2018.05.31
ターゲット&コンテンツ設計の落とし穴 UXデザインの出発点、間違っていませんか?
コンテンツは「誰に」「どのように」伝えるかが大切。UXデザインを考える上では、その「誰」と「どのように」が正しく設計できている必要があります。ここでは、そんなターゲット&コンテンツ設計で陥りがちな落とし穴を確認していきましょう。
ターゲット設定にありがちな落とし穴
ターゲットと利用者はイコールとは限らない
多くの企業でアプリやWebサービスのUXコンサルティングに携わってきた、フェンリルの中村康孝さん。新しいサービスの立ち上げなどの際は、まずクライアントに「誰がターゲットなのか」を確認するケースも多く、その時によく言われるのが「老若男女すべてです。うちはターゲットが広いので」という回答だそうです。しかしこの回答、クライアントが述べているのはあくまで「利用者」であり、それがターゲットとは限らないと中村さんは指摘します。WebサービスにしてもWebコンテンツにしても、何か新しいものをつくる上では、漠然とした利用者全体を対象にするのではなく、ターゲットを絞り込むことで企画やコンテンツが明確になるのだと言います。
同時に中村さんは、「核となる利用者層が必ずしもターゲットとは限らない」とも指摘します。多くの企業は、自社商品・サービスの利用者属性を把握しており、そのうちもっとも厚みのある部分をターゲットに設定しがちです。しかし、それは裏返せば、利用者層に偏りがあり、未だ訴求しきれていない部分があるとも言えます。訴求できていなかった部分をそのままにしておいていいかどうかの議論をせず、安易に強い部分だけを伸ばそうとするのが、果たして正解なのでしょうか。ターゲット設定ではこうした検証も必要になってきます。
もちろん、議論した上で強みを伸ばす施策に落ち着くこともあります。多くの場合、弱い部分を伸ばすことより強みを活かすほうが効果が上がりやすいからです。しかし最終的にそうなったとしても、ターゲットを決める前にしっかりとした議論を行うのが肝心です。
年代や性別だけでターゲットを決めていないか
ターゲット設定を行う際には、「30代の主婦」や「40代の男性会社員」というように、年代や性別、あるいは職業といった情報でセグメントしてしまうことが多いのではないでしょうか。こうした「デモグラフィック」な属性が、マーケティング分析などで重要な要素となるのは間違いありません。しかし中村さんは、ことコンテンツやユーザーインターフェイスを設計する上では、こうした属性を元にしたターゲット設計が先に立ってしまうと、うまくまとまらないことが多いと注意を促します。
「一口に30代主婦といっても、その30代主婦が興味のあるものは…と考えていくと、人によって答えは千差万別です。社内ミーティングでも、参加している人それぞれが異なる『30代主婦』像をイメージしながら話すので、結局意識の共有ができなくなってしまいます」
では、ターゲットはどのように決めるのが良いのでしょうか。中村さんは、「『◯◯する人』というように、行動によってターゲットを決めることが適切」だとアドバイスしています。
例えば、衣類用洗剤メーカーが手がけるコンテンツでは、「30代主婦」というようなターゲット設計ではなく「ほぼ毎日洗濯をする人」をターゲットとして考えるのがいいでしょう。そこから「ほぼ毎日洗濯をする人は、どのようなことに困っているだろうか」「洗濯している間や洗濯した後にどんな行動をするだろうか」とターゲット像を掘り下げられるようになるのです。
話を進めていく上で、「ほぼ毎日洗濯をする人」に30代主婦が多いという結果が出てきたら、そのときに30代主婦の興味あるメディアなどを調べるといいでしょう。年齢や性別といった属性情報を考えること自体に問題があるわけではなく、先に属性でターゲットを考えるとコンテンツ設計にブレが生じやすい、というのが中村さんの指摘です。自分たちのコンテンツのターゲットは誰か、このアドバイスを元に改めて考えてみてはいかがでしょうか。