マーケティング調査でも重要なファシリテーションのスキル 事例詳細|つなweB

マーケティングリサーチには、アンケートや統計分析などの定量的手法と、インタビューや観察などの定性的手法がある。定性的手法のうち最も利用されているのが、グループインタビューだ。年齢や購買行動などの条件に合う消費者を集めて、モデレーターと呼ばれる司会役が2時間ほどの会話を進行する。与えられたテーマや課題解決に参加者同士が協力するワークショップも含み、この場合の進行役はファシリテーターと呼ぶ。

ワークショップでは参加者に成果やゴールを意識してもらうという違いはあるが、司会進行の技術が成果に大きくかかわる点は共通する。的確な応答で会話を促し進行を円滑にする「プロービング」、参加者との心理的な壁をなくし本音を導くための「ラポール」、意図しない相互作用を起こす「グループダイナミクス」など、使われるスキルやコツは同じだ。

日本マーケティングリサーチ協会が毎年発表する調査手法のシェアにおいて、定性的手法は全体の約2割を占め、近年は徐々に比率が増えつつある。何げない言葉からヒントや仮説を発見するのに欠かせない手法であり、進行役は、参加者本人も気づかないようなインサイトを引き出すことが求められる。

新型コロナウイルスにより、2020年以降、従来のような対面でのインタビューがほとんどできない状況だ。当初は混乱もあったが、企業の会議がそうであるように、試行錯誤しながらオンライン化が一気に進んだ。リアルなインタビューでは実現できないオンラインならではのメリットも多く、積極的に活用する空気が生まれている。

オンライン特有のモデレーションやファシリテーションの経験も業界全体で共有されつつある。そのノウハウは、マーケティング調査に携わる専門家にとっても必須のスキルなのだ。

アドホック調査とは、調査設計・調査票の設計・対象者の抽出・実査・集計・分析のすべてが1回限りで完結し、各回がオーダー・メイドで行われる調査のこと。2020年分は2021年7月に公表予定のため、2019年までのデータを引用 ※グラフ内の数値は、小数点以下を四捨五入しているため、合計しても100にならない箇所があります。
出典:日本マーケティングリサーチ協会「経営業務実態調査」
http://www.jmra-net.or.jp/Portals/0/trend/investigation/gyoumujitai_45.pdf
Text:萩原雅之
トランスコスモス・アナリティクス取締役副社長、マクロミル総合研究所所長。1999年よりネットレイティングス(現ニールセン)代表取締役を約10年務める。著書に『次世代マーケティングリサーチ』(SBクリエイティブ刊)。http://www.trans-cosmos.co.jp/
萩原雅之
※Web Designing 2021年6月号(2021年4月16日発売)掲載記事を転載

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