ECサイト分析、公式に当てはめたGoogleアナリティクスの見方 事例詳細|つなweB

Webサイトの分析といえば、無料でも多くの機能が使えるGoogleアナリティクス(以下GA)を利用している方は多いでしょう。ECにおいても同様に利用者が多いのが事実です。しかし、同じGAでも、ECにはECの数字の見方があります。

 

アクセス人数・転換率・客単価

ECサイトの分析は、コーポレートサイトやオウンドメディアよりも見るべき数字が比較的わかりやすいかもしれません。EC施策には「売上の公式」というものが存在しているからです。公式とは「アクセス人数×転換率×客単価」、基本的にはその公式に当てはめた上でのチェックがポイントになり、GA上でアクセス人数、転換率(ECサイトへの集客数に対して商品が購入される確率)、客単価(顧客が1回の買い物で支払う金額の平均的)に関連する数字を見ていく必要があります(01)。例えば、自社のECサイトにどこから何人来ているかを知りたければ「ダイレクト」「リファラル」「検索」「SNS」「Eメール」「広告」などがチェックすべき数字になります。転換率と、客単価は計測タグが入っていてECの設定ができていればまずはOKです。

さて、GAの設定を完了して、いきなりつまづきやすいのが「どこから見ればいいのか?」です。筆者もこういった質問をよく受けるのですが、「まずはリアルタイムの概要です。ここから見てください。

今、ECサイトに何人の方がどこから来ているかがわかります」と、実際の画面を見せるようにしています(02)。そうすると今何人の方が訪問しているかがよくわかります。ECサイトのリアル化ですね。これを大きなモニターで社内に表示するだけで、「今、5人来てる!」とか「おー!今のTV番組で紹介されて100人超えた!」などとなります。

 

01 ECを成功に導く「売り上げの公式」
特に自社ECサイトにおける売り上げの構成要素は「訪問者(UU)」×「転換率(CVR)」×「平均顧客単価(AVE)」。この各要素を増やすことが売り上げの最大化に繋がります。ECサイトのUI/UX改善により転換率を高め、訪問者を増やしていきます

 

02 まずはECサイトの「現在」をイメージ
いきなり数字を見たところで、売り上げアップのアイデアはひらめきませんし、わからない数字を睨んでも、むしろ嫌気が差すに違いありません。まず何より先決なのは、今現在、自社のECサイト(ネット店舗)にはどんな動きがあるのか、ビジュアル的にイメージをしてみましょう

 

客単価と転換率

ECサイトのリアル化を実施して見ることとともに、ECの売上の公式を使って、GAの数字を並べてみましょう(03)。

図03の表に、客単価を入れてみましょう。この客単価を目標に設定したら、次は転換率です。自社ECサイトでの転換率はGAの数字を入れていきます。この時、アクセス元(ダイレクトか、リファラルか)ごとに転換率を入れておくとよいでしょう。

最近ではカスタマージャーニーが長くなる傾向がありますので、アシストコンバージョンやコンバージョン経路を意識する必要もあります(04)。よく経営者層からキャンペーンを行った時のそれぞれの効果を出しなさいという要望があると思いますが、カスタマージャーニーが長くなった今の時代、これはかなり無理があります。なお、私たちが無料で使用しているGAの別称UA(ユニバーサルアナリティクス)と呼ばれるバージョンでは、1カ月に処理できる上限が決まっていて、月間1,000万ページビューまでとなっています。上限を超えたヒット数については、正常に処理される保証がなく、サンプリングになります。1セッションで5ページビューとすると1日6万ユーザー以上来るサイトでは、有料版のGoogleアナリティクス360をお勧めします。

 

03 分析結果を表にしてみよう
ここでは、筆者が利用している分析結果を記入していく表を掲載しておきます。月末には当月の状況を入力しておくと振り返りが楽になります。経営層への毎週の報告に使用するとよいでしょう。また、この表に前年比を入れておくとさらに振り返りが楽になります

 

04 GAによるコンバージョン経路
現在は、カスタマージャーニーが長くなる傾向にあるため、コンバージョン経路の確認をしたほうが良いです。単発のキャンペーンだけで効果を図るのは難しい時代になっています

 

GA4の新時代へ

ここまでGA(UA)をベースにお話ししてきましたが、この前提が覆る事態(時代)がもう目の前に迫ってきています。GAの最新版「GA4」がメインになり、現在のUAは2023年7月1日からは使えなくなるのです(GA 360は10月1日まで)。GA4は、既存のUAとは明らかに異なる考え方で設計されています。リリースされた理由の一つに、Cookie(クッキー)の利用規制があります。UAはCookieを活用してECサイトを計測しているため、Cookieの利用に制限がこれからもどんどん掛かってきますから、正確なデータが取れなくなってきます。そこで、Cookieに依存しないデータ計測が可能なGA4をリリースしたという背景があります。

また、GA4はUAのデータと互換性がありません。前年比で見たいといってもデータが違います。また、直帰率なんてありません。ECサイトのファーストビューで動画を公開していたとして、顧客がその動画を見て他のサイトへ行ってしまった場合、直帰率100%と出てしまいます。しかし、動画はしっかり見ています。これは今のUAではすぐにはわかりませんので、妥当な進化と言えます。

そして一番重要なポイントは、2022年3月27日の段階でECのASPやSaaS版、パッケージ版でもGA4を設定できてしっかりサポートできているサービスは多くないので自力で導入することを検討することになりがちなのですが、導入するなら2022年6月30日までに対応する必要があります。なぜなら、前年比がわからなくなるからです。

現状、GA4は機能的に発展途上です。ただ、間違いなく改善が急速に進むでしょう。今が真剣に考える時期でしょう。

 

川連一豊
JECCICA(社)ジャパンE コマースコンサルタント協会代表理事。フォースター(株)代表取締役。楽天市場での店長時代、楽天より「低反発枕の神様」と称されるほどの実績を残し、2003 年に楽天SOY受賞。2004年にSAVAWAYを設立、ECコンサルティングを開始する。現在はリテールE コマース、オムニチャネルコンサルタントとして活躍。 http://jeccica.jp/

 

Text:川連一豊