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Bay Area Startup News Web Designing 2017年4月号

サンフランシスコの会社訪問!【ダンデライオン・チョコレート】 企業秘密までもオープンにすることで顧客エンゲージメントを高める

海外で起こっている、あるいは起こりつつある新しいビジネスの潮流、近い将来に日本にやってくるであろうビジネストレンドなどを紹介・考察します。米国サンフランシスコ在住の筆者が、サンフランシスコおよびシリコンバレーの「ベイエリア」を中心に、イケてるスタートアップを中心とした会社、サービスを毎月1つ取り上げながら、その背景や目的、今後日本で起こりうるトレンドについて追究します。

チョコレート界のスタートアップ

テクノロジー系スタートアップ、サードウェーブコーヒーに続き、サンフランシスコで静かにブームになっているのがBean to Bar (ビーントゥバー)チョコレートです。日本でも徐々に店舗が増え始めているので、スイーツ好きや流行に敏感な人ならご存じかと思います。

一般によく知られているチョコレートは、発酵・乾燥させたカカオ豆を焙煎し、チョコレートの生地をつくり、そこへミルクやフレーバーなどを加えて完成させます。一方、ビーントゥバーチョコレートはその「カカオ豆 (Bean)から板チョコ(Bar)まで」の製造を一貫して行い、生産者との直接取引により生産地を明確にして、製造プロセスさえも開示し、素材から製造方法までこだわり抜いた高品質のチョコレートを提供するというものです。

一見チョコレートはスタートアップとあまり関係がなそうですが、実はその根底にはスタートアップ的カルチャーが流れています。

ビーントゥバーチョコレートは、今から約10年前、大量生産のチョコレートに嫌気が差したアメリカのITやアート分野など異業種の人々が、自分たちで仕入れたカカオ豆を使って自宅でつくり始めたのが発端だと言います。その発祥からも、Blue Bottleに代表されるサードウェーブコーヒーがスタートアップの起業家たちから絶大なる支持を集め大きなムーブメントになったように、ビーントゥバーチョコレートがアメリカのテックコミュニティの間でブームになっているのがわかります。

ビーントゥバーチョコレートの販売店はすでにいくつか登場していますが、その中でも代表格といえば「ダンデライオン・チョコレート」。2人のIT企業家が2010年にサンフランシスコで創業してまたたく間にヒットを収め、今では日本でも3店舗を構えるまでに成長した人気ブランドです。今回はサンフランシスコのおしゃれなカフェが並ぶミッション地区のValenciaストリート沿いにある同ブランド店舗で働く、ジェニファー・ロイさんに同ブランドの哲学やヴィジョンについてお話を伺いました。

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ダンデライオン・チョコレート
小ロット生産で、カカオ豆の選別から焙煎、磨砕、調合、成形のすべてを手作業で行っている同ブランド。サンフランシスコに2店舗を構え、日本では東京・蔵前と三重の伊勢市、そして2017年2月には神奈川県鎌倉市に3店舗目がオープンしました

 

顧客と従業員が至近距離に

ダンデライオン・チョコレートの店内に入ると、木材を基調とした温かい印象を受けるデザインで統一された空間で、まるで自宅にいるような心地よさを感じます。そして気づくのが、「作り手と顧客の距離が近い」ということです。

そこで販売されるチョコレートは産地別で5種類あり、製品の横に生産地・生産者情報が書かれていて製品に対しての興味と理解を深められるよう工夫されています。品質を重視するため、定番商品のみで派手なシーズナルやプロモーションは行ってないとのこと。ちなみに、食器類は日本のものを使用。東京に出店した際に、使用していた食器に惚れ込んで総入れ替えをしたそうです。これらの食器は店頭でも購入することができます。包装紙にもこだわっており、素材はインドでつくられたリサイクル衣料の繊維入りコットンペーパーを使用。

パッケージデザインは各産地のイメージをもとにつくられています。また、チョコレートの食べ方や産地情報のマップが描かれているパンフレット付きで、プレゼントとしてもいいですね。

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Factory & Cafe, San Francisco店内。木材をベースとした暖かくくつろげるデザインで、従業員の作業スペースと飲食スペースが至近距離にレイアウトされています。サイドのカウンターからはチョコレート製造過程が一望でき、“オープン&シェア”のモットーを貫いています

 

オープン&シェアで信頼構築

そんなダンデライオン・チョコレートのモットーは“オープン&シェア”。店内はオープンな雰囲気で、飲食はもちろん、チョコレートの製造体験や食べ比べもできます。一連の製造工程が見られる造りになっているのです。材料からつくり方までをすべてオープンにし、多くの人たちにシェアすることをブランドのゴールとしています。

この辺もソーシャルメディアやシェアリングエコノミーに日々触れているサンフランシスコの人たちの価値観にマッチしており、人気の秘密でもあります。通常はどうしても公開したがらないような企業秘密もどんどんシェアすることで顧客との信頼関係ができるのと、ビーントゥバーを一時的なブームで終わらせずに、カルチャーとして定着させたいという思いがあります。

また、情報や手法をオープンにすることで、より多くの人にビーントゥバーの魅力を知ってもらうだけではなく、他にもビーントゥバーのお店が増えれば、大きなムーブメントを起こすこともできます。これが物事を性善説で考えるサンフランシスコ的なコンセプトです。

製造体験では、その材料、つくり方だけではなく、チョコレートの変わった楽しみ方なども紹介しています。お酒とチョコレートを一緒に楽しむ「酒&チョコレート」というクラスもあります。本物志向のサンフランシスコの人たちの心を掴んでいるダンデライオン・チョコレートは、既存の概念に革命を起こすチョコレート界の“破壊的イノベーション”でもあるのです。

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ビーントゥバーチョコレートの製造方法を丁寧に説明するジェニファー・ロイさん

 

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Text:ブランドン・片山・ヒル
米国サンフランシスコに本社のある日・米市場向けブランディング/マーケティング会社Btrax社CEO。主要クライアントは、カルビー、TOTO、JETRO、伊藤忠商事、Expedia、TripAdvisor等。2010年よりほぼ毎週日本から米国進出を希望する企業からの相談を受け、地元投資関係者やメディアとのやりとりも頻繁。
http://btrax.com/jp/

掲載号

Web Designing 2017年4月号

Web Designing 2017年4月号

2017年2月18日発売 本誌:1,530円(税込) / PDF版:1,200円(税込)

サンプルデータはこちらから

企業のIT推進担当者やネット運営者に向け、ネットビジネスの課題を解決するノウハウや最新情報をお届け。徹底した現場目線とプロへの取材&事例取材で、デジタルマーケティング施策に取り組む上での悩みや疑問、課題を解決するヒントを紹介します。

4月号のテーマは「エンゲージメント」です。

競合他社のひしめく中、顧客に自社商品・サービスを選んでもらい、さらにリピートしてもらうのはなかなか難しい現在。
価格競争に巻き込まれることなく安定した収益を見込むための戦略の1つとして「エンゲージメント(愛着・共感)」向上があります。
顧客に自社商品、ひいては会社自体に興味を持ってもらい、贔屓にしてくれる「上客」を育てるにはどうすればいいのでしょうか。

本書では、「安定した収益を見込むための顧客エンゲージメント向上」をベースに、
顧客エンゲージメントを高めるとどんないいことがあるのか?
エンゲージメント(愛着・共感)を高めるには?
顧客のエンゲージメントは今どうなっているかを把握するには?
現在の顧客の声をデジタルをベースに聞き出すには?

と、段階と施策に分けて丁寧に解説します。



【Chapter01】
安定収入を得るためには?
_エンゲージメントを上げることのメリット
_顧客の共感や満足度を高めること
_顧客の満足度とはどういうことか
…etc

【Chapter02】
共感や満足度を高めるためには?
_カスタマーサクセスで成功のプランを設計する
_顧客を知るためのカスタマージャーニー
…etc

【Chapter03】
現状を知るには?
_指標を持つことの重要性
_NPSで測れること、わかること
_CESで測れること、わかること
_なにを改善するかを理解する
…etc

【Chapter04】
顧客の声を聞くには?
_各種アンケートで顧客の声を聞く
_SNSを利用する
…etc


SNSのエンゲージメント率とは?

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