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ECサイト業界研究 Web Designing 2017年12月号

ECでの数字力 ECショップで売上を上げるためのWeb解析の見方

アクセス解析で得られた数字はECでも例外なく売り上げをあげる大切な指標になります。しかし、やはり膨大なデータからどこを見て判断すればいいかお悩み方は多いでしょう。ここではまずは見ておきたい「3つの数字」を解説します。

リアルに来客の動きを見る

Web解析の結果だけを発表し、その後の対策の話をまったくしないで終わる。ECショップ運営者をクライアントとしたコンサルティングの現場でたまに見られる風景です。また、重箱の隅をつつくような対策の話を一生懸命していることもあるのですが、やはりコンサルタントだったら、宇宙戦艦ヤマトの波動砲(古くてすいません)のような対策をECショップに伝えるべきです。ど真ん中のストレートで売上がすぐに上がる、利益につながるようなECショップにとって一番良い薬(戦略)を処方することが大切だと思います。

さて、今回のテーマは「ECにおける数字」です。ECショップでも他のWebサイトと同様Googleアナリティクス(以下GA)を利用して、Webの現状を見ている方は多いと思います。次なる対策を考える際、現状の把握としてWeb解析結果は重要なヒントになります。しかし、だからといってGAから出てきた数字だけを見ても正直よくわからないことが多いのは、ECの世界でも同様です。ではECにおいて、見るべきGAの数値とはなんでしょうか。私がお薦めするのは、3つです。

1つ目は「リアルタイム画面」、2つ目は「すべてのページの価値」、そして3つ目は「カゴ落ち」です。では、順番にお話します。

まずは、リアルタイム画面です。GAにアクセスし、「レポート」の「リアルタイム」の「コンテンツ」を選択して大きめのモニターに表示してみましょう。そうすると、今現在何人の方が対象サイトのどのページを見ているかがわかります。GAにはトラッキングの機能がありませんので、どのページをどの程度見て、どのページに行ったかがよくわかりません。しかし、リアルタイム表示ならリアルのお店と同様、どこのページを見て、とどまっているのか、離れてしまっているのかが感覚的にわかります。

例えば、トップページからカテゴリページ、商品ページ、カートへと流れているのか、カテゴリページだけで終わっているのか、またカートに入ったけど購入まで至っていないのかなど、お客様の流れがわかります。これは、ほぼリアルのお店と同じで、あるコーナーでとどまっているのか、商品を比較しているのか、レジに向かっているのかといった具合に見ることができるのです。最初は見慣れないかもしれませんが、1時間くらい片手間で見ているだけでも雰囲気がつかめます。

ECショップは経営者から見ると、「スタッフが始終PCに向かって何かやっているけど何をやっているかわからない」という悩みがあります。店長が売上だけではなく経営者にアピールするには、このリアルタイム表示を大きなモニターを使って是非見せてあげてください。たくさんのお客様がお店に来ているのがわかりますので、投資もしてもらいやすくなるはずです。

リアルタイム表示でわかるのは、どのページでお客様がとどまっているのか、よく見られているのかです。Webサイトなので、よく見られているページをリアルタイムで修正することもできるため、カテゴリページから商品ページに行かないなと思えば、クリックして行ってほしい商品ページのリンクやバナーをわかりやすくしたり、追加すればよいのです。

01 Googleアナリティクスのリアルタイム画面
GAのレポート欄にある「リアルタイム」を選択すると、今現在のアクセス状況を見ることができます。リアルタイム画面では地域や流入元のトラフィック、どのページを見ているのかなどのカテゴリでユーザーの動きを把握することができます。画面は、地域別のリアルタイム画面

 

ページの価値が高い順に改善

次に、「ページの価値」についてです。ページの価値とは簡単に言えば、各ページの閲覧を金額で評価したものです。

よく訪問者が多いページから改善することがあるのですが、訪問者が多く、かつコンバージョン率の高いページはページの価値が高くなりますので、そのページをまずはブラッシュアップするところから始めるとよいでしょう。例えば、コンバージョン率が1%を切っているページを改善するよりも、1.5%や2%を達成しているページのほうが、10%や20%にまで上がる可能性が高いのです。商品に魅力があり、在庫の補充もうまくいくような商品であれば、ページを魅力的にすることでコンバージョン率をさらに高めることができます。もし10%のコンバージョン率をキープできるなら、そこへネット広告などで集客を掛ければ売上数字は必ず上がります。もちろん、集客を掛けるとコンバージョン率は下がる傾向にありますが、そこは集客側の修正とページの改善をバランスよく行う必要があります。

注意事項としては、これもよくある話なのですが、いったん数字が上がると改善をしたくない、改善をすることにためらいがちになります。ですが、お客様は飽きっぽいので常に新鮮さを保つことが必要です。

まずは、ページの価値が高いページから改善していき、ある程度上がったら次のページに手をつけるというように、1ページずつ手がけていきましょう。これは、いきなり10ページを修正するとよくわからなくなってしまい、余計に混乱を招くからです。また、PCのページとスマホのページでページ価値が違う場合も多々あります。

ページの価値 (ページ別の指標のとき) = 目標値の合計 ÷ ページ別訪問数

02 ページ価値の計算方法
GAの「行動」→「サイト コンテンツ」→「すべてのページ」を開くと、各ページの表の中に「ページの価値」欄が表示されています。このページの価値は、上の式で計算されています。目標値の合計とは、ECであげた収益と、このページで設定しているすべての目標値の合計を合わせた数値になります

 

GAでカゴ落ちを見る

3つ目は、「カゴ落ち」です。GAでも、設定をしておけばカゴ落ちの状況がわかります。具体的には「管理」ページの「目標」で、各購入ステップページのURLを設定し比較するということですが、どのページでどのくらい落ちているかがわかれば対応方法もわかります。例えば、名前や住所を入れるフォームで落ちているのか、ポイントのページでなのか、決済なのか、配送ページなのかがわかればそこを修正していけばいいのです。ただ、カート内を修正できないASPも多いのでできる範囲の修正となるのですが、少しでも改善していけば、数字がよくなってきます。また、カート内でEFO(エントリーフォーム最適化)が使えるようであればぜひ実施してみてください。例えば、名字は3秒だったけど名前では10秒かかって入力していたとか、フリガナ入力で60秒もかかっていたりします。郵便番号も2つに分かれているか、ひとつなのかは重要です。ハイフン有り無しもお客様にとっては苦痛です。カゴ落ち対策はすぐに売上が伸びる大きな要素です。

04 カゴ落ちはステップごとにデータを取得
カゴ落ちの状況をGAで見るには、「コンバージョン」→「目標」→「目標URL」で最終的な購入まで進むまでのステップごとのページURLをそれぞれ設定し、「目標到達プロセス」で確認してみましょう。例の場合、カートを入れたあとのお届けの指定へ進むステップと確認画面からの支払いモジュールへのステップに課題があることがわかります

05 EFO(エントリーフォーム最適化)
エントリーフォームの最適化は、専用のツールを使うのが手っ取り早いです。図は「Gyro-n(ジャイロン) EFO」(https://www.gyro-n.com/efo/price/)。月1万5,000円から利用できます

 

「やらないこと」を決める

ここまでGAで見るべきところを3つ挙げさせていただきました。アクセス分析の数字を見るとやりたいこと、やるべきことがたくさん出てくると思います。ここで重要なのは、「やらないことを決める」ことです。

例えば、ソーシャルからのアクセスが少ないから、ソーシャルを強化しようとか、検索対策を強化しようなどと、次々アクションリストを作っていくと膨大な量になってきて、スタッフがそれを見ただけでモチベーションが下がってしまうことも多々あります。リソースがふんだんにあればいいのですが、そんなことはなく、限られた時間や人材で効率よく行う必要があります。そこでまずは、やるべきこと、やりたいことをリストアップします。

その内容を重要度緊急度に分け、ページの価値や訪問者数、コンバージョン率、ページの価値などを記入しておきます。そこから順位付けを行います。すると、思い付きで修正することが少なくなります。もちろん、ネットはスピードが命ですので急遽リアルタイム表示を見て修正ということはありますが、ひとつ大きな指標になります。

 

モールでの数字の見方

ここまでは、自社サイトにおけるGA利用を前提にお話しましたが、もう1つ外せないのがモールでのアクセス解析です。モールが用意しているアクセス解析ツールではリアルタイム分析ができません。このため、翌日出てくるデータで確認をします。モールの場合も3つの数字に注目しましょう。「トラッキングデータ(Yahoo!ショッピングではお客様行動履歴)」「ページの価値」「カゴ落ち」です。

まずは、トラッキングデータです。これはお客様一人ずつの行動が確認できます。どこのページを何秒見てどのページへ移動したか、検索から来たのか、直接来たのかなどがわかります。すべて見るのは大変なので購入に至ったお客様を3人ほど選んで、どのように移動したかを実際のサイトで時間を図りながら確認します。この確認で意外なバナーを押しているなとか、どこにもリンクがないのに移動している、カテゴリページばかり見ているなどがわかります。移動に苦労している場合には、お客様が移動しやすいように変更すればよいので、バナーの位置を変更したり、リンクを左ナビの目立つ場所に変えてみます。現在のECサイトではクリックしないと次に進めないので、移動しやすさを考えるときにはクリックし易いかを考えます。

ページの価値については、アクセス数と転換率(購買率)でグラフにしてみます。そうすると、どのページが異常値なのかわかります。モールの場合にでも価値の高いページを改善していきます。

最後に、カゴ落ちです。トラッキングデータを利用して、カゴに入れたお客様と決済に至ったお客様の数を比べます。モールの場合、50%くらいのカゴ落ちが一つの目安になります。自分のお店がどの程度か見てみましょう。決済に至った場合でも非常に悩んで購入することもありますので、先程のトラッキングデータで確認します。決済に至らなかった場合には、カゴ落ちしていることになりますのでどこで悩んでいたのか、どこのページで離脱したのかを確認します。モールの場合にはカゴ内のデータは詳しくわからないため、あくまでも、カゴボタンを押してから決済したかどうかの2つしかわかりません。ただ、モールであっても本当に少しですがページを変更することができます。実際に購入ステップを確認しながら試してみましょう。

モールの場合も本店サイトの場合も、アクセス解析して改善していく順番は、まずお客様の流れの確認から、ページの状態、カゴ落ちの確認から、アクションリストを作成し、毎日スピード感を持って改善していくのが理想です。ぜひ、この流れで実践してみてください。

06 楽天が提供するトラッキングデータ
楽天は出店者に向けさまざまなデータを提供していますが、これは各ユーザのトラッキングデータ。「か」は「カゴに入れた」、「決」は「決済した」ことを示します。このデータから見ると、ほぼ50%がカゴ落ちしていますが、モールの場合にはこの位の数字が目安です。アクセス数が多いのに、決済していない場合には何らかトラッキングに課題があるとして、詳細を確認しましょう
07 3大モールのカゴボタン

アマゾンのかごボタンはオレンジ、楽天は赤のかごボタンを使用しています。カゴ落ちを抑制するテクニックの1つに、このような大手モールが採用しているカゴボタンの色を本店サイトでも使ってみるというのがあります。普段見慣れている色や形だと、クリックする心の障壁が低くなるのです

 

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Text:川連一豊
JECCICA(社)ジャパンE コマースコンサルタント協会代表理事。フォースター(株)代表取締役。楽天市場での店長時代、楽天より「低反発枕の神様」と称されるほどの実績を残し、2003 年に楽天SOY受賞。2004年にSAVAWAYを設立、ECコンサルティングを開始する。現在はリテールE コマース、オムニチャネルコンサルタントとして活躍。 http://jeccica.jp/

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