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せかいと未来 Web Designing 2017年10月号

日常の業務を数値化する 未来食堂と数字

東京・神保町に位置する定食屋「未来食堂」をご存じでしょうか? エンジニアとして勤めた小林せかいさんが、オープンソースの概念を飲食業で実践する素敵なお店です。そんな小林さんの頭のなかをオープンにするこの連載。はたして、どこにたどり着くのでしょうか!

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東京・神保町に開店した“ふつう”をあつらえる、ふつうじゃない定食屋。「まかない」「ただめし」「あつらえ」といったオープンな仕組みと、店主(女将)の想いに共感する人たちが日々集う“場”として、食事をメインに、新たな「価値」と「出会い」、「居心地の良さ」などを提供し続ける。 http://miraishokudo.com/

「ピダハンに頼まれてケレンとわたしは夜、算数と字の授業をするようになった。(中略)八ヶ月かけても、ピダハンはひとりとして10まで数えられるようにならなかった。誰ひとり、三足す一を、それどころか一足す一も計算できるようにならなかった」※

数を数える。目の前の事象を概念化しグルーピングするこの行為は、あらゆる思考の根幹に位置しています。

ここに“リンゴが3個、ミカンが2個”あったとして、全く植物の概念がない宇宙人は「丸い物が5個ある」と認識し、リンゴ農園の山田さんは「ジョナゴールドが2個、シナノレッド1個、ミカン2個」と認識するでしょう。目の前の事象を切り取るメッシュの細かさによって、“数”はどのようにも変わりうるのです。何と何を同じ/違うと見なすのか、自分は今どのレベルで物を見ているのか。それを自覚することが考える一歩につながります。

例えば未来食堂にとって「海鮮野菜炒め」と「煮込みハンバーグ」は“同じ”。なぜなら手を動かす回数がどちらも5手だからです。飲食店はお昼時という限られた時間に、多くのお客様が来店されます。ですので、あらかじめ提供時間を予測できれば動きやすい。しかし未来食堂は毎日メニューが替わるため、今まで作ったことのない献立の提供時間を予測しなければなりません。

そこで目を付けたのが“手を動かす回数”です。調理し配膳する時間を手を動かす回数で予測し、それを軸にメニューを考えます。ちなみに「7手以上の献立は非常に危険」(=提供時間が大幅に遅れる可能性が高い)です。

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イカ・エビ・タコを事前に混ぜ合わせておくことで(海鮮ミックス)、別々に盛ると3手掛かるところを1手で済ませることができます。ブロッコリーと人参をトングで同時に掴める形状にすれば、煮込みハンバーグは1手マイナスの4手となるでしょう。

データの数値化というと、集客数やアクセス数など「膨大な情報をいかにまとめるか」に目が行きがちですが、普段の些細なプロセスを“数える”とまた新たな気づきが生まれるかもしれません。
小さな事から一歩ずつ。一足す一の奇跡に感謝。明日は『自家製がんもどき&豚しゃぶ胡麻ドレサラダ』(6手)です。  

※ ダニエル・L・エヴェレット著 みすず書房刊 『ピダハン―― 「言語本能」を超える文化と世界観』より抜粋

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※この連載のネタ帳はGitHub Gistにて公開しています。
http://miraishokudo.com/neta/web_designing
内容についてご質問、アイデアのある方はお気軽に。

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Text:小林せかい
東京工業大学理学部数学科卒業後、日本IBM、クックパッドで6年半エンジニアとして勤めた後、1年4カ月の修行期間を経て「未来食堂」を開業。自称リケジョ。その他、詳しいプロフィールは公開されている情報をご覧ください。 https://goo.gl/XpwnMQ

掲載号

Web Designing 2017年10月号

Web Designing 2017年10月号

2017年8月18日発売 本誌:1,530円(税込) / PDF版:1,200円(税込)

決済の改善は売上拡大に直結する!

サンプルデータはこちらから

企業のIT推進担当者やネット運営者に向け、ネットビジネスの課題を解決するノウハウや最新情報をお届け。徹底した現場目線とプロへの取材&事例取材で、デジタルマーケティング施策に取り組む上での悩みや疑問、課題を解決するヒントを紹介します。

10月号のテーマは「Webビジネスとお金」。電子決済やポイントシステム、はたまた仮想通貨で変わるビジネスの世界を追究します。



技術の進化に伴い、決済方法の多様化・自由度拡大により、ビジネスは大きく変わろうとしています。

①ビジネスのバージョンアップ
 ・新しい市場、新しいマネタイズ

②お金まわりに関わるコスト削減

これは、大企業がやっていることでウチのような中小企業には関係ない、で済ませて本当にいいのでしょうか?

さらに新しい技術の波(仮想通貨)が近い将来に確実に押し寄せようとしている中で、すでに波が来てしまってから慌てても遅いのではないでしょうか。そして、あなたのビジネスをさらにバージョンアップさせる可能性が眠っていないでしょうか?


本特集で、電子決済・電子マネー・そして仮想通貨という「これからの決済」を軸に、決済の進化があなたの(Web)ビジネスをどうバージョンアップさせるのか追究してみましょう。


●日本の決済の現状とIT技術進化によるビジネスの変化、中小企業にとってどんなチャンス(注意点)があり、どんな認識・準備が必要か

●データで見る、顧客の意識・利用調査、海外の現状

●身近な事例で見る、ITの進化で生まれた新しい決済方法

●決済の進化が変える<収益増大・市場拡大> 
 ・越境ECをメインに海外の状況、すでに日本で対応している例、これから小規模ビジネスでもビジネスチャンスを逃さないために必要なポイントなどを解説します。

●決済の進化が変える<買い逃し防止>  
 ・ユーザー側にすでに幾多の決済方法が用意されている現状で、指をくわえて商機を逃す(かご落ちさせる)わけにはいきません。業界、業態、商品によってどの決済方法は必須なのか、それによる費用対効果は?


●決済の進化が変える<マーケティング> 
 ・電子決済、Webマネーで期待できることとして、POSでは計れない購買データ、顧客データがマーケティングに活かせるというポイントがありますが、実際にはどんなサービスでどんなデータが取れ、それを何に活かせるのでしょうか。大手ペイメントシステム会社に聞きました。

●決済の進化が変える<業務効率化・コスト削減>

●決済の進化が変える<新しいビジネスモデル>

●決済サービスとセキュリティ

●ポイントシステム導入に必要なこと
 ・中小企業におけるポイントシステムの費用対効果は? ポイントは課税?非課税?など


●仮想通貨
 ・近い将来にやってくる、今まで決済の進化から考えられるビジネスのバージョンアップを現実のものにできるかもしれない、仮想通貨の基礎知識と、それにより具体的にどんなビジネスが可能になるのかまで言及します。

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