ローソンクルーあきこちゃんが“女流棋士”になるまで 事例詳細|つなweB

今回のテーマが「UX視点でのコンテンツ」ということで、先日ローンチしたローソン公式LINEアカウントの「将棋機能」についてご紹介させてください。

ローソンの公式LINEアカウントは、2,380万人ものともだち登録をいただいております。通常の機能としては、以前にこのコラムで紹介したマイクロソフトのAIりんなちゃんの技術を応用した「AIあきこちゃん」が、チャットボットで返事をしてくれます。

これまで月に1回のペースでアカウントに新機能を追加しているため、「なにかAIっぽいコンテンツはないものか…」と日々悶々としながらアイデアを練っていました。そんな折、テレビで藤井聡太六段の快進撃を見て「将棋なら搭載できるかも」と頭に浮かんだのです。時を同じくして、AIのコンピュータ将棋ソフト「Ponanza」開発者である山本一成さんにお会いする機会があり、将棋機能を搭載できることになりました。

ところで、私の隣のデスクにはAIエンジニアの岩立くんが座っています。今回の将棋機能は、岩立くんとマイクロソフトのエンジニア、冨田さんで実装することになったのですが、将棋をLINEで表現した事例がないため、一からUIを議論することになったのです。過去に「リバーシ」を搭載した際には、LINEトーク内の“対話”でゲームを進める方法を採用しました。同じように、まずは対話形式で将棋を指せないかを検討しましたが、ルールが複雑という理由から不可能だという結論に至り、最終的にローソンLINEからしかアクセスできない「Webブラウザ」で実装することになったのです。多くは語れませんが、そこに至るまでにかなりの議論がありました。

対局相手となるあきこちゃんは、イラストレーターのゆめろぼさんに“女流棋士あきこちゃん”として描いてもらい、トーンとマナーをあわせた盤面まわりと駒は、社内にいるデザイナーの林さんがつくってくれました。将棋ゲームではあまり見ることのない、和柄をモチーフにした薄いピンクの色合いは林さんのアイデアです。

女流棋士あきこちゃんに薄いピンクの盤面。ほんわかした甘いトーンなのに中身は「Ponanza」…という見事なギャップが受け、1日で約2万人が対戦してくれるサービスになりました。ただ、Ponanzaゆえ「手強すぎる」というご指摘も多くいただいており、強さのレベルを調整できないか、現在検討中です。

将棋機能が好評なため、4月から将棋連盟さんのWebサイトで、あきこちゃんがホンモノの「女流棋士」にローソンのデザートを届けるコラム連載を始めることになりました。インタビューを通してデザートや将棋について語っていただきます。

LINEの将棋から生まれたコンテンツ「女流棋士あきこちゃん」ですが、今後もさまざまなメディアですくすくと成長していければな、と思っている今日この頃です。

 

LINE公式アカウントの新機能「あきこと将棋」は、ともだち登録していただければいつでも女流棋士あきこちゃんと対局できます(写真左2つ)。思わずデスクでパシャリとした隣の岩立くん。開発中には「ふー」とか「むー」などなど、いつも独り言をこぼしていました(笑)
ナビゲーター:白井明子
(株)ローソン マーケティング本部 シニアマネジャー  デジタルドリブンな取組の推進を担当。「Web人大賞」、日経ウーマン「ウーマン・オブ・ザ・イヤー準大賞」受賞。ACC新事業検討委員会委員、法政大学イノベーションマネジメント研究センター客員研究員。http://www.lawson.co.jp/
白井明子
※Web Designing 2018年6月号(2018年4月18日発売)掲載記事を転載

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