【未来食堂】オウンドメディア=家の中から書く手紙|WD ONLINE

WD Online

せかいと未来 Web Designing 2016年10月号

【未来食堂】オウンドメディア=家の中から書く手紙 未来食堂とオウンドメディア

東京・神保町に位置する定食屋「未来食堂」をご存じでしょうか? エンジニアとして勤めた小林せかいさんが、オープンソースの概念を飲食業で実践する素敵なお店です。そんな小林さんの頭のなかをオープンにするこの連載。はたして、どこにたどり着くのでしょうか!

東京・神保町に開店した“ふつう”をあつらえる、ふつうじゃない定食屋。「まかない」「ただめし」「あつらえ」といったオープンな仕組みと、店主(女将)の想いに共感する人たちが日々集う“場”として、食事をメインに、新たな「価値」と「出会い」、「居心地の良さ」などを提供し続ける。 http://miraishokudo.com/

こんにちは。未来食堂のせかいです。

今回のお題はオウンドメディア。前号で、SNSは「一人にあてた手紙」のようなイメージだとお話しましたが、自社媒体メディア(以下自メディア)は「家の中から書く手紙」のようなイメージがあります。

と、まずは最初に未来食堂が持っている自メディアを整理しますね。自メディアは、Webサイト、ブログ、Facebook、Twitterの4つ。手が回らないためTwitterはほとんどお休み状態。Webサイトは固定の情報しかありませんが、サイト内のカレンダーに当日のメニューを載せているので、近隣のお客様がランチタイム前に見られるのだと思います。こんな未来食堂が特に大事にしているメディアは、

“ブログ”。ブログは自分側発信であり、自分の考えを自分の言葉で伝えることができます。このありがたさを感じたのは、メディア、特にテレビが未来食堂を放映して大反響を受けた時でした。

「取材される」というのは、どんなに上がってきた原稿を手直ししても、完全に自分の思いと重なることはありません。他社発信である分、どうしてもズレがあるのです。かれこれ20回以上取材を受けていますが、どんなに回数を重ねてもズレがなくなることはありません。さらにこのズレは、テレビなど“原稿の直し”ができないマスメディアの方が大きく、困ったことに反響もそちらの方が大きいのです。

テレビやネットで大きく反響があった時は独特の辛さがあります。もちろんありがたいのですが、でもコントロールできないものに振り回されている感じがして、「違う! そうじゃないんだ!」と叫びたい心持ちになります。そんな自分の寄る辺となったのが、“ブログ”でした。「現在お店も乱気流ですが、自分自身も真っ暗な海で漂っているようで辛いです」と、そんな内容を書くだけでも、すっと気持ちが楽になりました。

ある日、あなたの会社が、全く意図しない方面で反響を呼んだとしたら、その反響に圧倒されて声が出なくなるかもしれません。私はそうでした。そんな時に逃げ込める“家”が、そこから手紙を送る手段が、あると良いと思うのです。

いつまでも家の中にいるのもダメなんでしょうけれどね。“ファン”に向けての発信は、肯定してくれるという確信があるが故に、甘く気持ちのいいものです。とはいえ、暗く冷たい外海に漕ぎ出さないと、より多くの人に伝播することはできません。楽ではありませんが、どんな嵐を迎えても帰れる“家”があるという思いだけで、ぐっと背筋を伸ばしていられます。

最近は本を書いています。本も“オウンドメディア”ですよね。執筆は大変ですが、自分の言葉でまったく自分のことを知らない世界に考えを伝えられる貴重な機会です(このコラムも!)。“オウンドメディア”がネット発の言葉だからといって、ネットにこだわる必要はきっとありません。オフィスビルの壁に壁新聞を貼ってみるのはいかがですか? 不器用でも、自分の言葉で発信する内容は、きっと誰かの心に響きますよ。

 

 

※この連載のネタ帳はGitHub Gistにて公開しています。
http://miraishokudo.com/neta/web_designing
内容についてご質問、アイデアのある方はお気軽に。

Text:小林せかい
東京工業大学理学部数学科卒業後、日本IBM、クックパッドで6年半エンジニアとして勤めた後、1年4カ月の修行期間を経て「未来食堂」を開業。自称リケジョ。その他、詳しいプロフィールは公開されている情報をご覧ください。 https://goo.gl/XpwnMQ

掲載号

Web Designing 2016年10月号

Web Designing 2016年10月号

2016年8月18日発売 本誌:1,559円(税込) / PDF版:1,222円(税込)

サンプルデータはこちらから

■ 特集:“小さく始める”オウンドメディアのつくり方

「ブランディング、集客、ひいては売上を伸ばすための施策としてさまざまな企業が実践している「オウンドメディア」。競合がはじめているから、いまの時流だから、自社の利益に繋がるならば、などとオウンドメディアをはじめようと思っている方も多いはずです。けれども「Webサイトをつくり、クオリティの高い記事を毎日更新していくのはムリ…」と思われている方、決してそんなことはありません。SNS、ブログ、自社サイトなど、すでにある“コンテンツ”を活かして自社の利益へとつなげることができるのです。オウンドメディアは、大きな会社だけのものではありません。予算をおさえながらも、大きな効果を生むオウンドメディアについてご紹介していきましょう。

第1部 効果的なオウンドメディアの制作→発信術

#新人まこちゃん、インターンとしてあのLIGブログに!
今さら聞けないオウンドメディア
#大事なのは「愛」と「戦略」
基礎の基礎から理解するオウンドメディア
#スピードこそが正義だ!
オウンドメディアは2週間で立ち上げよ!
#重要なのはアクションしてもらうためのスイッチ
“拡散”の秘訣は導きたい結果からの逆算
#スモールスタートで成果を出す
担当者ひとりでもできるオウンドメディアのはじめ方

#【座談会】担当者だから話せる“現場”の話
オウンドメディアの大変なこと、やってよかったこと

#構築後の改善アクションで、他社をリードする
「目標設定」と「効果測定」

#ふたたび新人まこちゃんが登場! 先輩オウンドメディアを紹介
あれも? これも!? オウンドメディア

第2部 事例から学ぶ“小さく始めて”成功する方法

【Case Study #01_河内屋】自社で運営するメリット
特殊印刷の事例で“魅せる”世界観を社内で発信

【Case Study #02_一俊丸】業界不振も、売り上げは2倍に
老舗釣船店メディア3つの掟

【Case Study #03 _Happy Maker!】自社の強みでユーザーとつながる
オタク向けに特化した婚活コンテンツ

【Case Study #04 _町田美容院の知恵袋】意外な手段で記事を量産
自前サイトで勝ち取った集客の極意

【Case Study #05 _SMASH WATCH】新たなコミュニケーション
ECサイトと連携したオウンドメディア
【Case Study #06 _箱庭haconiwa】Webのプロから学ぶ
共感を得る“好き”の気持ちとノウハウ
【Column】海外のSNSはいまどうなってる?
_オウンドメディア㊙記事“作成術”
_うまく活用したい補助金・助成金

■ WD SELECTION
マジョリ画/ Bascule Inc-βver. /ジムナストコロン/水曜日のカンパネラ OFFICIAL SITE/踏み台上等。dof のサマーインターンシップ/ユニコーンNEW ALBUM「ゅ 13-14」特設サイト/ ayanomimi /武蔵野美術大学 工芸工業デザイン学科/MIKIYA TAKIMOTOPHOTOGRAPH OFFICE - 瀧本幹也/ DeNARunning Club /ストリアクリニック/ illion"Water lily" Connected JamVideo / Gallery Site「SHINYA KIYOKAWA」/ ECHO 50V BATTERY SERIES

■ ビジネス・EC
□ ECサイト業界研究
「わさび式」記事作成法で集客力アップ!

□ モバイルビジネス最前線
MagicPrice:アドテクの活用でホテルの最適料金を予測

□ 知的財産権にまつわるエトセトラ
店内のBGMと著作権

□ Bay Area Startup News
ビットコイン技術で護るBlockai社の試み

■ マーケティング・プロモーション
□ データのミカタ
企業におけるクラウドの普及はどこまで進むか

□ デジタルプロモーションの舞台裏
面白法人カヤック:自らの強みを最大限アピールしたコーポレートサイト

□ 行動デザイン塾
オウンドメディアに求めたい「アクセシビリティ」

□ 解析ツールの読み方・活かし方
ベンチマーキングで市場を見ながら自社の評価を行う

■ コラム
□ One's View
今月のお題【オウンドメディア】
育てるための3つのポイント by 白井明子
オウンドメディアの副作用 by 土屋尚史
“リアル” な空間や体験の価値 by 峰松加奈

□ 未来食堂の「せかいと未来」
自ら発信するためのメディア

編集部よりお詫びと訂正のお知らせ

本誌P67「Case Study01 河内屋」記事内におきまして、誤記がありました。関係者の皆様にお詫び申し上げます。以下に正しい表記を掲載いたします。

× Web制作会社の(株)ナイルはコンサル事業を行っており
○ Webコンサルティング事業を行うナイル(株)が