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解析ツールの読み方・活かし方 Web Designing 2017年10月号

製品の訴求の仕方をWebに最適化して成果を上げる

対面営業や店舗では売れている商品なのに、Webサイトに掲載しても期待したほど効果が出ない。このようなケースの場合、「Webとは相性がよくない」と諦める前に、アプローチの仕方がWebの文脈に合っているかを見直す必要がある。Webサイトから見込客の問い合わせを得るために、一から製品の強みや訴求ポイントを見直し、製品名やロゴマークまで変更した香川県の小規模事業者の事例を紹介する。

 

既存広告の効果が鈍い?

香川県で独創的な製品を製造・販売する、(株)光バイオのWebサイトリニューアルの事例を紹介する。社長を含めて社員数2名という小規模事業者だが、「特殊な光によって害虫を防除する」という独自の技術とノウハウを持ち、自社製品「光防虫器・光防大師(こうぼうだいし)」(02)は全国の農場に導入され、最近ではアジアからの引き合いもある。

筆者が所属するメディア・エーシーは、広告代理店として光バイオの業界誌広告を担当していたのだが、この広告の反応が鈍くなっており、施策としてマンネリ化しているのではないかと相談があった(03)。社長の弘田憲史さんに話を伺うと、業界紙の外にいる見込客に対してPRする手段として、1年ほど前にWebサイトを制作したという。

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01_Webサイト
光バイオWebサイト
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02_光防虫器「光防大師」
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03_業界誌へ掲載していた広告
業界誌に出稿していた広告。紙媒体への広告は費用対効果が見えづらく、さらには広告としてのマンネリ化も課題になっていた。業界誌に限らず、多くの新聞や雑誌の購読者は年々減少しているうえ、新しい読者層がいなければ認知されないこともあり、Webサイトのリニューアル提案へと繋がった

 

サイトを制作しても問い合わせに結びつかない

「無農薬栽培や自然栽培にチャレンジしようとする新規就農者は増えており、農薬を使わない害虫対策に興味を持つ若者も多いはず。インターネットを日常的に使う若年層が無農薬栽培や自然栽培に取り組むのであれば、害虫対策の方法について『検索』するはずだ。ところが、Webサイトからはまったく問い合わせがない」というのが相談の骨子だ。

実は、あらかじめサイトを閲覧した際に「問い合わせは来ないだろう」と感じていたことから、リニューアルの提案を考えた。しかし、制作から1年足らずのサイトをリニューアルするには勝算が必要となる。そのため、詳しく話を聞いて判断材料を集めたいと考えた。「既存客は、何を求めて光バイオの製品を導入するのか」「リピーターは、何を気に入っているのか」などの質問を投げかけてみると、初めて聞く単語がいくつも飛び出してきた。「コナジラミ」と「アザミウマ」という、農業従事者であれば誰もが悩まされた経験のある害虫の名称である。

 

「検索」が入り口となる

薬剤以外の方法で害虫を防除したいと考える人たちは、検索エンジンに害虫の名前を打ち込むはずだ。社名も製品名も知らない見込客に製品を知ってもらうためには、「ニーズ検索」に対するリスティング広告の効果が高いに違いないと仮説を立て、すぐにキーワードの調査を行った。

「害虫名+対策」の月間検索ボリュームは、1,000件程度だった(04)。ただし、調査当時に広告の競合はゼロ。さらに、光バイオの製品特性がユニークであることから、顕在ニーズに対して情報が届きさえすれば一定の確率で興味を持つユーザーがいるはずである。同じ発想で、「作物名+害虫対策」、「無農薬栽培+害虫対策」といったようなキーワードでも、リスティング広告を展開する案を企画書に入れた。

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04_“害虫名”と“対策”をセットにした月間検索ボリューム
「コナジラミ」「アザミウマ」といった“害虫の名前”と、「駆除」「無農薬」といった“対策”のセットによる月間検索ボリュームを調べると左のような結果が得られた。合計が1,000件程度ではあるものの、競合もいないことからリスティングの効果が見込めると仮説を立てた

 

覚えてもらいやすい「製品名」が集客に結びつく

経験上、問い合わせをCV(コンバージョン)と考えた場合に最もCVR(コンバージョンレート)が高いキーワードは、「製品指名検索」になるケースが多い。そこで、現状を把握するためサイトにGoogleアナリティクス(GA)を設置した。設置後1カ月で検索キーワード1位となったのは「会社名指名検索」だ。害虫の名前も出てきたが、製品名検索は意外にもランク外だった。ここで、ふと思ったことがある。「そういえば、この製品の名前は何だっけ?」

皆さんは、Googleの検索窓にカーソルを当ててみたものの、検索するための最適なワードが見つからずに固まってしまった経験はないだろうか。お気づきのとおり、人は「名前が思い出せない製品は検索できない」のである。社員の方にいただいたチラシを見ると「GACA型」と大きく書かれている。GACA型とは、この製品の「型番」であった。

たとえば「アジの開き」という“商品名”をECサイトで見たことがある。これは、一般的には固有名称でなく、料理の“カテゴリ名”である。つまり、アジの開きと指名検索してもその商品にはたどり着かない。それと同じことが起きているのではないかと思い、「GACA」と検索窓に打ち込んでみたが、やはり上位表示はされなかった。仮に「害虫名+対策」関連ワードでWebサイトに見込客を呼び込めたとしても再訪してもらえない。そこで「製品に、覚えてもらいやすい名前をつけること」を企画書に追記した(05)。

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05_製品名・ロゴ・キャラクターの変更
見込客に「覚えてもらう」ための施策として、光バイオのロゴを刷新したほか、「光防大師」と(高知から香川へ向かう車中で営業担当が思いついた)商品のネーミングを行い、製品名を想起させるキャラクターの制作も行った

 

Webの引き合いを増やすための4つのステップ

2回目の打ち合わせでは、徹底的に製品の魅力や実績、害虫を防除する仕組みについて聞き、光の波長について調査した。その過程で、弘田さんの説明どおりではなく、別の表現でコンテンツをつくろうと思った。弘田さんの話は専門性が高く、新規就農者にとっては理解するのが難しいと思われた。また、指名検索ではなくニーズ検索で訪問したユーザーを引きつけるには、もっと直接的に「害虫を駆除したい」という課題に対する答えと、納得できる根拠を示す必要があるのだ。

光バイオのように、対面営業や店舗では売れているが、Webでは引き合いが取れないといった相談は多くある。そんな相談を受けたときに考える解決方法がある。それは、素人である筆者がその製品を全く知らない人に売り込む際のセールストークを考え、それ自体をコンテンツ化するという考え方である。

そのステップを4段階に分けてみると、下記のようになる。

A_コンセプトの言語化(06_1)
B_強みの整理(06_2)
C_セールスステップの組み立て
D_原稿のリライト(06_3)

本件では、このプロセスを経たうえで「知ってもらう=リスティング広告」「覚えてもらう=キャッチとなる製品名・ロゴ・キャラクターの制作」「気になってもらう=セールストークを盛り込んだLP」「記憶に留めてもらう=リマーケティング広告」の4つの施策を提案し、Webで引き合いを取るための武器を揃えた。

ちなみに、検索エンジンからの訪問者へ向けたコンテンツについては、感情表現以上に論理的な納得感・強みの根拠が重要だと考えている。BtoBの製品は投資であり、訪問者は感情だけでなく、実際の成果を得られる可能性を冷静に判断したいと思っており、だからこそ検索という行動を取る、というのがその理由だ。

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06_1_「A_コンセプトの言語化」
06_1 光バイオのコンセプトを「感覚的ベネフィット」「機能的ベネフィット」に分けて明確化。さらに、それらをWebサイトで実現していくための方法へと落としこんでいる(実際の企画書から抜粋)
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06_2_「B_強みの整理」
06_2 「光防大師」が持っている強みを、見込客の立場に立って整理。特徴をハッキリとさせることによって商品の打ち出し方を再設計した(実際の企画書から抜粋)
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06_3_「D_原稿のリライト」
06_3 左は従来のテキスト、右が修正後。「GACA型」という型番を全面に打ち出すのではなく、「効果」を打ち出している。また、サイト閲覧者にわかりやすく理解してもらうように情報を整理している

 

サイトリニューアルと広告配信 問い合わせは来るか?

1年足らずで、リニューアルしたWebサイト。すぐに購入が決まる製品ではないため成果が出るまでは時間がかかるかもしれない、と思いながらリスティング広告をスタートした。1カ月を経て、GAをチェックすると、問い合わせフォームのCV数とモバイルコールの件数が合計10件あった(07~08)。事務担当の方に電話をかけると「東北から何件か引き合いがあって、導入を検討してくれそう」との報告をいただいた。この状況が継続し、「これ以上、引き合いが来ると対応できない」と嬉しい悲鳴が聞こえてくるといった状況となった。

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07_Googleアナリティクスによる数値
07は、リニューアルしたWebサイトから直近3カ月のGAによる閲覧数をもとにした結果。セールスページの役割を担っているaboutページの平均滞在時間が2分以上となっていることから、しっかりと製品について読み込まれていることがわかる。また、Googleサーチコンソールによると、以前はゼロだった「製品名による指名検索」が上位に位置している
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08_フォームのCV数とモバイルコール数
08は、同じく直近3カ月のサイトのフォームによるCVとモバイルコールによる問い合わせ数。総数は少ないものの、1契約あたりの単価が高いため費用対効果は高いと評価いただいている

 

リニューアル作業自体が自社の価値を見直すきっかけに

Webで引き合いを取ろうとすることは、新しい顧客に未体験のベネフィットを、新しいチャネルと接客方法で伝えることに他ならない。この取り組みを成功させるには、既存の方法で売れている製品がなぜ売れているのかを突き詰める必要があり、改めて製品や自社の提供している付加価値を振り返ることにつながる。サイトのリニューアルを行う際に整理した強み(USP)を、今度は営業トークやチラシに反映させて、販売活動全体の効果を上げられることもある。また、今回は製品を知らない見込客に「知ってもらい、覚えてもらい、気になってもらい、記憶に留めてもらう」という、相手の状態にあわせた「訴求方法=売り方」を整理するきっかけとなった。今後、別の販売チャネルにもノウハウを横展開できる可能性がある。

Webサイトのリニューアルをする際、どんなデザインや内容を追加しようかと最初から考えていないだろうか。企業のWebサイトには必ずビジネスゴールがある。引き合い獲得や売上への貢献が求められていて、既存サイトが思うような成果が上げられていない場合は、「誰に、何を、どうやって伝えるか」「見込客は、この商品によって何を得られるのか」を見直すところからスタートしてはいかがだろう。

 

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Text:坂上北斗
高知県在住Webプランナー/上級ウェブ解析士。中小・ベンチャー支援会社にて、複数の新規事業の立ち上げに関わった後、Webの世界へ飛び込む。BtoCとBtoBそれぞれの企画・営業・販促に関わった経験を活かし、中小企業のWeb活用を支援している。ウェブクリエイターズ高知実行委員。http://www.mediaac.co.jp/

 

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Text:一般社団法人ウェブ解析士協会
事業の成果に導くWeb解析を学ぶ機会の創出、研究開発、関心を持つ人たちの交流促進、就業支援などで、Web解析を通じての産業振興やWeb解析の社会教育を推進する。

掲載号

Web Designing 2017年10月号

Web Designing 2017年10月号

2017年8月18日発売 本誌:1,530円(税込) / PDF版:1,200円(税込)

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企業のIT推進担当者やネット運営者に向け、ネットビジネスの課題を解決するノウハウや最新情報をお届け。徹底した現場目線とプロへの取材&事例取材で、デジタルマーケティング施策に取り組む上での悩みや疑問、課題を解決するヒントを紹介します。

10月号のテーマは「Webビジネスとお金」。電子決済やポイントシステム、はたまた仮想通貨で変わるビジネスの世界を追究します。



技術の進化に伴い、決済方法の多様化・自由度拡大により、ビジネスは大きく変わろうとしています。

①ビジネスのバージョンアップ
 ・新しい市場、新しいマネタイズ

②お金まわりに関わるコスト削減

これは、大企業がやっていることでウチのような中小企業には関係ない、で済ませて本当にいいのでしょうか?

さらに新しい技術の波(仮想通貨)が近い将来に確実に押し寄せようとしている中で、すでに波が来てしまってから慌てても遅いのではないでしょうか。そして、あなたのビジネスをさらにバージョンアップさせる可能性が眠っていないでしょうか?


本特集で、電子決済・電子マネー・そして仮想通貨という「これからの決済」を軸に、決済の進化があなたの(Web)ビジネスをどうバージョンアップさせるのか追究してみましょう。


●日本の決済の現状とIT技術進化によるビジネスの変化、中小企業にとってどんなチャンス(注意点)があり、どんな認識・準備が必要か

●データで見る、顧客の意識・利用調査、海外の現状

●身近な事例で見る、ITの進化で生まれた新しい決済方法

●決済の進化が変える<収益増大・市場拡大> 
 ・越境ECをメインに海外の状況、すでに日本で対応している例、これから小規模ビジネスでもビジネスチャンスを逃さないために必要なポイントなどを解説します。

●決済の進化が変える<買い逃し防止>  
 ・ユーザー側にすでに幾多の決済方法が用意されている現状で、指をくわえて商機を逃す(かご落ちさせる)わけにはいきません。業界、業態、商品によってどの決済方法は必須なのか、それによる費用対効果は?


●決済の進化が変える<マーケティング> 
 ・電子決済、Webマネーで期待できることとして、POSでは計れない購買データ、顧客データがマーケティングに活かせるというポイントがありますが、実際にはどんなサービスでどんなデータが取れ、それを何に活かせるのでしょうか。大手ペイメントシステム会社に聞きました。

●決済の進化が変える<業務効率化・コスト削減>

●決済の進化が変える<新しいビジネスモデル>

●決済サービスとセキュリティ

●ポイントシステム導入に必要なこと
 ・中小企業におけるポイントシステムの費用対効果は? ポイントは課税?非課税?など


●仮想通貨
 ・近い将来にやってくる、今まで決済の進化から考えられるビジネスのバージョンアップを現実のものにできるかもしれない、仮想通貨の基礎知識と、それにより具体的にどんなビジネスが可能になるのかまで言及します。

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