企業の人材採用がうまくいかないのはなぜ? 事例詳細|つなweB

採用を「選抜の場」と考えるのは誤り

時代は変わっても変わらぬ「採用」。それでいいの?

採用に苦労している企業が増えています。

「いい人材を採用できない」

「できたとしてもすぐに辞めてしまう」

嘆く人事担当者の声は、日増しに大きくなっているように感じます。たしかに、世間は空前の売り手市場。業界によっては、「転職・就職したいと考える人の数」よりも「企業が掲出している募集人数」のほうが多いといった、深刻なケースも発生しているようです。採用しにくい時代が訪れているのは間違いありません。

しかし、「採用できない」問題の根本的な原因は、別のところにあるようにも感じます。というのも、こんなに苦しい状況であるにもかかわらず、昔ながらの、企業側の都合ばかりを重視した「上から目線」の採用活動をしている企業が多いのも事実だからです。

 「人がいない」と言いながら、その一方で「入社希望者をたくさん集めて、その中から選抜すれば、いい人材を採用できる」といった前時代的な考え方をしているようでは、本当に欲しい人材を採用することはできません。

では、どう頭を切り替えればいいのでしょうか。ここで注目してみたいのは、採用にまつわるもう一つの大問題、苦労して採用した人が「すぐに辞めてしまう」という点です。

 

「とれない」だけでなく「辞めちゃう」にも注目する

予算をかけて採用広告を出し、手間も時間もかけて採用した人に、すぐに辞められてしまう…。採用に携わった人にとって、これほど辛いことはありませんよね。すぐに忘れてしまいたい気持ちにもなりますが、相手の立場になって考えてみると、採用活動の問題点が見えてきます。

辞めてしまった彼または彼女には、採用前の段階で、会社の正しい情報を伝えられていましたか? 良い面だけを強調し、悪い面を伝えていないということはありませんでしたか? そもそも彼・彼女の性格は、会社の社風にあっていましたか? 待ち望んだ人材として、現場で歓迎されていましたか?

採用には「能力のある人材を見つけ出す」のと同じくらい、「会社にあった人材を迎え入れる」という視点が大事になります。

そのためには、採用を「選抜」ではなく、お互いが対等な立場で臨む「マッチングの場」ととらえなおすことが大切です。選ぶことばかり考えるのではなく、選ばれる存在としてどう評価されているのかも考えてみようというわけです。

さらに、採用にまつわる古い常識も維持すべきか、捨て去るべきかを検討する必要があります。たとえば「例年4月の新卒一括採用」は行うべきでしょうか。年齢や経歴など関係なく、欲しい人材を欲しい時期に採用すればいいのではないでしょうか?

見直すべき点はまだまだあります。

採用は人事部だけが担当すべきでしょうか。会社全員で取り組むほうがいいのではないですか? 最終面接は社長が行うべきでしょうか。最後の判断こそ、ともに働くこととなる現場の人間がすべきではないですか?  などなど。

採用にはこうした数多くの課題がありますが、実は、今の時代はそれを大きく見直すことができるようになりました。なぜでしょうか。それはSNSやオウンドメディアなど、さまざまなデジタルツールを使いこなせる時代になったからです。

小泉森弥
※Web Designing 2018年8月号(2018年6月18日発売)掲載記事を転載

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