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知的財産権にまつわるエトセトラ Web Designing 2017年2月号

社内断捨離には要注意! 企業内の自炊はNG!? ~青山ではたらく弁護士に聞く「法律」のこと~

身の回りに溢れる写真や映像、さまざまなネット上の記事‥‥そういった情報をSNSを通じて誰もが発信したりできるようになりました。これらを使ったWebサービスが数多く誕生しています。私達はプロジェクトの著作権を守らなくてはいけないだけでなく、他社の著作物を利用する側でもあります。そういった知的財産権に関する知っておくべき知識を取り上げ、毎回わかりやすく解説していくコラムです。

旺文社が全国の高校・大学約500校から入試問題の提供を受けて原本を社内の倉庫で保管していたそうですが、場所を取ること、劣化することから2007年以降はPDF化していました。しかし、その行為が著作権法違反に当たる恐れがあるとの指摘を受けて、すべて削除したと10月に報道がありました。

自分の書類や書籍をPDF化することを「自炊」と言います。書類減量、オフィスの有効活用法としても魅力的な方法ですが、残念ながら企業内での自炊は著作権侵害です。このことに異論はありません。

自炊については複製権が問題となりますが、著作権法上は私的使用目的の複製は複製権侵害にならないとされています。「私的使用目的」とは自分自身、あるいは家族に提供する場合などです。そして、企業内での複製は、どんなに少人数でも、さらに言えば自分自身が使うためであっても、私的使用目的に当たらないとすることで異論がありません。したがって企業内での自炊は複製権侵害となります。報道された旺文社の対応も、このような理解によるものだと思います。

ただ、だからといって社内の膨大な書類の自炊が一切許されない訳ではありません。たとえば、社内で作成した資料など、会社が著作権者となっているものはもちろん自炊できます。また、取引先から提供されたプレゼン資料や、企業が発信しているプレスリリースなどは、自炊について著作権者が暗黙の許可をしているか、そうでないとしても自炊が著作権侵害だと訴えてくることは少ないだろうと思います。

旺文社の事例ではどうでしょうか。学校側が旺文社に問題を提供していることからすると、学校は旺文社の自炊についても許可していたか、少なくとも自炊について著作権侵害と訴えてくる可能性はないようにも思います。ただ、学校の入試問題の中には、国語の問題に使われた文学作品など、学校が著作権者ではないものも含まれています。それらについては学校に自炊を許可する権限はありません。だからといってすべての問題をチェックして、学校が著作権を有していないものだけを削除するのも大変です。旺文社が全データを削除することにしたのにはそういう理由もあるのでしょう。今後は旺文社がどのような対応をとるのかわかりませんが、最初から学校側からPDFデータで問題の提供を受けるようにすると良いのかもしれません。

なお、以上にしたがって自炊ができる場合、本連載でも紹介した「引用」の要件を満たしていれば、その資料に収録されている第三者の著作物なども一緒に自炊をすることが許されます。ただ、国語の試験問題に使われている文学作品などは「引用」には該当しません。旺文社の対応はやむを得ないものだったと言えるでしょう。

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ただし、引用の要件を満たしていれば1、2に関しては自炊をすることができる。国語試験の問題は引用における付従性(主従関係)の要件を満たさないので自炊はできない
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Text:桑野雄一郎
1991年早稲田大学法学部卒業、1993年弁護士登録、2003年骨董通り法律事務所設立、2009年より島根大学法科大学院教授。著書に『出版・マンガビジネスの著作権』社団法人著作権情報センター(2009年)など。 http;//www.kottolaw.com/

掲載号

Web Designing 2017年2月号

Web Designing 2017年2月号

2016年12月17日発売 本誌:1,530円(税込) / PDF版:1,200円(税込)

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2月号の特集テーマは「Web動画マーケティング」です。

「いまは動画の時代である」と言われはじめてはや数年。インターネットで見られるコンテンツのうち、動画の割合が増えてきたことは言うまでもありません。SNSはもとより、コーポレートサイトなど、目にする機会が多くなった動画は、すでにマーケティングのツールのひとつとして考えるのが当たり前になっています。とはいうものの、いまのビジネスに動画がどんなメリットを与えてくれるの? という方も多いのでは。そんな方のためにも本特集では、利益を伸ばすためのポイント、トラフィックを増やす方法、SNSやYouTubeとの連携など、ビジネスに動画を活用するための知識や方法を、費用対効果に沿った形で解説します。大手企業のマネをするのではなく、自社のビジネスにあった動画の活用方法をお伝えします。


第1部「ここだけはおさえたい! 動画マーケティングの基礎知識」

_実録「マーケティグ動画のできるまで」
実際に中小企業が動画マーケティングのプロに仕事を依頼した一つの案件について、ヒアリングから動画制作、納品、その後の分析/解析まで時系列で紹介。
動画施策の一連の流れを疑似体験してみましょう。

_やさしく解説する「動画マーケティング」
動画マーケティングについて、その考え方、ポイント、留意点などさまざまな点から、動画とマーケティングの関係についてわかりやすく解説します。

_“動画マーケティング”その背景を考える
なぜいまマーケティングに動画が利用されるのでしょうか。写真ではなく、動画であることの理由はたくさんありますが、スマートフォンの普及、それに応じた縦型動画の利用などなど、いま動画がマーケティングとして利用される背景について考えます。

_マーケティング視点で考える動画
動画をマーケティングに利用するということは、単に写真を動画に入れ替えるということではありません。動画にすることの目的は、あくまでも自社の課題を解決するためです。
課題を見つけ、それに応じたKPIを立て、PDCAを回していくという基本的な考え方が必要であることを改めて考えます。

_Facebook、Twitter、Instagram…SNSで展開する動画について
SNSで動画はどのように扱われ、いかにマーケティングに利用できるのでしょうか。各SNSがプラットフォームとして用意する動画との親和性はもとより、利用する側が知っておきたいさまざまな知識について解説します。

_Youtubeで公開する動画について
SNS同様、動画プラットフォームとして確立しているYouTube。広告としてだけでなく実際に動画を配信することで得られるメリット、マーケティングとして利用するための方法についてなど、あらかじめ知っておくべき基礎知識をまとめます。

_動画の効果を測定する方法、その考え方
動画を利用したマーケティングでは、動画つくって終わりではありません。公開した動画がどのように見られているのか、アプローチしたい層に届いているのかなど、その効果を測定しながらさらなる改善が必要になってきます。そのための効果測定について、解説します。


第2部「事例集」
_5つの事例から学ぶ、動画マーケティングの現場からの視点

コラム
_費用対効果で考える自社の動画制作(予算と規模感の相関)
_中小企業が実践すべき動画マーケティング10か条

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