荷主とトラック運送業者のマッチングプラットフォーム「CONVOY」 事例詳細|つなweB

ECの成長とともに顕在化した“移動の問題”

アメリカではECの売り上げ増加により、長距離運送のニーズが急激に高まっています。それも、複数の配達元から複数の配達先に届ける必要があり、以前までは荷物が届くまで1週間程度だったのが、最近では翌日や当日も珍しくなくなってきています。全米でのECシェアの50%近くを占めるAmazonも、Amazon Primeの配達日数を一部の地域で、2日から1日に短縮する施策を始めています。 

国土の広いアメリカでは運送トラックの移動距離も非常に長く、時間通りに荷物を運ぶためには長時間運転をしなければなりません。なのでドライバーたちにとっても大きな負担になっています。加えて、電子運行記録装置(Electronic Logging Device:ELD)導入の義務化に伴い、1日に働ける時間が制限され、ドライバー不足に拍車がかかっています。

にもかかわらず、実は約35%もの時間、トラックは何も載せずに走っているのが現状で、非常に非効率なスケジュール管理になっているという統計もあります。これは、年間で約1兆Kmもの距離を空っぽで走っているという、非常に効率の悪さが目立つ事態になっています。 

そのような社会的課題を解決することをゴールにしているのが、荷主とトラック運送業者のマッチングプラットフォームを提供する「CONVOY」です。CONVOYは、かつてAmazonのロジスティクス部門で働いていたダン・ルイス氏とグラント・グッデール氏によって2015年に創業されました。

Convoy
「トラック版Uber」として、荷物を運んでほしい荷主と運送業者を効率よくマッチングするサービス。EC需要の急速な高まりから発生した運送の手間や無駄、人材不足を一気に解消するとして注目されているスタートアップです
創業者は元Amazonのダン・ルイス氏(写真左)とグラント・グッデール氏(写真右)

 

トラック版Uberで効率的マッチング

彼らが目指すのは、簡単に言えば「Uberのトラック版」。効率的なマッチングを行うことで、荷主にとっては、リーズナブルな価格で通常より早く荷物を運ぶことができるため、物流コストの大きな削減になります。一方、トラック運送業者やドライバーにとっては、帰り便や空きトラックのスペースを活用できる為、無駄なく積載率を向上させることが可能になり、荷主とトラック業者のWin-Winを目指しています。

トラックのドライバーがCONVOYのスマホアプリを開くと、現在求められている運送リストが表示されます。そこには、荷物を運ぶ出発地と目的地、ピックアップと配送時間、移動距離、そして得られる報酬が記載されています。その中から、自分が運送可能なものを選び、仕事を請負います。例えば、シアトルからロサンゼルスまでの仕事を請け負っている運送業者に、帰り道でできる仕事を紹介するわけです。

それぞれのトラックの現在地と目的に合わせて、もともと移動する予定だったエリア内のプロジェクトが表示されるため、空のトラックの走行距離を減らすことができもっとも効率的な運送を実現しています。/p>

さらに、運送業者はすべての仕事の価格を確認でき、情報に基づく、納得のいく決定を下すことができます。反対に、貨物を送る側の業者は、即時発行される見積もりによって運送業者を比較することができます。

これらのマッチングはAIを使い自動化されており、より多くの業者が利用することで、貨物ネットワーク全体からより多くのデータを取得し、需要の予測に役立てているそうです。

 

ビル・ゲイツやジェフ・ベゾスも投資

このCONVOYのサービスは、すでにP&Gやユニリーバといった企業でも採用されており、運送業務におけるコスト削減と効率化につながっています。 また、2019年の9月には1億8,500万ドル(約180億円)の追加調達が行われたことを発表し、CONVOYの合計調達額は2億6,500万ドル(約290億円)。評価額は約1,000億円にのぼり、ユニコーンの仲間入りとなりました。投資家にはY Combinatorをはじめ、SalesforceのCEOであるマーク・ベニオフ氏、ビル・ゲイツのカスケードインベストメント、AmazonのCEOジェフ・ベゾス氏のベンチャーキャピタル(VC)であるベゾス・エクスペディションズ・ファンドらが名を連ねています。

 

「空運び」を抑制することで環境問題にも貢献

CONVOYは効率化に加え、環境問題への取り組みも進めています。最新のテクノロジーを活用することで、現状は35%である荷台が空での状況を19%に下げる目標も掲げており、実現すれば、大量の排気ガスの削減につながり、年間で690万台の自動車が排出のと同等のCO2量に匹敵すると同社は説明しています。また、今後は自動運転のトラックも一般乗用車に先駆けて実用化される見込みとなっており、このようなサービスのニーズはどんどん高まる見込みです。

ユーザー登録した後にスマホアプリもしくはPCでConvoyにアクセスすると、案件(荷物)ごとにその荷主名や施設名、住所などが表示されるので、今の仕事の状況にあった案件を選びます。AWSのAIを使っており、状況に合わせたより効率的な情報を表示してくれます
トラックが必要な企業(荷主)は、すぐに呼べる身元の確実な配送業者を簡単に探すことができ、頼んだ荷物の現在位置をいつでも確認することできます。配送業者は、無理なく複数の案件を請け負うことができ、トラックのスペースを無駄にせず詰めることができるため、売り上げが上がります
今までメールや電話がメインだった配送受託が、24時間年中無休でアプリからできるようになるだけでも飛躍的な効率化が実現します。発注/受託時に配送代金も明記されるので、荷主、配送業者双方が安心して利用できます
Text:ブランドン・片山・ヒル
米国サンフランシスコに本社のある日・米市場向けブランディング/マーケティング会社Btrax社CEO。主要クライアントは、カルビー、TOTO、JETRO、伊藤忠商事、Expedia、TripAdvisor等。2010年よりほぼ毎週日本から米国進出を希望する企業からの相談を受け、地元投資関係者やメディアとのやりとりも頻繁。 http://btrax.com/jp/
ブランドン・片山・ヒル
※Web Designing 2020年2月号(2019年12月18日発売)掲載記事を転載

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