Web系企業から独立。首都圏と栃木をつなぐ、地域と関わる働き方 事例詳細|つなweB

当たり前に対する違和感から生まれた「栃木ゆかりのみ」

特定の地域と関わりをもつ方法は、多く存在します。例えば、「ゆくゆくは地元に帰りたい」「関わりを保ちたい」と考えている東京在住の地方出身者の場合、東京で集まっている出身者コミュニティに参加してみるのも一つの手です。

2015年より開催されている「栃木ゆかりのみ」も、東京にいる栃木県出身者が気軽に参加し、地元に関する話をするなど、参加者同士の交流を楽しめる場になっています。

「『ハードルの低い形で栃木と関わるきっかけを』と思い、これまで19回開催してきて、延べ500人以上の方が参加してくれました。回を重ねるごとに、活気のある人が増えてきていますね」と話してくれたのは、栃木ゆかりのみの発起人・永井彩華さん。

永井さん自身も、栃木県小山市出身。現在は株式会社kaettaraを創業し、代表を勤めていますが、ゆかりのみの立ち上げ当時は、東京の企業で勤務する会社員でした。

「地元を離れて働いてすぐに、『地方出身者がやりたい仕事のために上京する』という当たり前に対して、違和感を抱きました。私自身、その一人だったのですが、その違和感を解消する使命感に駆られ、最初に情報収集も兼ねて始めてみたのが『栃木ゆかりのみ』です」

 

Web系企業から独立東京と地元を事業でつなぐ

永井さんは、大学在学中から会社員時代まで、オウンドメディアの編集をはじめ、Web制作や広告に関わる仕事を経験してきました。

「学生時代から、Webに関わる仕事をしたいと思っていました。実際、会社員時代には、やりたいことを実現できていたと振り返ります。でも、それだけでは、満たされなかった。その時、家族のそばにいることも大切だと気づきました」

ただ、会社員時代の業務経験は、ゆかりのみの運営にも活きたといいます。

「集客は、基本Facebookページや私の個人SNSでしたが、ある時、渋谷駅ハチ公口の前で『栃木出身者をさがしてます』という看板を持ちながらビラを配りました。その時、看板のデザインや近寄りやすさなど、さまざまな要素を考慮して仮説検証を繰り返した結果、受け取ってもらえる人を増やすことができました。また、その様子をSNSで発信すると、拡散されて、より認知を広げられました。こうしたオンライン・オフライン両面での集客では、会社での業務経験が大いに活きたと思っています」

ゆかりのみで一緒に仕事ができそうな人たちと知り合えたことも後押しになり、2017年には起業。今は、会社と自宅のある東京に軸足を置きつつも、実家のある栃木県と月に約3往復する二拠点生活を送っているとのこと。

「東京の人を地方に巻き込むような活動がしやすいですし、学びの機会や会える人の幅が広がります。また、仕事における関係者との単純接触回数を増やせるほか、東京と栃木をつなぐ立場として独自のポジションを示せるのも二拠点のメリットです」

代表を務める(株)kaettaraでは、栃木県への移住促進など、首都圏と栃木をつなぐことを事業にしているそう。

「私自身は、理想的な形で地元と関われています。今度は事業を通じ、私のようなケースを増やしていきたい。会社員時代もやっていたメディアによる情報発信を軸にして、『帰りたくて仕方のない地元』をつくりたいと考えています」

「栃木ゆかりのみ」と永井さんのキャリア(1)
「栃木ゆかりのみ」は、毎回趣向を凝らして企画され、栃木県にゆかりを持つ人が参加できる。上の写真は、2018年6月に行われた回の様子。同県出身のオーナーが営み、栃木の日本酒が充実している都内の和酒バーで開催された
「栃木ゆかりのみ」と永井さんのキャリア(2)
会社員として働きながら企画した「栃木ゆかりのみ」の活動がベースになり、現在は会社を創業。今でも、ゆかりのみは継続して開催しており、栃木県内の自治体と共同で企画することもあるという
編集部
※Web Designing 2019年10月号(2019年8月17日発売)掲載記事を転載

関連記事