採用候補者はエントリー件数よりもマッチング精度が要 事例詳細|つなweB

エントリー件数は多ければ多いほどよい?

書類選考の話の前に、まずはエントリー件数についてどう捉えるべきかを考えていきましょう。従来の採用活動では、「母集団形成」の観点から、エントリー件数は多ければ多いほどよいとされてきました。これは、エントリー件数が多い方がそこに含まれる優秀な人材の数も多いという考え方です。たとえば企業が10人採用したいとして、エントリー件数が100人の場合よりも、1万人の場合の方が最終的に内定する10人は優秀な人材であると考えられてきたわけです。

しかし、現在の採用活動においては、極論をいえば、企業のペルソナにマッチした10人だけのエントリーがあればよいという考え方がトレンドになっています。エントリー件数が多すぎることは、採用活動においてデメリットにもなります。採用コストには、主に「媒体費やWeb制作費などの見えやすい費用」と「人事や採用に関わる人の時間などの見えにくいコスト」の二つがあります。現在の採用活動では、後者にコストをかけ、候補者と採用者のコミュニケーションに力を入れることの方が投資効果として効率的であり、うまくいく方法だと考えられています。前者にばかり力を入れて、ペルソナにマッチした候補者の割合が少ないとそこに至るまでの工数がとられてしまい、本来力を入れるべき採用マーケティングに時間を割けなくなってしまいかねません。

Part.2で行なってきた、SNSや自社作成コンテンツを通しての情報発信や候補者とのコミュニケーションがうまくいっていれば、その時点で企業のペルソナとマッチした候補者へのターゲティングが行われ、候補者自身も「この企業の社内風土と合いそうだ」「この企業の業務は自分がやりたいことと違うかもしれない」ということが判断でき、エントリーする候補者はかなりセグメントされているはずです。企業のペルソナとマッチする可能性が高い層に絞られた候補者だけがエントリーしてきて、彼らに対して採用者が丁寧にコミュニケーションをとっていけることが理想的な状況だといえるのです(01)。

01 エントリー件数への考え方比較
従来の採用活動では、エントリー件数は多ければ多いほどよいと考えられてきましたが、現在の採用では、企業のペルソナに合う候補者にセグメントした層に絞られる方が望ましいです

 

書類選考で企業が知るべき情報

書類選考に用いられる一般的な履歴書や職務経歴書には、学歴や資格、職歴などが書かれていますが、こうした情報だけでは選考するのに不十分です。自社の業務に必要不可欠な資格などがある場合に確認ができる程度にしか役立ちません。以前は高学歴であることや即戦力となる技術や経験値があることという観点が選考基準だったかもしれませんが、そうした観点での採用は、企業にマッチした候補者ではなく入社しても早く辞めてしまったり、企業への特別な思い入れがなく内定を出しても他に内定の出た企業へ行ってしまったりと、採用がうまくいかないケースが多いです。

そうならないために企業が知るべきなのは、その候補者が仕事に対してどのようなビジョンを持っていて、そのためにどのようなロードマップを描いているのかという彼らの意向です。エントリーシートにそうした項目を用意するなどし、適切な情報を得られるようにしましょう。

たとえば、多くの転職経験がありそれぞれの在籍期間が短い候補者がいたとして、入ってもすぐに転職してしまうと不安に思うかもしれません。しかし、それらの職歴がロードマップに沿っていて、その人がよりビジョンに近づいているという論理性があると転職の意図が理解でき、そのうえで次に自社で働くのがマッチしているのか否かを判断することができます。

 

審査ではなくマッチしているか否かをチェックする

書類の内容はどのような観点で見ていけばよいでしょうか。まずは以下のポイントで選考することをオススメします。

いままでのキャリアに論理性があり、本人の「ゴールデンサークル」に沿っていることです。これはP040でも紹介していますが、その人が仕事において、WHY=何を一番幸福と感じ原動力にできるか、HOW=そのために誰の役に立ちたいのか、WHAT=結果として何をしたいのかというものです。内容は粗くても構わないので、こうした自分自身の考えをある程度言語化できていることが望ましいです。書類審査に至る前の段階で候補者がペルソナに沿ってセグメントされていれば、テンプレート的な志望動機を書いてくる方は少なく、自己分析や自身が仕事に求めることがしっかり言語化されていることが多いです。

そうした候補者のゴールデンサークルと企業のゴールデンサークルがシンクロしているかという観点からマッチングの度合いを判断していきます。「審査をする」のではなく、あくまで「自社とマッチしているのか」を見ていきます(02)。

その他に、デザイナー職の場合は細部までこだわっていく姿勢が業務上大切になってくるため、書類やポートフォリオに粗さがないかなどを見ることがあります。このように職種の適性を見るというのも一つの判断基準となるでしょう。

02 書類選考ではマッチング度合いをチェックしよう
書類選考では、候補者のそれまでのキャリアにおける論理性や仕事に対する意向が 企業とマッチしているのかという観点から判断していきます
平田順子
※Web Designing 2018年8月号(2018年6月18日発売)掲載記事を転載

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