テレビと「動画」の境目がなくなるとき 事例詳細|つなweB

過去数十年にわたり、メディアの王様はテレビであった。利用時間でも影響力でも広告費でも断トツの存在だが、最近ではかげりが見える。博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所の「メディア定点調査」によれば、この10年に1人あたりの平均利用時間は163分から147分へ約10%減少、かつて当たり前だった20%、30%台の視聴率を取る番組は激減し、テレビのついている時間を表すHUT(総世帯視聴率)も低下し続けている。

これらの数字は家庭のテレビスクリーンの視聴データであるが、測定しているのはテレビ局が放送する番組に限られる。いまやネットで見られる動画や映像コンテンツは爆発的に増えて、多くのスクリーンに囲まれるのが当たり前の時代だ。テレビの時間が減るのは当然だろう。

ネット動画の本格普及は2005年のYouTubeから始まる。YouTubeの「Tube」はブラウン管のことで、転じてテレビそのものを指す英語だ。AbemaTVやAmazon Fire TVもサービス名に「TV」と入れている。これら「テレビではないテレビ」が目指しているのは、テレビの再発明、再定義であり、魅力的なコンテンツと提供方法で視聴習慣を変えることだ。

現状、「動画コンテンツ」「動画広告」と言う時には、テレビ番組やテレビCMのような共通のフォーマットもビジネスルールもない。Instagramにあげられた6秒の映像も、AbemaTVの「ホンネテレビ」も「動画」と呼んでいる。テレビに代わる新しい覇権をめぐる群雄割拠の時代だ。

視聴者が映像を視聴する時間は限られており、時間シェア競争は激しさを増す。ユーザー意識の上ではテレビと動画の境目がなくなる可能性もある。その時、テレビに代わる王様はどんな姿をしているのだろうか。

出典(左):博報堂DYメディアパートナーズ「メディア定点調査2017」
出典(右):ビデオリサーチ社のHUTは原則非公開だが、数字(関東地区)を引用しているTBSホールディングスの公開決算資料より筆者作成
Text:萩原雅之
トランスコスモス・アナリティクス取締役副社長、マクロミル総合研究所所長。1999年よりネットレイティングス(現ニールセン)代表取締役を約10年務める。著書に『次世代マーケティングリサーチ』(SBクリエイティブ刊)。http://www.trans-cosmos.co.jp/
萩原雅之
※Web Designing 2018年4月号(2018年2月17日発売)掲載記事を転載

関連記事