AI、チャットボット、SNS…新しいチャネルのUXに備える 事例詳細|つなweB

ブランドや企業についての顧客経験(UX)が重要なのはWebサイトだけではない。すべてのコミュニケーションチャネルについて必要な視点だ。かつて顧客が企業と直接コミュニケートする場は、電話による問い合わせ窓口くらいであった。私が所属するトランスコスモスは、企業から受託するコールセンター業務で有名だが、コールとはもちろん電話のことである。電話対応がオペレータのスキル次第で顧客経験に影響を与えることはいうまでもない。

ところが、この20年ほどで状況は激変。Webサイト、メール、ソーシャルメディアアカウントなど「ノンボイス」と呼ばれる対応業務が急拡大した。そのため「コンタクトセンター」という言い方が一般的になったが、顧客にどう快適な経験をしてもらうかという課題は変わらない。

次の波も来ている。上図は消費者が商品・サービスの情報収集、問い合わせや相談する際のチャネル利用経験と利用意向を示したものだ。注目されるのは、利用経験は少なくても利用意向が高い「メッセージングアプリ」「Webチャット」「自動応答チャット(bot)」など。若い世代にとっては、電話でもメールでもなくLINEでのやりとりが自然だろう。こうした新しいチャネルでの顧客経験は、未知の部分も多いだけに、企業側も経験を積みスキルを上げながら、ノウハウを磨かなくてはならない。それぞれのチャネル特性にふさわしいコミュニケーションの仕方があるからだ。

調査項目にはないが、「AIスピーカー」もまた、家庭に普及すれば企業コミュニケーションに使われるのは確実である。“ボイスコミュニケーションに先祖返り”ともいえるが、電話とは違う顧客経験へのインサイトが必要となる。近い未来に備えて、まずは自分で経験してみてほしい。

トランスコスモス株式会社の調査に基づき、各チャネルの利用経験と利用意向の関係をまとめた。赤色のチャネルは利用経験よりも利用意向、青色のチャネルは利用意向よりも利用経験が高い割合を示す 出典:消費者と企業のコミュニケーション実態調査2017

 

Text:萩原雅之
トランスコスモス・アナリティクス取締役副社長、マクロミル総合研究所所長。1999年よりネットレイティングス(現ニールセン)代表取締役を約10年務める。著書に『次世代マーケティングリサーチ』(SBクリエイティブ刊)。http://www.trans-cosmos.co.jp/
萩原雅之
※Web Designing 2018年2月号(2017年12月18日発売)掲載記事を転載

関連記事