Web動画の顧客体験向上。CXを高めるための動画制作とは? 事例詳細|つなweB

多くの商品やサービスの中から“選ばれる”ためには「Web動画」の活用は欠かせません。その顧客体験(CX)を高める動画とは一体どのようなものでしょうか。CXマネジメントの重要性を標榜する映像制作会社Goat Filmsのお2人に話を聞きました。

 

教えてくれたのは…松本龍輔
株式会社Goat Films 代表取締役
ユウキ・セガワ
株式会社Goat Films 映像クリエイター
Goat Films
シネマルックな動画をつくるセンスと顧客への徹底的なヒヤリングにより、カスタマーに最適化された動画マネジメントを実施する映像制作会社
https://www.goat-films.com/

 

動画を持たないことが企業の「リスク」に

Webビジネスにおける顧客体験の向上を考えるうえで、スマートフォンで視聴する動画の存在感は年々高まっています。特にスマホユーザーの約75%以上が日常的に利用しているのが、YouTubeに代表される動画共有サービスです。

このYouTube動画に取り組まないことは、今後企業にとって大きな「リスク」になり得ると語るのは、映像製作会社Goat Films(ゴートフィルム)の代表取締役 松本龍輔さん。

「Google検索のアルゴリズムは、AIの進化に伴ってコンテンツの『質』を重視する傾向がさらに強まっていくことが予想されます。動画、その中でもYouTube動画はその質を判断する際の大きな材料となっていくでしょう。これに取り組まないことはSEO対策で不利なことは明らかです」

また、5G時代の到来でモバイル動画視聴はますます身近なものとなり、動画は顧客の意思決定で大きなウエイトを占めるようになるといいます。

「顧客の視点で考えても、魅力的な商品やサービスを紹介する動画のあるお店とないお店、どちらを選びたいですかと聞かれたら答えは簡単です。顧客の潜在的なニーズに応えるのに、現在最も効果的なのがYouTube動画であり、それを知っているのに取り組まないのはWebビジネスに限らず大きなリスクになります」(松本さん)

 

顧客の動画視聴デバイスはスマホへシフト

スマートフォン利用率
YouTube等の動画共有サービス

総務省「平成28年度 情報通信白書」によると、スマートフォンの利用率は全体加重平均で60.2%を占めています。また、YouTubeなどの動画共有サービスの利用率は若い世代ほど高く、全体平均でも74.5%が継続利用の意志を示しています。これはNETFLIXやAmazonプライムビデオなど定額課金の動画配信サービスの12.6%を大きく上回っています

 

動画制作の目的をクリアにスピーディに動く

企業や商品・サービスのプロモーションに動画を用いる最大のメリットは、テキストでの説明よりも短時間に多くの視覚的情報を瞬時に伝えられるところです。わずか数秒のシーンが顧客の心に残り、行動を促すこともできます。一方で美しい映像を撮るだけでは不十分と松本さん。

「完成度の高い動画を1本撮れば終わりではありません。顧客が求めている情報と一致する動画を、YouTubeチャンネルに継続的にアップロードしたり、Webサイトに設置することが重要です。そのためには、ターゲット顧客の選定や動画のコンセプト策定、動画の撮影や編集はもちろん、アップロードからチャンネル運営、アナリティクスまで試作全体の情報設計が欠かせません」

このYouTube向けの動画制作には、これまでWeb制作会社が得意としてきたサイト運営ノウハウと、映像制作会社が得意としてきた感性に訴える動画制作ノウハウの両方が求められます。さらにチャンネル運営には、動画の更新頻度など「数」を提供していくことも重要といいます。

「YouTubeでは修正を重ねて映像をつくり込むよりも、更新頻度のほうが大切です。極端な話、映像の細かな“アラ”を隠そうとしないことで、視聴者はそれすらも味として受け入れてくれることすらあるのです。それよりも気にすべきことは、顧客が求めているものをスピーディに発信し続けていける体制づくりです」(松本さん)

 

YouTube動画はインバウンド需要に効果的

香川県観光協会
https://youtu.be/Df84tq8TSv0

地域や言語といった制約を越えて、視覚にダイレクトに訴える動画は視聴者の感情に大きく作用します。特に訪日外国人の誘致などインバウンドという目的が明確であれば、YouTubeを利用しない手はありません。高品位なプロモーション映像も従来よりも低予算で作成できる環境が整いつつあります
公式YouTubeチャンネルを作成しておくことで、これまでに撮影した動画を蓄積して資産として活かすことができます。また、チャンネル登録者数を増やすことで、視聴者へ新規の情報を配信したり目的とするWebサイトへの誘導を促すこともできます

 

顧客が求める以上のイメージを形にする

では、YouTube動画を好む視聴者は何を求めているのでしょうか。企業・観光地の認知度やブランド力向上を目的としたインバウンドやプロモーション映像制作に関わってきたGoat Filmsの映像クリエイター、ユウキ・セガワさんは、顧客が共感できる「体験」にその鍵があると指摘します。

「企業などが発信したい『情報』を説明的に見せるのではなく、視聴者が期待する以上のワクワクする『体験』をいかに映像で表現できるかが問われます」(セガワさん)

現在YouTubeでレシピ動画やメイク動画といったレッスン系コンテンツに注目が集まっているのも、この「驚き」の体験を生み出しやすいからと分析しています。

「さらに、親しみやすさも重要です。例えばキャスティングについても、動画のコンセプトが明確であれば『有名人』よりも視聴者と同じ視点で有用なコンテンツを提供できるYouTuberを起用するほうが効果的です。また、SNSで一定のファンを獲得している人は、動画を通じて顧客の行動に影響を与える可能性が高いと感じます」

そして、動画制作には多額の費用が掛かるという昔ながらの根強いイメージを払拭したいと語る松本さん。

「撮影に特化した映像制作会社に依頼するとCMの価格設定が基準となることが多く、費用感が見合わないことがありました。しかし、時代は変わっています。動画の活用を検討している担当者はWeb動画の分野に強い制作会社にまず相談してみてはいかがでしょうか。また、Web制作会社にとっても動画に力を入れることは提案価値の向上につながります。来るべき将来を見据え、1日も早く動画に取り組むことを強くおすすめします」

 

顧客の行動を促すレッスン動画

まりえの『らくしぴ』
https://youtu.be/ft1NRkOZkxw

料理や化粧など、メイキングやレッスン動画はYouTubeでも特に人気のある分野です。生活で手軽に役立つ情報が欲しいという視聴者の根強いニーズにマッチしているのが大きな理由です。動画であれば細かなニュアンスもテキストより伝わりやすく、「見ながらすぐ行動を促せる」という利点があります
SNSでの有名人を動画に積極的に起用するという戦略は現在も有効です。Twitterで30万人以上のフォロワーを持つ時短レシピ作者「つくりおき食堂まりえさん(@mariegohan)」の動画は公開1週間で32万回再生を超えました

 

感性に訴えるシネマルックな映像

浅草時代屋
https://youtu.be/sYPhIBH0a00

明るい部分から暗い部分まで同時に認識できる人間の視覚は「映画」フィルムとよく似ています。商品やサービスの魅力を伝えたいのであれば、説明的な動画よりも、このように感覚に訴えかける表現のほうが記憶に定着しやすく想起されやすい傾向があります
小型アクションカムなどの普及により、低予算でもこれまでにない動画が撮影できます。没入感のある一人称視点の動画は、視聴者の視点に近く、「体験」を重視するネット時代のコンテンツ作成に適しています

 

共感を生むキャスティング

Setouchi Triennale2019
https://youtu.be/iWUZG-vpTws

イベントレポート的な動画では芸能人やナレーターなどを起用するのが一般的です。しかし、より顧客目線で考えると、自らもユーザーであるような人のほうが親しみやすさを生みます。「瀬戸内国際芸術祭2019」の紹介動画では、香川県在住の外国人YouTuberが起用されました
YouTube動画には複数言語の字幕が付けられます。インバウンドであれば、英語はもちろんターゲットとなる顧客の主要言語(このケースでは台湾人観光客向けのため中国語繁体字)への対応が求められます

 

動画で顧客体験を高めるには

Webにおける動画マーケティングでは、初期段階で「誰に向けて何のために動画をつくるのか」という目的を明確に位置付ける必要があります。そして、これを効果的に実行するにはWeb制作と動画制作の両方のノウハウが欠かせません。顧客の心理にダイレクトに働きかける動画の利点を最大限活用し、顧客体験を高めましょう。

 

Text:栗原 亮 Illustration:大野文彰