をイメージでき、共感を得やすくなります。この段階でも当然、面談を担当したメンバーが裁量権を持ちます。

また、面談で得られた候補者の特技・興味関心情報から、その話題に強い現場メンバーに担当してもらうというのも一つの方法です。候補者の状況にあわせて、最適なメンバーが面談を行うためにも、社内で「タレントマネジメント」をしているとスムーズです(02)。これはメンバーのタレント(才能、スキル、資質)を把握しておくことで人材開発・組織開発に活かすことができるものです。都度、状況にあわせて、どのメンバーが面談をするとよいのかを考えるのに適しています。

02 タレントマネジメントツール
カオナビなど、タレントマネジメントツールも登場しています。社内メンバーのスキルセットやゴールデンサークルを明らかにするだけではなく、候補者との共通項から最適な面談担当者を探すことが可能です。また、社内の人材育成や評価、異動シミュレーションなど、さまざまな用途で活用できます

候補者の関心を高め、入社への意思を強くさせる中で、同時に候補者がどこに懸念を抱いているのか、他にも面談している会社があるのかといったヒアリングをしていきます。そのヒアリングに応じて面談を重ねるのか、クロージング(入社の意思を固めてもらうための施策)に入るのかを判断します。そしてぜひ入社してほしいという結論になったら、社長や人事が内定をオファーする面談を行い、その候補者にどんなことを期待していて、いかに入社してほしいかなどを伝えて最後の一押しをします。このとき、候補者の志向性や価値観を把握して、自社に勤務することによってどのようなメリットを最大化できるのかを具体的に伝えることが大事です。場合によっては、気楽に話ができるように食事会をセッティングすることもあります。

クロージングまでに行う面談回数は企業によって違いますが、近年採用がうまくいっている企業では、主にこうした流れで面談を行うのが王道パターンになっています。従来は、面接の回数を重ねるごとに偉い人が出てくるのが主流だったので、まるっきり逆の流れになっているというわけです。

各面談で得られた候補者の情報は社内で共有し、次の面談担当者に引き継ぐようにしましょう。最初の面接ではまだ候補者との関係性が築けていなかったのでここまで聞けなかったら、次の面談で聞いてほしい、というような連携も取りやすくなります。

 

面談担当者との事前オリエンテーション

現場のメンバーに面談をしてもらう際には、事前にオリエンテーションをしておくとよいでしょう。注意してほしいのは、会社として「こういう話をしてください」「こんなことは言ってはいけない」という趣旨のものではないということです。基本的には、面談を担当するメンバーの思うまま、会社のネガティブな面も含めて正直に話してもらいます。ただ、自社の採用活動の目的、そこに自身がどんな目的・使命のもとに関わっていて、どういう観点から候補者の採用・不採用を判断すべきなのか、自社に対する他のメンバーとの共通認識の確認、候補者への適切な情報提供などについてしっかり理解しておく必要があります。現場のメンバーも面談のプロではないので、こうした事前準備をきっちりしないと、志望動機を尋ねる従来の面接のような場になってしまいかねません。オリエンテーションでは、以下の内容について話しあい、意見をまとめておくとよいでしょう。

(1)目的
 ・みんなにとって理想のコミュニティにしたいこと
 ・既存メンバーにマッチして、みんなが一緒に働きたい人を採用したいこと
(2)自社ゴールデンサークルについて(候補者とのマッチングに求めるもの)
(3)採用ペルソナについて(求めている人物像)
(4)採用プロセス(面談)全貌について
(5)面談における判断基準
(6)裁量権の説明(現場に裁量をもたせていくこと)
(7)採用活動をいつから開始するか

このとき重要なのは、社長などトップの人間に、採用活動にコミットメントする姿勢を話してもらうことです。特に現場のメンバーが採用活動に関わる取り組みを始めたばかりのときは、日常業務以外に面倒な仕事が増えたという印象を持たれてしまうかもしれません。採用活動を自分ごと化し、理解してもらうために、人事担当者からだけの説明よりも受け入れてもらいやすくなります。

 

メンバーによる判断は信用して任せよう

現場のメンバーに面談の裁量権を持たせるにあたって、気を付けることがいくつかあります。まず、社長や上司などが特定の人材を採用するように誘導しないことです。あくまでも、事前のオリエンテーションで確認・共有した情報をもとにメンバーが判断するようにします。

また、「面談で君はどんな話をしたの?」ということを聞いてはいけません。後から聞かれるのでは、面談を担当するメンバーの心理安全性が低くなり、面談で腹を割った話をすることができなくなってしまいます。聞くのは、候補者が話した内容やその心証、手応えなどだけにしましょう。

現場のメンバーに採用の裁量権を持たせると決めたら、面談に関与したメンバーに相談なく勝手に内定者を決めてしまうというようなことは絶対にしてはいけません。一度それをやってしまうと、メンバーからの信用を失い、二度と彼らの協力をきちんと得た採用活動ができなくなってしまいます。もし現場のメンバーが不採用と判断した際に、メンバーの経営的視点や判断力不足によるものだと感じた場合は、経営者や上司がその候補者の有用性等をメンバーに共有して理解と納得を得る必要が生じます。その際面談担当者に懸念点をヒアリングしたうえで、その懸念を潰すために再度面談を設定し、再判定してもらうようにしましょう。それでも不採用ということになったら、諦めてください。なかには、ビジネススキルが高い候補者もいて、もったいないという思いにかられてしまうかもしれません。しかし、コンピテンシー(業務において優秀な成果を発揮する行動特性)、自社の価値観とマッチしない、メンバーが一緒に働くことに対してネガティブだと、どんなに高いビジネススキルを持っている候補者だとしても自社ではそれが発揮しきれなかったり、周囲のメンバーのモチベーションが低下して全体的な生産性が低下してしまうこともあります。実際の採用経験を振り返ってみても、現場のメンバーは100%に近い精度で、自社にマッチした人材を見極められていると感じますので、彼らを信じてください。

また、優秀なメンバーはたいてい裁量権を持つことを望んでいて、任せられることで会社への満足度が上がります。「なんでこんな人材を採ったんだよ」「現場にこの人材は合っていない」というミスマッチもなくなり、候補者にとっても「面談で聞いていたのと業務や社内の状況が違う」という思いをすることがなくなります(03)。

03 現場メンバーが裁量権を持つか否かによる違い
現場のメンバーが候補者を選ぶことは、職場環境を快適にし、会社から任されているという満足度も上がり、 結果的に仕事へのモチベーションが上がりやすいなどメリットが大きいです
平田順子
※Web Designing 2018年8月号(2018年6月18日発売)掲載記事を転載

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