オウンドメディア “マル秘” 記事作成術~こうすれば読んでもらえる! 事例詳細|つなweB

とにかく難しいのが、オウンドメディアのネタ探し。「毎週更新なんて無理!」と思っている担当者は多いはず。そこで、中小企業へのコンサルを得意とする坂田誠さんに、秘伝を授けてもらおう!

 

坂田 誠
SNS運用コンサルタント。(株)はちえん。全国の商工会議所などで年間100本、総計500本以上の中小企業向けSNSセミナーで講師を務める人気コンサルタント。http://8en.jp/

 

オウンドメディアは「こだわりブログ」のイメージで

オウンドメディアで集客を、といってもはたしてどうすればいいのかと考え込んでしまう人は多いはず。特に、これからオウンドメディアを始めようと考えている、中小の企業にとっては、ハードルは高いと感じるだろう。

私は仕事でアドバイスをする中小企業には、オウンドメディアというよりも、「こだわりブログ」を書き続けてみようくらいの低めのハードルで始めた方が、結局は集客成果につながるよ、と話をしている。

とはいえ、これまでのブログと同じように、なんとなく日々更新するだけでは、顧客には読んでもらえない。魅力あるコンテンツにするには、最重要な大前提が一つある。それは「読んでくれる顧客はどんな人であるのか」を設定することだ。そして、「その人に何を書けば喜んでもらえるのか」を徹底的に考えるのだ。

 

読者をとことん明確化してから書き始める

たとえば、女性向けの健康食品会社がブログを立ち上げたとする。20~30代の主婦を顧客とするのか、50代以上の中高年の主婦を顧客とするのか。年代が違うだけで顧客が関心を持つ内容は大きく変わるだろう。

すべての年代別に通じる、クオリティの高い記事を書くのは難しいが、「愛知県に在住。夫はサラリーマンで、子供は幼稚園。育児・パートに追われながらも、いつまでも女性として美しさは保持したい主婦」と設定し、その人が喜んでくれそうな情報を考えてみれば、書くべき内容が具体的に見えてくる。ここまでお膳立てを整えておけば、普通の人でも、顧客に読んでもらえる記事を書けるはずだ。

概念が抽象的なオウンドメディアだが、「こだわりあるブログ」を書けばいい、という軽い気持ちと、「綿密に顧客を想定」した上で、具体的に書くべき内容をリストアップする。つまり、やるべきことの明確化による行動の促進としっかりとした段取りを踏んでいけば、中小企業でもしっかりとしたオウンドメディア構築を始めることができるだろう。

さて、ここからは「こだわりブログ」を運用・成功させる6つの方法を紹介する。ぜひ、実践に取り入れてほしい。

 

Point1 お客様からの「質問」こそ、需要ある極上ネタと心得える

前任者の予告なし退社に、社長の思いつき…。突然、担当を任されたはいいが、何を書くべきかさっぱりわからない。よくありがちな、オウンドメディア担当者の悲劇だ。その場合、営業・接客スタッフに頼んで現場の顧客から出てくる質問を集め、それを記事にするのが一番だ。現場で顧客が質問している以上、Web上でも、同じ質問をしたい顧客は数多くいるだろう。その質問にていねいに答えるだけで、顧客から満足度の高い記事ができあがる。顧客からの質問は、企業のオウンドメディアにとって「宝」なのだ。

より多くの宝を集めるには、営業・接客スタッフに対し、顧客から受けた質問を必ずメモに残し、それを担当者に伝える、つまり質問を吸い上げる仕組みを社内でつくることだ。この仕組みが機能すれば、顧客満足度の高い記事のネタが、安定して集まる。ネタ不足に悩むことなく、書くことに集中して、クオリティの高い記事を目指していくことができるだろう。

 

Point2 ただの情報ではツマラナイ。「実践レポート」で面白くする

どこかのサイトや本に書いてあることをアレンジして記事を増やしても、たいしてアクセスは増えない。それは当然だ。同業者も、似た情報をWebに載せているから、埋もれてしまうのだ。では、埋もれない記事を書くにはどうするか。情報を情報で終わらせず、実践してレポート記事を書くのだ。

 たとえば、「菜食ダイエットは効果が高い」と書くよりも「菜食ダイエットを10日間やってみた!」と書かれたほうが興味が湧く。「スマホの簡単な動画アプリ紹介」よりも「簡単と噂のスマホ動画アプリに素人が挑戦!」のほうが読んでみたくなる。つまり、単なる情報も、実践レポートにするだけで、ついつい読みたくなる記事に変身するのだ。実践レポートは文章量が多くなくても、現場の写真をふんだんに盛り込むことでボリューム感のあるリッチな記事になる点も、書くのが苦手な人には嬉しいはずだ。

手間は掛かるが、実践レポートは魅力ある記事づくりには必須。定期的にチャレンジしよう。

 

Point3 常に「主観」を入れて、読み応えをグレードアップ!

客観性のある記事を書こうとするがゆえに、自分で読んでも平板で面白みのない記事になってしまう…。まじめなオウンドメディア担当者にありがちな現象だ。ズバリ、アドバイスすると、客観性など忘れ企業の思想や考え方、経験を盛り込んだ「主張のある記事」にしよう。

 たとえば「一般的にSNSは組み合わせによる戦略性が重要といわれる」といったような教科書のような文章よりも、「弊社の過去の事例を見ても、SNSは適切な組み合わせがなければ、絶対に成果はない」と力強く主張されると、説得力が格段に違うのがわかるだろう。

 顧客は誰が書いたか変わらない一般論を知りたいのではない。その道のプロだからこそ書ける、「本当の答え」を書いてほしいと思っている。よってプロであるなら、仕事へこだわりや、確かな経験をもとに、その主張を記事に盛り込むべきだ。

そうした記事が積み重なって、顧客への企業姿勢と実績があふれでてきた時、自然とそこに惹かれ、顧客が増え、オウンドメディアが完成するのだ。

 

Point4 SNSで「 “ネタ”のテストマーケティング」をどんどん試す

何がウケるかわからないまま、暗中模索で記事を書き続けてみたものの、手応えなし…。ウケるネタが簡単にわかればいいのに、そう思っているオウンドメディア担当者も多いだろう。そんな時は、SNSでネタのテストマーケティングをしてみよう。

140文字程度の小ネタをTwitter やFace bookにどんどんアップしてみる。そして「いいね!」やリツイート、シェアが多いネタは、つまり顧客が興味関心を持った証拠。あとは、小ネタをより深掘りして、きちんと記事にまとめれば、ウケる記事は完成する。

なお、ここで重要な点は、自分の価値基準で決めず、無作為に、さまざまなネタをあげていくことだ。プロ側の日常的な観点と、顧客側の観点では、興味関心に大きなズレが生じている場合が多く、自社のつまらない日常が、顧客にとっては興味津々、ということも少なくない。とにかく片っ端からSNSに小ネタをアップし、顧客とのズレを埋める、大切な気付きとしていくことだ。

 

Point5  パソコンの前で固まってしまうなら「スマホの音声入力」で書き始める

新しい記事を書かないといけないのに、書き始めること自体がおっくうで、延々と書けない。多くのオウンドメディア担当者がはまる泥沼だ。やらなきゃいけないと気合を入れてやろうとするほど、やりたくない気持ちが増してくる。実は、人にはそんな困った心理作用が働くのだ。それを打破するにはスマホの音声入力が有効だ。気合を入れずに、「取り敢えず」で書き始めてみるのがよい。今の音声入力は精度が高く、かなり正確に文章が変換できる。

まずは、多少の誤字脱字や話の構成などは気にせずに、思いついたことを音声入力でザックリとまとめる。そしてひととおり書いたところで、その文章をパソコンに移し、きちんと推敲して完成させる。これなら嘘のように筆が進む。パソコン前で記事が書けずに悩んでいるならば、まず思いついたままをスマホで音声入力すべし。覚えておきたいスマホ活用術の一つだ。

 

Point6 成果を慌てず、「記事100本」までは黙々と続ける

それなりに記事本数を書いたが、アクセスも売上も増えない…。そんなオウンドメディアに限って、記事数はたかだか20~30本程度だったりする。

オウンドメディアのアクセス数や顧客も増え始める傾向が見えるのは、記事本数が100本を過ぎてからだと言われる。それまではたいした成果はなくて普通なのだ。

この背景には、同テーマの記事数が増えると検索エンジンのSEOの効果が発揮されるというのがその理由だ。しかも継続的に書くと、文章や構成が上達し、面白くなる。そして、記事を楽しみにするファンも増えてくる。これらが重なってくるのが、記事100本なのだ。Webメディアについては、「楽して短期で儲かる」的な幻想を抱いている人が多いが、そうではない。真面目にコツコツと続けた者こそ報われるのだ。オウンドメディアは担当者任せではなく、企業として育てるもの。そこを経営者が理解し、継続の努力を怠らなければ、顧客獲得の道は必ず開けるだろう。

 

Illustlation:カトウキョーコ
※Web Designing 2016年10月号(2016年8月18日発売)掲載記事を転載