動画制作の興味喚起術。冒頭2秒がカギになる! 事例詳細|つなweB

溢れる情報の中で埋もれてしまいがちなWeb動画広告。近年急増したSNS動画広告の潮流を知ることが、埋もれない動画づくりの近道です。動画広告の継続的な改善を実現する株式会社Kaizen Platformの藤原玄さんに話を聞きました。

 

教えてくれたのは…藤原 玄
株式会社Kaizen Platform https://kaizenplatform.com/

 

なぜ“早く安く”が求められる?背景にあるのは潮流の変化

ここ1~2年、SNS動画戦略は大きく変化しています。特に「短納期、低コスト化が飛躍的に進んだこと」だというのは、(株)Kaizen Platformの藤原玄さんです。

この変化の理由のひとつには、2021年にはモバイルデータトラフィックの80%が動画で占められると言われ、動画広告市場が急速に拡大すること、加えて動画広告を配信する際に押さえるべきポイントが変化していることも影響しています。

従来、広告を配信するときには、配信するメディアのジャンルを決め、ターゲティングし、どんなクリエイティブにするのかを決めていました。しかしここ1~2年は、配信先として4大SNSが寡占状態です。これらはアルゴリズムによる最適化の精度があがり、細かなターゲティングも必要なくなり、残された投資領域はクリエイティブのみです。

「まさにクリエイティブが重要な時代の到来です。しかし僕らの統計では、動画クリエイティブの精度によって、最大11倍の費用対効果の差を生むと出ています。かつ、1~2週間でクリック率は30~35%悪化するほど、効果の摩耗が激しく、クリエイティブの鮮度が重要です。そのため、一球入魂で高コストを投入するのはもったいない。今はもっと、“短納期低コスト”で施策を重ねていくことが基本です」

動画元年と呼ばれていた4~5年前は、マスコミュニケーションの延長線上的な思考で作品的につくられていたものが、今ではユーザーに最適なものを検証する動きにあり、動画をひとつのコミュニケーションとして最適化させるようシフトしてきていると言えます。

 

年間130%市場が成長!拡大の一途の動画広告
動画市場の成長や動画の投稿や視聴が活性化し、2021年にはモバイルデータトラフィックの80%を動画が占めると言われる背景には、端末と通信の発展が強く影響しています。(出典:Cisco Visual Networking Index: Global Mobile Data Traffic Forecast Update, 2015–2020” by Cisco, Feb 3, 2016.)今はまだ、Facebookでは動画の自動再生をオフにしている層が少なくないですが、今後5Gがもっと浸透すれば、パケットを気にする必要のない環境となり動画が増加。特に動画広告はより増えていくでしょう
これからの動画戦略
4大SNSの動画広告を配信するプレイスメントが寡占状態にあることも影響し、クリエイティブの良し悪しによる効果の差が生まれやすくなっています。そのため、ほんのわずかな期間でクリック単価・クリック率が悪化する傾向が顕著になりました。この状況を考慮すると、今までのような動画戦略では費用対効果が上がりにくくなっています。結果、短納期・低コストの動画戦略が求められていると言えます

 

ALLクリエイター時代へ制作サイドにも潮流の変化

制作サイドに変化が現れたことも、早く安い動画作成に影響しそうです。

「最近ではツールの民衆化が進み、動画編集ソフトが素人でも使いやすいように改善されています。そのため、動画制作の敷居が下がり、クリエイターの参入のハードルが低くなりました。また、素材を入稿すると勝手にAIが動画を作成するサービスも登場しました。企業が動画制作を検討する際に、『自社でつくる/制作会社に依頼する/クリエイタープラットフォームに依頼する/AIでつくる』という4つの選択肢を手に入れたことになります」

どの選択肢を選ぶかの第一分岐は、素材の有無。撮影をする場合、時間やコストはかかっても制作会社に任せるのが安心です。ある程度自分たちで素材が集められるなら、最終的な判断の分岐点は動画制作のノウハウがあるか否かになります。

「動画の勝ちパターンを知っている場合は、AIでつくるのが最も低コストです。しかし、動画制作の知識がなければ、クリエイターに相談するのが効率的です」

 

Web動画はユーザーの生活の一部に
動画は限られた場所・領域は配信されるものから、どこでも接触できる気軽なものに変化しました。情報がすごく溢れている中で、ユーザーはどのような視聴態度で動画と対峙しているかを知ることが、SNS動画制作をするうえではとても大切です

 

効果をあげるためのSNS動画のつくり方

昨年は、月に1,000~1,500本の動画を制作したという同社。効率よく効果の高い動画をつくり続けるために、SNS動画づくりの“4つの軸”を定めました。

1つ目の軸は「構成」。強制視聴を前提としたテレビCMは、動画のメインメッセージは後半でも見てもらえます。一方SNSは、視聴の判断はユーザー任せ。例えばFacebookのフィードは1.7秒から1.9秒でスクロールされる中、最初の2秒でいかに自分ごと化してもらうかがとても重要です。

「Webに最適な動画は、メッセージが短尺で伝わる構成になっているものです。Web動画では訴求したいことを冒頭に持ってくる流れが、1年ほど前からベストプラクティスだとグローバルに言われています。動画の最後には、ブランディングをしたいのか、資料請求・問い合わせをしてほしいのかをきちんと伝えましょう」

次の軸は従来通り、ユーザーの目をひく「コピー」に注力すること。

そして、3つ目の軸は「表現」。SNSは視覚表現で飽きさせないことが不可欠。アンケート型にするなど、広告メッセージをわかりやすく見せる工夫が求められています。

最後の軸は、YouTube の広告増により加わった「音」。約95%の人が音声を聴きながら視聴しているYouTubeでは、音の有無が効果に影響します。

この4つの軸の要素を押さえたクリエイティブ制作をしますが、1度で効果をあげるのは至難の業。

「6カ月程度の時間をかけて、4つの軸を変化させながら検証を進めたクライアントは、広告効果が目に見えて改善します」

 

Web広告動画制作のベストプラクティス

 

動画の鮮度を保ち効果を上げるには

ユーザーの生活の一部となりつつあるSNS動画。身近であるがゆえに、クオリティが低いクリエイティブはユーザーに見向きもされません。また、目に触れる機会も多いため、飽きられる傾向もあります。多くのコストをかけて動画作品をつくり、使いまわすのは昔の話です。短納期低コストで検証を重ね、ユーザーの興味を引きつける構成を見つけていきましょう。

 

Text:八波志保(Playce) Illustration:大野文彰