一次面接、面談者の役割は?「ピッチスライド」で事前準備 事例詳細|つなweB

最初の面談者は誰がよいのか

面談は内定確定までの間に、複数回行われるのが一般的です。最初の面談は、前述のように(P065参照)、DONGURIでは代表が行い、裁量権は持っていません。近年の採用活動がうまくいっている企業では同様の例が多いですが、必ずしも最初は社長である必要はありません。

ここで大事なのは、候補者と対等な目線を持ち、自社についてしっかりアピールをすることです。面談の印象によって候補者にとっての企業への好感度が変わってきますので、こうしたことが得意な“適材”を選ぶようにしましょう。

 

ピッチスライドで自社プレゼンを作成

面談では、まず採用サイトやナビ媒体の情報などを見るだけでは理解してもらいづらい自社についての情報を候補者にプレゼンしていきます。候補者の興味を促進するアピール内容は、ゴールデンサークルを元にプレゼンに落とし込む方法「ピッチスライド」を用いて考えていくことができます。

これはもともと、シリコンバレーの起業家が投資家へ行うプレゼン対策として始めたフレームワークで、Airbnbなどの海外スタートアップで行われてきました。採用においても、自社についてわかりやすく伝えられるため、活用できます。具体的には、01に挙げたような項目を書き出していくことで自社の事業や特徴を改めて把握します。さらに、候補者が関心を持ちやすい項目も追加していくとよいでしょう。

通常のプレゼンとの違いは、「比較的短時間で内容を端的に」「専門用語や専門知識を知らない相手にも理解できるようわかりやすく」「投資したい(採用活動の場合はこの会社で働きたい)と共感させるストーリーを組み立てて」、スライドと共にメッセージを伝えていくということです。慣れないうちは10分ほどを目安にし、慣れたら数分で話していけるようにしていきます。

01 ピッチスライドの項目例
面談に備えて上記の項目を書き出していくことで、自社の事業や特徴を改めて把握します

 

候補者に信用されるトーク術

たとえば企業がCMなどで自社商品をいくら「よいものです」と言ったところで「自分の会社のものならそう言うよね」と思ってしまうものです。面談でのトークも同様で、説得力を持って自社の魅力を伝えるにはコツが必要です。

たとえばWebデザイン業界を志す候補者に「弊社は〇〇というプロジェクトのブランディングをやっています」と言っても、あまりピンときません。その理由の一つは、「どの段階から関わっているのか」が企業によりけりだからです。候補者の方も、「本当はWebサイトのブランディングを手がけただけなのに、プロジェクトの上流からブランディングを手がけたかのように話す『あれオレ詐欺』なんじゃないの?」という疑念を抱いてしまうのです。もう一つは、候補者がそのビジネスについて詳しくないため具体的にイメージしづらいということが挙げられます。これらを解決するためには、実際に手がけたフローを順を追って説明するのがよいです。たとえば、プロジェクトの立ち上げから参加し、そこからこういう業務を重ねてきました、というように。

また、社外から見えやすい事業、見えにくい事業というものもあります。たとえばDONGURIの場合は、企業の組織改革や事業開発からコンサルタントとして入り、最終的に完成したプロダクトやサービスに関連するWebサイトや広告、パッケージなどのデザインを手がけています。しかし「デザインをする会社だ」という認識の候補者が多く、組織改革や事業開発から手がけていると話すとたいてい驚かれます。B to B企業なども、社外から業務内容が理解されづらいという場合があるのではないでしょうか。

また、実際に候補者が入社した場合、どのような業務をすることになるのかといったプロセスも伝えておくとよいでしょう。口頭での説明だけでなく、ストーリーボードなどを用意しておくのも伝わりやすくなります(02)。このとき、「誰」の「どんな課題」に対して「何を提供して」解決しているのかを見える化することが大切です。こうした準備をしておくことで、入社後に思っていたのと違ったという問題を未然に防ぐことができます。

02 業務紹介のストーリーボード例
架空の企業のストーリーボード例。このように、自社の業務内容をストーリーボードにすることで、 誰のどんな課題をどのように解決しているのかを一目でわかりやすく伝えることができます

 

ポジティブなこともネガティブなことも隠さず伝えていく

企業として伝えいたいことだけではなく、候補者にとって知りたいことをしっかりアピールすることも大切です。最初にボトルネックとなっている部分を取り除かないと、その他の話をきちんと聞いてもらえません。一般的に候補者が気にする内容には、下記のものがあります。

・ 企業レピュテーション(評判)
・ メンバー
・ 組織風土
・ 労働環境
・ 裁量権
・ 自分が担当する業務
・ キャリア形成

この中でどれの優先順位が高いかは、その候補者によって異なってきます。DONGURIの場合は企業レピュテーション(評判)の優先順位が高い人材が多いので、まずはそこから話していきます。

また、自社でのネガティブな面も、包み隠さず伝えるようにしましょう。こうした情報を開示することで、候補者の企業に対する心理安全性は高くなります。このとき、ただ課題点を言うのではなく、「こうやって解決しようと思っている」という解決方法もあわせて伝えれば、それほど不安要素とは感じられないはずです。

さらに、候補者に「その課題を一緒に解決していきましょう」という共通の目標を提示すると、その候補者がいかに自社にとって必要か、期待されているかが伝わり、好印象となるでしょう。目標管理のフレームワーク「OKR」で自社の経営課題や候補者のタスクを紐づかせていくことで、より具体的に候補者への期待を伝えることができます(03)。

03 企業課題のOKR(目標・成果指標)例
OKRとは目標(Objectives)とその鍵となる成果指標(Key Results)を指す言葉で、目標解決のための管理ツールとして用いられます。個人のOKRから部署、会社全体までのOKRを出すことで、個々の課題解決が企業のどの課題解決にどうつながっていくかを可視化できます

 

面談内容のPDCAサイクルを回す

フレームワーク等を使用しても、最初から面談が上手に行えるわけではありません。この伝え方は響かなかった、理解してもらいづらかった、話が長くなってしまったなどの課題をピックアップして改善していきます。つまりPDCAサイクルを回していくのです。

このとき、社長などの最初の面談者が一人で考えるのではなく、うまくいかなかった点を他のメンバーに相談し、現場で働くメンバーの客観的な意見を聞くのがよいでしょう。前述のピッチスライドなどをきっかけに、こうした改善を続けることが大切です。DONGURIではだいたい1カ月に1度ペースで共有し、社内からのフィードバックを得ています。

平田順子
※Web Designing 2018年8月号(2018年6月18日発売)掲載記事を転載

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