都市と地方の賃金格差はどのくらいあるのか 事例詳細|つなweB

地方におけるビジネスや働き方を考えるときに、避けて通れないのが賃金格差の問題である。すべての労働者と雇用者に対して適用される最低賃金は、もっとも高い東京都が985円で、900円以上は神奈川、大阪含めて3都府県のみ、800円台が23道府県、700円台が21県、もっとも低い鹿児島は761円である(2018年)。地域による生活コスト、つまり家賃や物価の違いを反映しているとはいえ、これほど大きな差があるのは驚きだ。

一般的な給料についても状況はかわらない。厚生労働省「賃金構造基本統計調査」は全国5万社以上の企業を対象に毎年実施される調査で、130以上の具体的な職種別、都道府県別のデータもある。Web制作に不可欠なシステムエンジニア、プログラマー、デザイナーの所定内給料(月額)をランキングして上位と下位を並べてみると、東京など大都市圏と地方では大きな違いがある。特にデザイナーについては下位県では10万円台のところもあり、東京との差は2倍にもなる。デザインという仕事が正当に評価されているのか心配にもなる。

企業規模の違いだけでなく、大企業でも地方採用者には低めの給料が適用されるケースが少なくない。地方の自治体からは、給料格差が労働機会の都市集中を招いているという批判は根強い。全国平均が高いのは、エンジニアやデザイナーの数は都市圏の方が圧倒的に多いからだ。

一方、クラウドソーシングで全国から仕事を請け負う場合には、こうした地方のハンディはない。最低賃金の引き上げ政策や全国一律化の議論も進められている。企業の負担が増え仕事の機会や雇用自体がなくなるリスクも指摘されるが、システムやデザインなどの専門的職業については、どこに住もうが、同一スキル同一賃金が本来のあり方だろう。

「所定内給与額」には、残業代、各種手当、賞与などは含まない 出典 : 厚生労働省「平成30年賃金構造基本統計調査」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2018/
Text:萩原雅之
トランスコスモス・アナリティクス取締役副社長、マクロミル総合研究所所長。1999年よりネットレイティングス(現ニールセン)代表取締役を約10年務める。著書に『次世代マーケティングリサーチ』(SBクリエイティブ刊)。http://www.trans-cosmos.co.jp/

 

萩原雅之
※Web Designing 2019年10月号(2019年8月17日発売)掲載記事を転載

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