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せかいと未来 Web Designing 2018年6月号

未来食堂のペルソナ

東京・神保町に位置する定食屋「未来食堂」をご存じでしょうか? エンジニアとして勤めた小林せかいさんが、オープンソースの概念を飲食業で実践する素敵なお店です。そんな小林さんの頭のなかをオープンにするこの連載。はたして、どこにたどり着くのでしょうか!

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東京・神保町に開店した“ふつう”をあつらえる、ふつうじゃない定食屋。「まかない」「ただめし」「あつらえ」といったオープンな仕組みと、店主(女将)の想いに共感する人たちが日々集う“場”として、食事をメインに、新たな「価値」と「出会い」、「居心地の良さ」などを提供し続ける。 http://miraishokudo.com/

「トンテキ」「あじフライ&新わかめとアサリの潮汁」「真鰯のつみれ汁&コシャリ」「麻婆豆腐」。これは、未来食堂の先週のメニューです(未来食堂は日替わり一種類のみ。毎日違う定食をつくっています)。

さて、この中でもっとも来客が多かったのは「トンテキ」。2番目は「麻婆豆腐」。一方で『コシャリとは何じャリ?』と思われたでしょうが、やはりお客様も同じで「コシャリが食べたい!」という方はいらっしゃらないように思いました。

コシャリとはエジプトの、米やパスタの上からクミン風味のトマトソースを掛けて混ぜ合わせて食べる庶民料理。私も知らなかったのですが、調べると錦糸町に専門店があり、レシピを知るために日曜日に駆け込んだのでした。というのも未来食堂は、お客様のリクエストでメニューを決めているのです。「来週のメニューは何がいいですか?」「コシャリが食べたいな」「ならつくりましょう」。そうやって決まった一品でした。

「コシャリ」と「トンテキ」。そりゃ、トンテキの方が人気があります。しかしここで未来食堂の『ユーザーペルソナ』…という言い方は固いので、『来て下さる方』に思いを馳せてみるのです。未来食堂に来て下さる方は、珍しい調理や、その季節・その日にしか食べられない特別感を楽しみにしています。例えば、節分の日にイワシを出すのもその一つ。確かに「ハンバーグ・生姜焼き・とんかつ」を延々リピートすれば、人は増えるかもしれません。しかしいつも来て下さる方の足が遠のくでしょう。

「ほとんどの人は毎日食べに来る訳ではないんだから、2日くらい続けて同じメニューでも良いのでは?」。違うのです。数人の『毎日食べに来て下さる方』が一番大事なペルソナであり、その方々が満足するメニューを提供することに、未来食堂の(飲食店としての)価値があるのです。

“理想のペルソナ”ではなく“儲かるペルソナ”を選ぶと、売上が上がるように見えますが、すでにあまたの飲食店が狙いをつけているので、大変なレッドオーシャンに身を乗り出すことになるのです。「ハンバーグ・生姜焼き・とんかつ」を出すたくさんのお店の中で、頭一つ出るのは本当に大変なことです。

コシャリを出したその日に、爆発的に売上が上がることはありません。ですが、身に付いたエジプト料理のノウハウは何にでも応用できるのです(フライドオニオンの代わりにトルティーヤチップスを砕いてエジプト感を出す、とか)。その日の売上ではなく、来て下さるお客様の満足度、将来へのスキル投資としての「コシャリ」なのです。

コシャリの日の来客者は約50人。平均55人程度なので、大きな開きはありません。おそらくお客様の99%はコシャリを知りません。それでも来てくれたのは「未来食堂で出される料理は何でも満足できる」という、お店の”ブランド”が出来つつあるからかもしれません。そしてそれは、”儲かるペルソナ”ではなく”理想のペルソナ”に焦点を当てて営業してきた結果、と言えるかもしれませんね。

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Text:小林せかい
東京工業大学理学部数学科卒業後、日本IBM、クックパッドで6年半エンジニアとして勤めた後、1年4カ月の修行期間を経て「未来食堂」を開業。自称リケジョ。その他、詳しいプロフィールは公開されている情報をご覧ください。 https://goo.gl/XpwnMQ

掲載号

Web Designing 2018年6月号

Web Designing 2018年6月号

2018年4月18日発売 本誌:1,530円(税込) / PDF版:1,200円(税込)

Webビジネスの成功は【UX視点のコンテンツ】にある!

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【その情報を一番欲しがっているユーザー】に、
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UX視点のコンテンツ戦略・制作方法!

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UXでキラーコンテンツを生む方法

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近年、盛んに「UX」の重要性が叫ばれていますが、それはサイトのデザインだけの話ではありません。
Webに掲載し、ユーザーに読んでもらう・見てもらう「コンテンツ」こそ、Webビジネスの成否を握っていると言えます。

例えば自社の商品を「もっとも必要としている人」に、商品の魅力を十二分に理解してもらい、前向きな反応をしてもらうには、
サイトに載っている情報(キャッチコピーや説明文、ビジュアル、映像など)が刺さらなければ意味がありません。

その確度を上げるために有効なのが、「UX」視点です。
Web Designing 6月号では、より実践的に、UXの考え方を実際のWebビジネスに落とし込むための方法を網羅しました。
誌面を読んで、実際に手を動かしてみてください。

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「質問に答える」「付箋を貼る」「定型書式に書く」だけで、
自社に必要な「ユーザー視点のコンテンツ」が見えてくる!

◆答えるだけ!自社サイトに足りない“愛”診断
質問に答えて、どれだけターゲットになる読者のことを把握しているか、ユーザー目線で見られているか、現状を把握しましょう。


◆貼るだけ!付箋ではっきりさせる課題と方針
自社サイトをユーザーにとって何の役に立つものにしたいか、どんな情報を公開べきかが見えてきます!


●書くだけ!自動化できるテキストコンテンツ制作用フォーマット
定型の書式に書いていくだけで、文章が苦手な人でも効果が期待出来る文章が出来上がります!

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◆ユーザー調査・設定
コンテンツの成功は「ペルソナ」にある!伝えたい「読者像」を浮き彫りにする調査・考察方法

◆コンテンツ戦略設計とKGI/KPI設定
浮き彫りにした対象読者に、[何を][どのように]提供し、[どう感じてもらうか][どういった行動を取ってもらいたいか]の戦略の立て方

◆コンテンツ制作
届けたい相手の「行動変容」を促すユーザー目線(UX視点)の具体的テキスト・コピー・ビジュアルその他の作り方・限られたリソースを有効利用した制作体制の作り方


●これからはSEOに加えて、「SXO」が重要!
いかに検索で行き着いたユーザーの意図を捉えたコンテンツを作成し、検索体験を満足いくものにできるかどうかが今後のWebビジネスには必須になります。そのためには、UX視点での分析・施策が欠かせません。

■コンテンツの見せ方
せっかくのコンテンツ、一生懸命会心の作を作っても、見てもらわなければ意味がありません。コンテンツの「見せ方」も、ユーザー目線を持って考えなければ、「見えてるのに認識されない」「結局記憶に残らない」ということが往々にして起こり得るのです。では、発信するコンテンツを効率的に効果的に見せるにはどんなことを考えればいいのでしょうか。


<こんな方にオススメです>
■中小企業のWeb担当者
 ・自社メディアにかける予算なし
 ・本業の片手間でやらざるをえない
 ・プロジェクトチームを組める余裕はない

■引き継いだ、やる気だけはある未経験の担当者
 ・何書いていいかわからない

■自社メディアを始めてはいるが、停滞期に入っている
 ・PVが下がりもしないけど伸びもせず、サイトが役割を果たしているかわからない

■UXをまずは何から始めていいのかわからない
■UXってデザインだけじゃないの?
■そもそもUXってなにがよくなるの?
■部署を横断して取り組むべきなのはなんとなくわかっているが、説得する自信がない
■理論だけではなく、現場で実践していることが知りたい

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