WD Online

知的財産権にまつわるエトセトラ Web Designing 2016年4月号

動物が描くアート作品と著作権 ~青山ではたらく弁護士に聞く「法律」のこと~

身の回りに溢れる写真や映像、さまざまなネット上の記事‥‥そういった情報をSNSを通じて誰もが発信したりできるようになりました。これらを使ったWebサービスが数多く誕生しています。私達はプロジェクトの著作権を守らなくてはいけないだけでなく、他社の著作物を利用する側でもあります。そういった知的財産権に関する知っておくべき知識を取り上げ、毎回わかりやすく解説していくコラムです。

28cd5004beb1bb446ee4f1a3b08aaeec.jpg
著作権の所在が問題となったクロザルのナルトが撮影した写真

上の写真をご覧ください。サルが歯を見せて笑っているように見えるこの写真、シャッターチャンスといい、構図といい、なかなか面白い作品です。被写体となったのは野生のクロザルです。プロカメラマンでも至近距離からこんな野生動物の写真を撮るのは難しいのではないでしょうか。素晴らしい作品です。

しかし、先日、サンフランシスコの連邦裁判所はこの写真に著作権は成立しないという判決を出しました。それは、被写体となったクロザル自身が、“自撮り”したものだったからです。報道によると、この写真はナルトと名付けられたクロザルが、英国の自然写真家デイビット・スレイター氏のカメラを使って撮影したそうです。スレイター氏が絶滅危惧種のクロザルの撮影をしていた時に、放置していたカメラでナルトが遊んでいたところ、偶然に撮れた写真だそうです。

その後、この写真が無断でウィキペディアに掲載されたため、スレイター氏は自分が著作権者だとしてウィキペディアを運営するウィキメディア財団に対して提訴しました。しかし、結局、アメリカの著作権庁が動物による作品に著作権が成立しないと判断を示したことで、ウィキメディア財団に軍配が上がりました。

ところが問題はこれでは終わりませんでした。「動物の倫理的扱いを求める人々の会(PETA)」が、ナルトの代理人と称し、ナルトが著作権者なのにスレイター氏がナルトに無断で写真を使用しているとして提訴したのです。上述の判決はこの裁判について示されたものでした。

これらの裁判を経て、この写真は著作権の成立しない、誰でも自由に使える作品ということになりました。もし日本で同様の裁判が行われたとしても、おそらく同様の結論となるでしょう。スレイター氏は撮影行為自体には関与していませんし、撮影をしたナルト(動物)は法律上の権利者にはなれないからです。

ただ、動物の作品にまったく著作権が成立しないというわけではありません。米国在住のリンジー氏のブログ「filth wizardry」に掲載されている写真で、カラフルな線が描かれている絵画が掲載されています。実は、この絵画を描いたのはカタツムリなのです。リンジー氏によると、食品着色料の色を吸収させたカタツムリを紙の上で移動させ、着色された粘液によって描かせたものだそうです。ではこの絵画の場合、著作権は成立するでしょうか?

ナルトの写真とは異なり、この絵画では、どんな色を使うか、どこからカタツムリを這わせるかをリンジー氏が決めています。そこにリンジー氏の関与があるので、リンジー氏を著作権者と考える余地がありそうです。

海外ではオークションでチンパンジーの描いた絵が数百万円もの価格で落札される例なども出てきています。タブレットPCは動物による操作にも反応しますので、動物が創作したデジタル作品が登場する日も近いかもしれません。みなさんのペットに思わぬ才能を発見した場合は、ペット任せにせず、ご自分も作業に加わるようにしておくことをお勧めします。

1ba9a6c64436e6274bf0521939ba263f.jpg
食品着色料を使ってカタツムリが描いた絵画
http://www.filthwizardry.com/2008/05/snail-painting.html

 

c0cdfb8b61db28c0e9aeba1dfd46a8ae.jpg
Text:桑野雄一郎
1991年早稲田大学法学部卒業、1993年弁護士登録、2003年骨董通り法律事務所設立、2009年より島根大学法科大学院教授。著書に『出版・マンガビジネスの著作権』社団法人著作権情報センター(2009年)など。 http;//www.kottolaw.com/

掲載号

Web Designing 2016年4月号

Web Designing 2016年4月号

2016年3月18日発売 本誌:1,530円(税込) / PDF版:1,200円(税込)

ECサイト、次に打つべき6つの施策/Adobe Animate CC

サンプルデータはこちらから

■ 特集:ECサイト、次に打つべき6つの施策
 自動化・効率化‥‥。あなたのサイトを儲かるサイトに!

自動化と効率化が鍵。儲かるサイトはこうつくる!
「ECショップの売り上げが伸びない!」「それどころか、毎日の作業に押しつぶされそう」といった悩みを持つ店長さんやショップの運営担当さんは数多くいらっしゃるはず。そこで彼らの声にじっくりと耳を傾けてみると、「集客」「決済」「ステップメール」「チャット」「多店舗展開」「倉庫・物流」の6つにポイントがあることが見えてきました。
儲かっているショップは、この6ポイントをよくよく見直し、ツールなどを使いながら、自動化・効率化しているのです。本特集は、悩めるショップの皆さんはもちろんのこと、サイトの制作に携わるWeb制作者の皆さんにも読んでいただき、一丸となって「売れるECサイトづくり」に勤しんでいただくための内容になっています。さあ、はじめましょう!

 【Introduction】中小ECサイト運営者が、今取り組むべき6つの施策
 手間のかかるSNSマーケティング、本気で取り組むならツールが役立つ
  プロが薦める最新デジタルツールレポート1:コムニコマーケティングスイート
 カード決済をしない顧客に最適な支払い方法を提供する「導線」を
  プロが薦める最新デジタルツールレポート2:Amazonログイン&ペイメント
 シナリオに沿って内容を変え、自動送信する「ステップメール」
  プロが薦める最新デジタルツールレポート3:アスメル
 【Column】中小のECサイトにこそ、マーケティングオートメーション導入を
 Webにおける「おもてなし」の接客を実現する「チャットツール」
  プロが薦める最新デジタルツールレポート4:Zopim
 モール間の管理・連携を自動化してくれるツールがすごい
  プロが薦める最新デジタルツールレポート5:ネクストエンジン
 使いやすく独自色の強い新しい物流サービスに注目を
  プロが薦める最新デジタルツールレポート6:オープンロジ

■ 集中企画:Adobe Animate CCの全貌とその戦略
 “Flash”がHTML5時代に生まれ変わった! リッチコンテンツ作成ツールの必要性を解説

リッチコンテンツツールとしてWebシーンの一時代を築いてきたAdobe Flash Professionalが約3年ぶりのメジャーバージョンアップを行い、2016年2月、その名称を「Adobe AnimateCC」として正式に公開されました。「なぜ、今、Flashをバージョンアップするのか」「何ができて、どのような需要に対応しているのか」など、その全貌と、これからの展望について解説していきます。

■ WD SELECTION
Prius I.D./relax×LEGACY『relax』特別復刊プロジェクト/ホンダオートテラス presents 中古車グランプリ/リベロジック株式会社/727看板物語/アニメ『ヒストリカル』/IJC MUSEUM IS JAPAN COOL ?/KPP 5th Anniversary Special Website/PS4「進撃の巨人」(Yahoo! JAPAN PR企画)/GIANT MINI4WD PROJECT/un-T factory! NAGOYA /NON-GRID Inc./SAVASミルク「よみがえれ、運動部魂! 部活ワザ選手権」

■ ビジネス・EC
 □ ECサイト業界研究
  ファーストタッチポイント:リピーター獲得のポイントは「ダンボール」にあり

 □ 月刊店舗設計
  ブランドショップAXES:細かな改善を積み重ね、売上を半年間で150%向上

 □ モバイルビジネス最前線
  monomy:日本のモノづくりを変える? 新スタイルのアクセサリー通販アプリ

 □ 知的財産権にまつわるエトセトラ
  動物が描くアート作品と著作権

 □ Bay Area Startup News
  ニッチな製品でも、世界には需要がある! クラウドファンディングで海外進出

■ マーケティング・プロモーション
 □ サイト改善基礎講座
  アクセスログに統計解析を用いてユーザー像を導く

 □ ハギハラ総研
  ネット利用時間という考え方はいずれなくなる

 □ デジタルプロモーションの舞台裏
  ど真ん中の商品訴求でビール・酒類商戦を勝ち抜く

 □ 行動デザイン塾
  “脳内カレンダー”活用のススメ

 □ 課題解決のためのUI実装講座
  ページ遷移をなくして離脱を防げ! 無限スクロールの活用方法

 □ 解析ツールの読み方・活かし方
  過去パターン依存から脱却し、新たな顧客層を掘り起こす

■ クリエイティブ・コラム
 □ ナビゲーターが選ぶ注目のデジタルコンテンツ
  [バズ施策]マス→ネットでバズらせる:引越し侍TVCM by 眞鍋海里
  [デジタルプロモーション]PR成功の黄金律:Intelligent Parking Chair by 築地 Roy 良
  [Webサービス]声で伝えるストーリー:Adobe Voice by 土屋尚史
  [IoT]本当に意味のあるものは、いつだってシンプルだ:Calender Watch by 神谷憲司

 □ モノを生むカイシャ
  シフトブレイン:本当の仲間たちとたどり着いた「働き方」の追求

 □ 清水幹太の「Question the World」
  褒めて褒めて褒めまくって、歴史を刻む:クレア・グレイヴス

 □ ツクルヒト
  「圏外」から伝えつづけるリアル:都築響一(編集者)

 □ 最果タヒの「詩句ハック」
  第22回 自動返詩

 □ デザインにできることMonologue
  Vol.147 2001年から旅して

 □ エキソニモのドーン・オブ・ザ・ボット
  人工知能は超知能、そして“悟り”へ‥‥。人間とBOTの対談も今月でログアウト!

■ インフォメーション
 □ Topics
  TABO/Japan Growth Hacker Awards 2016/Phantom 4

 □ Movement&News
  横尾芸術の本質は“ 引用” にあり「横尾忠則 迷画感応術」/「私」とは誰だろう? 世界と自分との新たな関係性を探る展覧会/玉木宏からピース又吉、メーテルまで! 展覧会は音声ガイドで選ぶ? ほか
  【2015年日本の広告費】連続増加の牽引役はインターネット広告、運用型広告はさらなる拡大/“ グロースハッカー”が語るカイゼンの極意/IBMとソフトバンク、Watson日本語版APIを提供開始 ほか

この記事を見た人はこんな記事も見ています