CXの強化とは?消費者に選ばれるWebサイトづくりを目指して 事例詳細|つなweB
"

なぜ今、WebでもCXが必要なのか?

WebサイトにおけるCXを考える際に忘れてはいけないことは、消費者にとってWebサイトがどんな存在へと変化しているかということです。ひと昔前は、「とにかく検索して1位になれば売れる」という時代。差別化もイノベーションも必要ありませんでした。インターネットを使う消費者も今ほど多くなく、またそれ以上に事業者が少なかったからです。それが今や、消費者は何をするにしてもまずはWebで調べます。言ってみればWebサイトが消費者との最大の接点。「Web中心消費行動」ともいえる状況です。時代、環境の変化とともに競争が激化したなかで、消費者に「選ばれる」Webサイトであるためには、カスタマーズアイを持った戦略やWeb設計が重要だとわかります。では、選ばれるためには何をするべきか。答えはまず、「お客さまが何を求めているのか?」を知ることです。それを整理する有効なツールが「AB3C分析」なのです。

 

見誤っていない?「お客さまが何を求めているか」

CXを強化しようというとき、私たちはまず「誰に・何を」を戦略的に立案するツールである「AB3C分析」から着手します。ABとは、アドバンテージとベネフィット。つまり、差別的優位点と本質的な価値です。AB3C分析で整理して、クリエイティブに落とし込んでいくうえで重要になるのがこのベネフィット=「お客さまが求めていること」です。

例えば、「ビールが欲しい」と言っている人は、本質的にのどが渇いている人もいれば、単純にお酒が飲みたいという人もいる。のどが渇いている人は、ビールと一緒にジュースや水と比較して検討するだろうし、お酒を飲みたい人はウイスキーやワインと比較するでしょう。このように、シーンやその人が求めているものが違っていたら、比較する対象・競合も変わります。つい競合を同業他社に絞って比較しがちですが、それでは意味がない場合もあるということです。同じベネフィットを提供する他者と比較して、お客さまにとって好ましい違いは何か? つまり、差別的優位点とあわせて考えることが、クリエイティブにつなげる肝だといえます。

また、一般的には比較をするとき、「自分たちの方が美味しい」などの主観はNGとされています。しかしデザイン思考では、主観やあいまいなものも載せないと、なかなか差がつきません。そういう意味でも、私たちは抽象的なスペックも議論しながら、AB3C分析を行います。こうして戦略時点で出てきた抽象的な差別化要素は、そのままクリエイティブにつなげやすいこともメリットです。

 

お客さまは誰? どうやって顔を見に行く?

AB3C分析をより明確にするためには、ターゲットの絞り込みが必要です。どのように絞り込んでいくのか? レビューの傾向から掘り起こしたり、検索キーワードからグループ化して見い出したりさまざまな方法がありますが、私はまずクライアントの社長やお客さまと接している社員へのヒアリングから始めます。

長年お客さまに接している人たちは、例えば「単価が高いお客さまはこういう人だ」というユーザーモデルが、経験を通して頭の中にできあがっています。まずはそれを時間をかけ丁寧に聞き取りをします。それでも情報が足りない場合に、座談会やアンケート調査を実施します。どのような人の声を取るかのも重要ですが、そのセグメンテーションは「何を知りたいか」によって変わってきます。たとえば購入意欲が高い人を集めることもあれば、売れ筋商品だけを買わない人を集めて、買わない理由を聞くことも。自分たちのなかで知りたいことを仮説立てし、それを知るためにはどうしたらいいのか? とクライアントと一緒に取り組みます。ただし、座談会もアンケート調査も時間・コストがかかるものです。まずはクライアントインタビューを行い、それでも足りないとき、もしくは腑に落ちない情報が返ってきたときの裏付けのためなど、その時々に応じて必要最小限の実施で十分です。

これらを行いAB3C分析が成り立ったとき、「選ばれる理由」が生まれます。以上の考え方を具体的な事例でどのように活用していったのか、次ページ以降で3つご紹介します。

教えてくれたのは…権成俊
一般社団法人 ウェブコンサルタント協会代表理事/(株)ゴンウェブコンサルティング代表
日本のWebコンサルタント先駆者として、集客など「対症療法としてのWeb活用」ではなく、自社の提供する価値から見直す「根本治療としてのWeb活用」を提案。本質的なWeb活用の視点を広めるために、教育に注力している。
"
八波志保、高橋陽子(Playce)
※Web Designing 2019年12月号(2019年10月18日発売)掲載記事を転載

関連記事