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地域マーケティングの極意 地方創生を成功に導く!

地方は、まさにマーケティング黎明期。ビジネスに「マーケティング」「マネジメント」といった考えが採用され始めた頃と同じことが今、地方自治体でも起こっています。地方創生のために、デジタルやマーケティングの知識をどう活用すればよいか。そのポイントについて、ネイティブ株式会社の倉重宜弘さんに話を伺いました。

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ネイティブ株式会社 代表取締役 倉重 宜弘
シンクタンクを経て、2000年よりネットイヤーグループに参画。大手企業のデジタルマーケティングや、ブランディング戦略の立案、Webサイトやデジタルコンテンツの企画・プロデュースなどに数多く携わる。2012年4月に、地域振興を目的としたデジタルメディア「北海道Likers」を皮切りに、「沖縄CLIP」、「瀬戸内Finder」を手掛ける。2016年3月、地域事業創出を主眼とする「ネイティブ株式会社」を起業し独立。
https://www.nativ.co.jp/

地域はマーケティング黎明期、真っ只中!

政府が掲げる「地方創生」の当初の目的は、「都市部と地方の人口の偏りをなくすこと」でした。現状として未だに地方からの人口流出が止まらずに、首都圏への流入が進んでいます。このままでは都市圏と地方との人口格差はますます拡大し、存続が難しくなる地域も出てきてしまう。それをなんとか食い止めようというのが発端でした。

日本はこれまで製造業や重工業中心に発展してきた歴史があり、観光業は決して中心的な産業ではありませんでした。しかし近年では、円安や格安航空会社の影響などで外国人観光客が急増。日本の料理や文化は大きな注目を浴びています。こうした流れを受けて政府が主導となり、「観光立国」を掲げて日本全国で様々な取り組みがなされています。

そこで注目されているのが「DMO」です。DMOは、「Destination Manage ment / Marketing Organization」の略。つまり、観光にマーケティングの観点を導入し「誰にどう楽しんでもらうか?」という明確な戦略を立てて、その地域の“稼ぐ”力を引き出す組織のことです。

誰しも「一度は行ってみたい」と思った経験があるような海外の観光地の多くには、たいていDMOがバックで機能しています。組織形態は、公的機関の場合もあれば、官民連携などもあり、国によってさまざま。中にはハワイ州観光局(HTA)のように、数十億円規模の予算が動く組織もあります。そういった海外の事例を参考に、日本も2014年あたりから各地で「日本版DMO」の設立に力を入れ始めました。

日本版DMOには、役割や目的ごとに大きく3種類に分かれています。

まず1つが「広域連携DMO」。複数の県をまたがって組織されるDMOです。自治体の境界を超えた観光地域ブランドを構築する使命を負っています。またインバウンドの誘致を担うことが多いこの広域連携DMOは日本に約10組織あります。よく知られているものとして、瀬戸内周辺の7つの県をカバーした「せとうちDMO」があります。

2つ目が、「地域連携DMO」です。同じ県内や、隣接した市や町どうしで観光資源を生み出し情報を発信しています。

最後の3つ目が、市や町が単体で行っている「地域DMO」。こちらも「地域連携DMO」と同様に、その地域の魅力を開発することが主な目的です。

2019年3月の時点で、123もの法人が日本版DMOとして登録されています。このことからも、現在全国の地域が「観光マーケティング」に取り組み始めていることがわかります。

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マーケティングの肝となるのはブランディング

「誰に来てもらいたいか」「何を買ってもらいたいか」「どうやって楽しんでもらうか」。何よりも大切なのは、こうした顧客価値を明確にすることです。

地域で陥りがちなのが、「あれもこれも」と、売りにしたいポイントを絞り切れていないケース。また、「食べ物もおいしくて、空気はいいし、景色もキレイです」と、どの地域に置き換えても言えるような要素では、差別化が困難です。あるいは、「うちは何もないから」と半ば諦めぎみで、自分たちの地域が持つ魅力に気づいていない地域も少なくありません。

地域を特徴づけるエリア・ブランディングを成功させるために必要なのは、やはりその地域で「世界一のポイント」を何とか見つけて、他の地域と明確に差別化することではないかと思います。

例えば、「せとうちDMO」では、地域のブランディングを重要視した取り組みがなされています。5年前の瀬戸内は、北海道や沖縄に比べると、観光地としてブランディングが未確立という認識でした。一方で、海の幸、山の幸、柑橘類など地産品にも非常に恵まれ、スポーツではサイクリング、クルーズ船も行き来しているなど、富裕層が好む魅力的なコンテンツにあふれた地域です。こうした魅力をさらに掘り起こし、欧米からの観光客を中心にマーケティングを注力して行うのが、せとうちDMOの戦略。近年になってその成果は顕著で、世界の著名なメディアで「Setouchi」として数多く紹介されるまでになっています。

瀬戸内では「アート」「クルーズ」「サイクリング」の3つがコンテンツとして際立っています。3つをすべて包含している地域は、世界中を見てもなかなかありません。数多くの島々が重なる「多島美」の景色とともに、こうした特徴をいかに際立たせるかが、マーケティング戦略の一つのポイントになっています。

「世界一のポイントを探す」といっても、本当に「物理的に」世界唯一かどうかより、人を引きつける魅力を放つ「ストーリー」のほうが重要です。また、あまりにも一部のマニアしか響かないような狭い市場では意味がありません。きちんと地域の経済を潤すことのできる規模の市場を狙って、どう戦略を立てるかを考える必要があります。と、言うのは簡単ですが、実際はここが一番難しいところでもあります。

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ブランディング・PRを行ううえでは、つい要素を詰め込もうなどとしてしまいがち。まずは自分たちの地域の「世界一」を見つけることが大切。それが他の地域との差別化につながっていく

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掲載号

Web Designing 2019年10月号

Web Designing 2019年10月号

2019年8月17日発売 本誌:1,530円(税込) / PDF版:1,200円(税込)

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高齢化や人口減少など、地方が抱える課題は山ほどあります。
一方で、インバウンドによる地域資源の再発見やITインフラの整備など、
ポジティブに捉えられる話題もあります。
もちろん地方の自治体・民間企業は今、大きな課題に対し真摯に取り組んでいますが、
WebをはじめとするITスキルのプロフェッショナルの力を必要としているのです!

WebやIT業界で活躍する制作会社をはじめとしたプロフェッショナルのみなさんは、
今そこにある地方の課題解決に多少なりとも貢献できるスキルを持っていると言えるでしょう。
また、ネットワーク技術の進化は働く場所の自由度を大きく広げました。
自分の理想とするライフスタイルに合わせて、住む場所をはじめ関わりを持つ地域の選択肢も増えています。
そこで、企業や制作会社の地方も視野に入れた働き方の可能性も追求していきます。


また、ネットワーク技術の進化は働く場所の自由度を大きく広げました。
自分の理想とするライフスタイルに合わせて、住む場所をはじめ関わりを持つ地域の選択肢も増えています。
そこで、企業や制作会社の地方も視野に入れた働き方の可能性も追求していきます。



●地方が抱える課題とは
・制作会社の力が活きる地方のニーズ

●地方におけるWebビジネスのヒント
・制作会社の強みを活かす 考え方と実践
・今行われている地方でのビジネスとは?

●自治体側の受け入れ態勢や協業、助成金

●地方との繋がり方
・「移住」は手段の一つ。「住まなくても繋がる」関係性

●企業で考えるべき「働き方」
・地方志向の社員を活かすための制度導入
・サテライトオフィス、在宅リモートなど事例

【本誌内注目の一文】
■本当の魅力を発見して伝えていくためには、外から来たヨソモノ視点が必要

■まずは参加して、違う環境に関わってみよう

■都市部の高齢化問題の先進事例はローカルにある

■地域外の人材が地域づくりを担い変化を生み出す

■WebやITを生業とする方であれば、自身のスキルを活かす形でも関係人口になれます

■特別な理由がなくても全社員が選べる働き方として、テレワークを活用している




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より高速に、よりクリエイティブに!
共同制作の質を大きく向上させる新定番ツール

Adobe XDで進化するWeb・アプリの開発プロセス

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