人間による「分析と仮説」、AIができる「分類の自動化」 事例詳細|つなweB

1 現状AIにできるのは「分類の自動化」と考える

今のAIができることは、一言で表すと「分類」。その真意をここで整理しておこう。

現在、AI(人工知能)が人間の代わりに企画を考えたり、人を説得したりすることは(単独では)難しい。しばらくは技術的に無理だろう。では、現在マーケットを日々騒がせているAIとは、具体的に何ができて、これほど多種多様なシーンで騒がれるのか。AIで何かしらの施策を検討したり、AIで事業のどこかしらの効率化を考えたいなら、まずは仕組みと特性について、ざっくりであっても把握しておきたい。

今AIと呼ばれるものは、「分類の自動化」を行うための仕組みだと考えればいいだろう。決して、AIが人間の代わりに何かを考えてくれるわけではない。現時点でできるのは「データの中の特徴を探し出すこと」「その特徴を分類すること」がメインとなる。「データの中の特徴を探し出すこと」とは、例えば「犬っぽい画像を数万枚の写真の中から探す」や「テキストデータの中から、単語と文節の組み合わせによって、書き手の “感情” などのパターンを見つけ出す」といったことである。

ただし、AIがいきなり「あっ!これ犬っぽい!」や「この人、転職したがっている!」といった分類を行えるわけではない。便宜的に名前をつければ、「グループA」「グループB」といった機械的な分類が可能になる、ということだ。

表向きに行われているイメージ
処理だけを見ると、AIが勝手に判断しているように見えているかもしれないが…
実際に行われている処理
実際は複数の分析による情報の分類と選択を行っているイメージが近い
※ 図は、便宜上極端に簡略化した図なので、この通りにあてはまらないケースがある

では、これらをどう活かすと、事業への有効な施策につながるのか。というのは、グループAといった“AIが機械的に見つけた”分類は、そのままでは人間には利用ができない(しにくい)状態だからである。そこで、「○○な特徴を持ったデータ」を「■■として分類する」といったルールが必要になる。これを「教師データ」 などと呼んでいるが、ビジネスにAIを活用したいならルールの設計こそが肝になる。

 

2 着目すべきは、分類してこなかったデータ?

「分類の自動化」が見えてくると、何を効率化すべきかがわかってくる。それをビジネスに応用したい。

 今一度、現状のAIによってできることについて、具体例を挙げてみたい。

(1)写真への自動タグ付けと管理
(2)チャットボットなど対話ツールへの利用
(3)文章やニュースの自動ライティング

上記は異なる設計ながら、共通点は、あらかじめデータに分類のルールを学習させていること。例えば、FacebookやInstagramでアップロードした写真に自動的にタグや人物がサジェストされるのは、画像データに対して「人間の顔として分類する」という処理がなされているからだ。

これまで「分類していなかったもの」とは?
分類できていないデータを前に、人間が「どこに意味を持たせたグルーピングを行うか」を判断し、設計できるか。あとは人間による分析と仮説が必要

チャットボットの応対スクリプトに関しても同様で、「○○という言い回し」に対し「○○と答えるケースが多い」という一対のデータセットで分類する。この応用が、少々強引だが日本経済新聞の「完全自動決算サマリー」※1やリオデジェネイロ・オリンピックなどで採用されたニュース速報自動ライティング※2などとも言える。一次情報提供元(決算であれば各企業、ニュースであれば公式団体など)から受け取ったデータを、金額や増減、得点や勝敗などに分類し、設定済みの無数の条件分岐とテンプレートを使って生成(厳密にははめ込み)している。

今後「分類の自動化」を事業に活かしたいなら、これまでの視点の真逆、「分類されていない部分」への着眼が必須だ。蓄積された未分類の情報と対峙し、何に着目すべきかが問われてくる。ただ一つ、AIの設計代行やコンサルティング事業を行う身として言える本音は、「人間の仕事はますます増える」ということだ。

※1 2017年1月25日にプレスリリースで発表 http://pr.nikkei.com/qreports-ai/
※2 アメリカのワシントン・ポストがリオデジャネイロ・オリンピック報道(2016年)で、AIによる記事作成を導入し、世界的な話題を集めた

中村健太(株)ビットエーCMO
※Web Designing 2017年6月号(2017年4月18日)掲載記事を転載

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