「生産性」は競争力の源泉。ビジネスツールの活用法とは? 事例詳細|つなweB

プロジェクトマネジメント、コミュニケーションツール、タスク管理ツールなどの広告や紹介文でよく見るのが「生産性向上」である。正確には労働生産性と言い、単位時間あるいは労働者一人あたりの付加価値の生み具合を測る。工場やオフィスでは定義や算出法は異なるが、生産性向上と言うためには、そのツールを使って利益が増えるか、同じ利益を少ない労働量で達成するかが必要だ。

諸外国に比べて日本の労働生産性が低い話はよく聞く。2019年12月に発表された、日本生産性本部による最新データでは、1時間あたり労働生産性は46.8ドル(4,744円)で、調査対象の36カ国中21位だった。主要7カ国(G7)では、米国が74.7ドル(7,571円)、日本は最下位が続く。その国の産業構造や高収益企業の数によっても決まるので、日本人がさぼっているとかモタモタしているとは限らないが、競争力の源泉なのは間違いない。

似た言葉に「業務効率化」があり、こちらは同じ業務や作業をより少ない労働量(時間、人数)でできることを言う。ツールを使う個人にとっては、タスク量も労働時間も実感できる指標なので理解しやすいはずだ。経営者にとっては、少人数で業務完了となれば、配置転換や人員削減なども選択に入れられる。

面白いのは、ツールの効果がすぐに粗利益や労働時間に表れるわけではないことだ。例えば、「考えがまとまる」「アイデアを出す」タスクは、必ずしも労働時間に比例しない。創造性を引き出すツールから生まれたアイデアが、新規事業などで将来の売上や利益に貢献すれば、未来の生産性として表れる。ツールは使いこなして成果を出すことに意義がある。作業の効率性だけでなく、現在や未来の利益へのつながりを考える。それが生産性向上のためのツール活用である。

上のデータは、公益財団法人日本生産性本部が2019年12月18日に公表。同本部がOECDデータベースなどをもとに分析、検証すると、2018年の日本の時間あたりの労働生産性は46.8ドル(4,744円)で、調査対象のOECD加盟36カ国中21位という結果に (グラフの単位:購買力平価換算USドル)
出典:「労働生産性の国際比較 2019」
https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/R2attached3.pdf
Text:萩原雅之
トランスコスモス・アナリティクス取締役副社長、マクロミル総合研究所所長。1999年よりネットレイティングス(現ニールセン)代表取締役を約10年務める。著書に『次世代マーケティングリサーチ』(SBクリエイティブ刊)。http://www.trans-cosmos.co.jp/
萩原雅之
※Web Designing 2020年12月号(2020年10月17日発売)掲載記事を転載

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