採用プロジェクトの社内チームづくりと役割分担 事例詳細|つなweB

採用「難」の時代には発想の転換が求められている

これまで企業の採用というと、エントリーしてきた人の中から、テストや面談を経て、採用者を選ぶやり方が一般的でした。エントリーした人の中から相対的に優れた人を選ぶこの選抜方式で優秀な人に巡り合うためには、できるだけ多くの人にエントリーしてもらうことがポイントとなっていました。

しかし、人材難の今、一部の企業を除くと、エントリーする人の数を増やすのは容易なことではありません。しかも、このタイプの選抜方式は、全般的に優秀な人を見つけることはできても、会社のニーズに合致した、「本当に欲しい人材」を見つけ出すのは難しいという、そもそもの弱点を抱えています。採用できたはいいものの、力を発揮できずにいたり、社風と合わずに辞められてしまったりと、お互いに不幸な事態に発展することも少なくないのです。

そういった失敗を避けるためには、P024からの序章でも説明をしましたが、能力を持っているだけでなく、社風とマッチし、仲間と共感しあえるような人を見つけだして採用をすることが大切です。そのためには、現在転職活動をしている人だけでなく、検討をしていない人にも届き、「この会社で働いてみたいな」、と思わせるような魅力のあるメッセージを投げる必要があります。

ただし、それを始める前に、考えておかなければならない重要なポイントがあります。

01 これから考えるべき採用の形
デジタルマーケティングのノウハウが進化したことで、募集する前にターゲットを絞り込むやり方をとれるようになってきました。採用の形も大きく変化しつつあるのです

 

採用活動には会社のメンバー全員で取り組もう

採用に関して、社内でこんな声を聞いたことはないでしょうか。

「○○さんは社長の一存で入社した人だからさ…」

「人事が現場の声を無視して採用を決めたんだよな…」

せっかく採用した人材について、こんな声が出てしまっては、採用された人にとっても、会社とっても不幸なこと。絶対に避けたい事態です。ただし、会社の未来にとっても、現場のスタッフにとっても一大事である採用が、ごく一部の人達の間だけで行われているとしたら、こうした声が出るのも無理のないことです。採用は、会社全体で「自分ゴト」として考えて初めてうまくいくもの。全員で臨むことができる、全社的な仕組みづくりが必要です。では、どうしたら会社全体で採用に取り組むことができるのでしょうか。

採用を、会社全体の理解を得ながら行うにあたっては、「旗振り役」の存在が重要となります。会社の中長期的な計画をもとに、なぜ採用が必要なのかを会社のメンバー全員に語りかけ、説得をする。これはやはり、リーダーである経営者の役割でしょう。

そしてその経営者のパートナーとして、実際の採用プロセスを実施する中心となるのが人事担当者ということになります。責任を担う「CEO(最高経営責任者)」と、運用を担当する「COO(最高執行責任者)」の関係性にあると考えればいいと思います。

 

人事が中心となって採用の仕組みをつくる

では社のメンバーはどんなふうに採用のプロセスに関わるべきでしょうか。職場で一緒に働くことになる現場のメンバーは、「どんな能力を持った人が必要か」を明らかにするためのプロセス、たとえばミーティングや意見交換に参加することを求められます。

また、職場で共に働くにあたって、どんな性格や考え方を持っている人が望ましいか、それを明らかにするプロセスにも協力する必要があります。

具体的な方法は追って説明をしていきますが、いずれもメンバーが「自分ゴト」として、主体的に取り組むことが必要となります。人事担当者は、その話し合いの場を設け、議論を促し、さらには意見の集約を図る立場になると考えればいいでしょう。

こうして会社全体で採用活動に取り組むことのメリットは少なくありません。たとえば採用時の判断基準に対する共通理解ができること、そして採用活動に対する納得感が生まれるようになりますから、採用面接の最後の最後で「ちゃぶ台返し」が起きたり、採用した後に「なんであんなやつ採ったんだ」といった声が出ることはなくなるでしょう。採用された人を受け入れる環境づくりにも役立つというわけです。

02 採用の際の役割分担はどうする?
採用プロジェクトの役割分担は図のように行うといいでしょう。 全員が採用に前向きに関わるような体制をつくるのです

 

人事を担当される方の中には「社長を説得するのは難しい」と考える人もいるかもしれません。採用に関して、慣例的に経営者に権限が集約しているという会社にいると、特に難しく感じると思います。

たしかに長く続いてきた採用の形態を見直すのは、一筋縄ではいかないことかもしれません。しかし、採用は会社の組織をより良いものに成長させるために行われるもの。そういった視点から考えれば、経営者にとっても解決すべき課題であることに変わりはありません。課題を解決するために、より合理的な方策をとらねばならないという点をしっかりと説明し、説得をすることがポイントになるでしょう。

小泉森弥
※Web Designing 2018年8月号(2018年6月18日発売)掲載記事を転載

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