2015.12.19
グロースハックに欠かせない2つの戦略とは●特集「成長戦略 グロースハック」 グロースハックとは何か② 基礎と考え方
では、先ほどから登場する「クリエイティブに成長する」とはどういう意味でしょうか? シリコンバレーにおける歴史的な背景から考え合わせると、「これまでマスコミや広告代理店まかせだった集客や販売を、自社内で工夫ができないだろうか?」という命題に翻訳することができるでしょう。
それをさらに具体的に分解すると、ここで紹介する二つの戦略になります。まずは、自分の製品・サービスの現状を当てはめつつ、読んでみてください。
グロースハック・マーケティングの基本戦略1
顧客視点+科学的な実証で「成功の確度を上げる」
グロースハックでまず心がけるべきは、成功の確度を上げることです。そのためには科学的な分析や実証をもとに、顧客に寄り添うことが大事になります。ここではそのための3つの視点を紹介します。
❶科学的な実証をもとに、ムダのない開発環境を作る「顧客開発」と「リーンスタートアップ」
「顧客開発」とは、研究室やオフィスの中ではなく「ビルの外に出て」、顧客の課題を解決しようという考え方です。具体的には製品および組織の成長戦略を、科学的な検証プロセスに基づいて実践しようというものです。その考え方を基盤として顧客の要求や環境の変化に俊敏かつ柔軟に対応しようという「アジャイル開発」、そして、ムダなく効率的に生産を行う「リーン生産方式」を取り入れたのが、「リーンスタートアップというわけです。
❷顧客のリサーチを徹底して課題を解決、製品を洗練させる「リーンUX」
リーンスタートアップを取り入れた顧客開発の手法を、デザイナーやUXデザイナーの視点から定義したのが「リーンUX」です。リーンUXは、顧客の性質の変化を継続的なリサーチによって捉え、課題を解決し、顧客が愛してやまない製品に洗練させるための実践的なアプローチのことです。
❸ログ解析の結果に注目して素早くアクションする「リーン アナリティクス」
リーンUXと同様に、顧客開発の手法をデータ科学者やマーケティング・アナリストの視点から定義したのが「リーン アナリティクス」です。リーン アナリティクスとは、顧客の数値的な変化に着目し、素早く次のアクションにつなげていこうというアプローチのことです。インターネットを介して得られたログの解析が非常に重要な意味を持ちます。
グロースハック・マーケティングの基本戦略2
製品やサービスをそれ自体で「成長できる良品」にする
グロースを達成するには、製品の開発に、マーケティングやデザインのスキルを組み込むことが重要になります。開発部門だけで開発を進めていては成長は達成できません。製品だけが良くてもダメなのです。
❶製品開発にマーケティング施策を組み込む「マーケティング+ソフトウェア開発+デザイン」
製品を広告やマーケティング施策で販売するのではなく、製品やサービスの開発段階から成長に寄与する機能や仕込み、仕掛けを用意しておくということです。そのためにはマーケティングの知識のみならず、成長に寄与する機能を設計し、開発するためのソフトウェア開発やグラフィックデザインの実践的スキル、知識が重要になります。
❷ソーシャルメディアで広まる要素を織り込む「ソーシャルを活かす開発力」「バイラルについての知識」
ソーシャルメディアは10億人に無償でリーチできるかもしれないチャネル。製品の開発時から、バイラルしやすい、口コミで広がりやすい要素を組み込んでおくべきです。ただし、そのためにはFacebookやTwitter、Pinterestといったソーシャルメディアと製品・サービスを効果的に連携させるAPIを用いたソフトウェア開発力が必要ですし、それぞれの利用規約をよく理解することも重要です。もちろんソーシャルの特性であるバイラル、口コミといったに対する知識も必要になります。
❸「優れたコミュニケーション」も設計に加えておく「心理学」「文章・コピー作成能力」
よい製品がよい製品であることを的確に伝えることや、製品利用の各フェーズ(認知、ユーザー登録、購入、退会等)においてユーザーを的確に誘導することは極めて重要なポイントです。サービスはもちろん、製品開発においても開発時から念頭に置いておかねばなりません。それには心理学や、文章・コピー作成のスキル、ソーシャルメディアに関するスキルなどが大切になってきます。
製品開発のプロセスに顧客を巻き込むことで成功の確度を上げようという戦略1と、製品やサービスの中に、自ら成長していく要素を埋め込もうという戦略2。
1を運用する上でのポイントは、(精度が低くてもいいから)少なくとも間違った方向に進まないであろう戦略と分析を、短いサイクルで繰り返すところにあります。スピードを上げることでたくさん失敗できる。その「回数」が、成長を促すというわけです。