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特集一覧 Web Designing 2019年10月号

ローカルの現状とコミットの仕方 どんな形で関わり何に貢献できるのか

ローカルへの関心を行動に移すとき、どんなビジョンを持ち何から始めたらよいのでしょうか。そのヒントを探るべく、地域への移住と関係人口のマッチングサービス「SMOUT」などを運営するカヤックLiving代表の松原佳代さん、全国47都道府県の情報を発信するWebメディア「ジモコロ」でローカルで活躍する人などを取材し、自身も長野と東京の二拠点生活を送る徳谷柿次郎さんのお二人に、ローカルの現状やどのようにコミュニティに参加すべきかなどについてお話を伺いました。

 

なぜローカルに魅せられるのか

ローカルに興味を持つきっかけ

——お二人は、どういうきっかけでローカルに関わることになったのですか。

松原 私は、2017年に移住などを支援するカヤックLivingの仕事を始めたことがきっかけでした。親会社のカヤックに勤めていた頃、「SuMiKa」という、現在はカヤックLivingの事業になっている建築家と家をつくるためのサービスに関わっていました。SuMiKaで建築家と家を建てられる方々は、家の設計だけでなく、どういう街・地域で暮らしコミュニティに関わるかということに強く興味を持つようになってきていると感じていました。そのため、カヤックLivingで住宅や移住の事業をやることには、なるほどなと思いました。私自身も移住や地域での暮らしに興味がありましたし。

徳谷 僕は「ジモコロ」という47都道府県の情報を発信するWebメディアの編集長になったことが大きいですね。経費で全国の取材をしたいと思い、メディアのコンセプトをつくって一生懸命プレゼンして、2015年5月にスタートすることができました。もともと大阪の中心部で育ち、旅行などでもあまり田舎文化みたいなものには触れてこなかったんですよ。それがジモコロを始める3年前くらいに、友達とキャンプやフェスへ行って、自然に触れる機会ができてきまして。子どもの頃は自然や虫が好きだったなという原体験を思い出したんです。そんなある日、Facebookで僕が「大自然の中で薪割りをして、背筋を鍛えたい」と投稿したところ、長野県朝日村に住む女の子から「うちでは毎日薪割りをしていますよ」というコメントがついて。そのときは行動力を大事にしようと思っていたので、すぐに連絡を取って行ってみることにしました。そこで6時間くらい薪割りをしたのが、ものすごく強烈な体験で(01)。何で今までこんな世界を知らなかったのだろうって。今から5年くらい前の話です。

 

ローカルに関わるモチベーション

——仕事の見つけやすさや利便性などを考えると、都心部よりもローカルの方が不利になることもあると思いますが、ローカルに興味を持たれる方々は、どういうことがモチベーションとなっていることが多いですか。

松原 移住しなくちゃいけない理由ってあまりないんですよ。都市部にいる方がよいことはたくさんありますし。でも、惹きつけられる何かを見つけたとき、ローカルは本当に楽しいです。マストではなくウォントで動くのが移住なんですよ。

徳谷 僕に関していえば、今は多少しんどくても早めにローカルに関わっておくことで、将来東京に依存しないで生きられるリスクヘッジになるという点がモチベーションになっています。そういうことに気づけると、めちゃくちゃ楽しいと思いますね。それならなるべく若いうちの方がよいという。僕は32歳からでしたけど、20代ならただ行くだけで喜ばれますよ。30~40代だとスキルやお金があった方がいいですし、50才を過ぎてから移住しても意外と自分の役割って見つけられなかったりするので。

松原 20代の方は、ローカルに頼れる人や繋がりがあると安心だという感覚を本能的に持っていますね。30~40代くらいは、都心の便利な暮らしが安心という方も多い気がします。

——ローカルに繋がりを持つために、移住以外の選択肢もありますか。

松原 正直、移住できる人は限られていて、きちんと根付ける人なんてさらに限られています。だから、平日は東京で仕事をして、休日に地元や関係のある地に赴き街のコミュニティに入るような関わり方をする「関係人口」になるというのが、多くの方にとって現実的ではないかと思っています。

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01 徳谷さんが長野県朝日村で初めて薪割り体験をしたときの様子。真夏で暑く、喉が乾いたらもぎたてのトマトやキュウリで水分補給し、ローカルのよさを実感した強烈な体験になったという

 

ローカルでの課題と支援状況

ローカルでの暮らしと移住の傾向

——徳谷さんは、2017年5月から長野に移住し東京と行き来する二拠点生活をされているんですよね。

徳谷 薪割りの体験がきっかけになったのもありますし、新幹線が走っていたり車でも東京と行き来しやすかったというのが長野を選んだ理由でした。

——二拠点は大変ではないですか。

徳谷 大変ですね。そのときどこに滞在しているのかも含めてスケジュール調整をしなくちゃいけないですし、東京まで1時間20分くらいで行けてしまうので、「それなら東京まで来い」と呼ばれることもあります。しかも取材で全国各地へ行くので、二拠点というより多拠点状態なんですよ。

松原 二拠点生活では、時間と移動コストの問題は大きいですよね。

——長野ではどのような活動をされているのですか。

徳谷 「やってこ!シンカイ」という、元金物屋だった築120年くらいの古民家をサブスクリプション制で遊びにくる方に解放したり、ショップとして長野や東京で出会った作家たちがつくったものを販売したりしています(02)。もともとは大学生3人が改装して“住み開き”という、実際に暮らしながら1階の土間を解放していろいろな人が遊びに来られる場として始まり、僕は途中から参加することになりました。普段は近所のお年寄りも息子さんへのプレゼントなどを買いに来てくれて、イベント開催時などは全国からいろんな人が遊びに来てくれます。人と人が交錯するような、コミュニティ的な機能を持ったお店です。

——松原さんは「SMOUT」という移住希望者と地域のマッチングサービスをされていますが、移住を希望される方の傾向というのはありますか。

松原 SMOUTで人を呼び込む自治体は、人口3~5万人くらいの地域がメインになりますが、実際は都市部から急にものすごくローカルな地域への移住というのはあまり多くないですね。長野のような都市部からのアクセスのよい地域への移住、Uターン、Jターン移住が多いです(03)。地域から地域への移住も多いように思います。

徳谷 編集者やライター、カメラマン、デザイナーなどをしている移住者の方は多いですよね。

松原 仕事柄、撮影や取材を通して地域にコミットしやすいという点もありますね。記事として掲載されれば地元の方に喜んでもらえますし。

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02 徳谷さんがオーナーを務める長野県長野市のショップ「やってこ!シンカイ」。小売りの利益に依存しないお店「2.0」の実現に奮闘中。運営するセレクトショップやイベント開催時には、県内外から人が集まり老若男女に利用されている https://huuuu.jp/shinkai/

 

ローカルの課題と取り組み

——ローカルにはさまざまな課題があると言われていますが、主にどのようなものがありますか。

徳谷 たくさんありすぎて、課題バブルですよ。東京にどんどん人が出ていってしまって、人口減少から労働力が減り維持・継続が難しくなっている産業があったり。ただ、長野市の方も実際にそうして厳しくなってきている産業に関わっている方以外は、別に課題があることにも気づいていないと思います。街が大きい分、自分たちがちょっと動けば解決できるという課題自体が、目の前になかったりするんです。

松原 もうちょっと細かい話をすると、空き家の問題とか、農業の担い手の問題とか、そういうのが課題としては多くありますね。日常や隣に課題があるのが特徴です。神輿の担ぎ手がいないから祭りの維持が難しい、町内会が維持できない、いろいろな生活インフラすらもままならない未来が見えてくるといったように。

徳谷 目の前の課題を、町内会など自治の集合体でコツコツと解決していくことの連続性によってそれまで保ってきていたのが、若い子がいないといった理由で、根っこが弱くなってしまっているんでしょうね。

——祭りの担い手や町内会の維持みたいな話は、東京でも出ている課題ですよね。

松原 都市部の高齢化問題の先進事例はローカルにあると言われているんです。ローカルの方が先に進んでいるだけで、やがて都市部にもやってくるという。世界的に見ても日本は高齢化が進んでいるので、世界中の都市が日本のローカルに学ぶべきだという話もあったりするくらいです。人口1,000人以下の離島や農村といった過疎地域などだと、すでに必死になって手を打ち始めるところも少なくありません。

徳谷 だから離島とかの方がデジタルの感度が高くて、リテラシーが高いんですよね。

松原 都会の人はITリテラシーが低すぎるという説もあります(笑)。徳島県美波町なんてすごいですよ。町中に災害時でも落ちない高速LANを走らせて、見守りネットワークを築いているんです。街全体がリアス式海岸で南海トラフ地震が来たら大変だと言われているから、お年寄り全員がどこにいるかを把握できるようになっているんです。

——地域課題の解決は、自治体と企業が連携しての取り組みが多いように思いますが、都市部の企業が関わっていることが多いのでしょうか。

松原 多いと思います。ローカルのみなさんが得意なこと、都市部の企業が得意なことがあり、PRやクリエイティブは都市部の方が得意なので。

徳谷 そういうローカルでの課題解決は、なかなか個人や小さい規模の企業では難しいので、大企業に任せるしかないと思っています。昔は貴族や豪族が街に投資して整えたりしてきたような役割は、今は大企業が担うようになってきていて。しかも、社長が地元だからとか、そういう人間臭いところでどの土地を支援するのかを選んでいるので、日本全体を同じように課題解決していくのはなかなか難しいのではないかと思います。

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03 松原さんが代表を務めるカヤックLivingが提供する移住者と地域のマッチングサービス「SMOUT」で長野県大町市に移住した南谷有美さん。近くのりんご農家で収穫のアルバイトをしている

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掲載号

Web Designing 2019年10月号

Web Designing 2019年10月号

2019年8月17日発売 本誌:1,559円(税込) / PDF版:1,222円(税込)

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高齢化や人口減少など、地方が抱える課題は山ほどあります。
一方で、インバウンドによる地域資源の再発見やITインフラの整備など、
ポジティブに捉えられる話題もあります。
もちろん地方の自治体・民間企業は今、大きな課題に対し真摯に取り組んでいますが、
WebをはじめとするITスキルのプロフェッショナルの力を必要としているのです!

WebやIT業界で活躍する制作会社をはじめとしたプロフェッショナルのみなさんは、
今そこにある地方の課題解決に多少なりとも貢献できるスキルを持っていると言えるでしょう。
また、ネットワーク技術の進化は働く場所の自由度を大きく広げました。
自分の理想とするライフスタイルに合わせて、住む場所をはじめ関わりを持つ地域の選択肢も増えています。
そこで、企業や制作会社の地方も視野に入れた働き方の可能性も追求していきます。


また、ネットワーク技術の進化は働く場所の自由度を大きく広げました。
自分の理想とするライフスタイルに合わせて、住む場所をはじめ関わりを持つ地域の選択肢も増えています。
そこで、企業や制作会社の地方も視野に入れた働き方の可能性も追求していきます。



●地方が抱える課題とは
・制作会社の力が活きる地方のニーズ

●地方におけるWebビジネスのヒント
・制作会社の強みを活かす 考え方と実践
・今行われている地方でのビジネスとは?

●自治体側の受け入れ態勢や協業、助成金

●地方との繋がり方
・「移住」は手段の一つ。「住まなくても繋がる」関係性

●企業で考えるべき「働き方」
・地方志向の社員を活かすための制度導入
・サテライトオフィス、在宅リモートなど事例

【本誌内注目の一文】
■本当の魅力を発見して伝えていくためには、外から来たヨソモノ視点が必要

■まずは参加して、違う環境に関わってみよう

■都市部の高齢化問題の先進事例はローカルにある

■地域外の人材が地域づくりを担い変化を生み出す

■WebやITを生業とする方であれば、自身のスキルを活かす形でも関係人口になれます

■特別な理由がなくても全社員が選べる働き方として、テレワークを活用している




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