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Bay Area Startup News Web Designing 2019年8月号

ユーザー目線でデジタル&アナログ体験の融合 上質な眠りを売る「Casper」

海外で起こっている、あるいは起こりつつある新しいビジネスの潮流、近い将来に日本にやってくるであろうビジネストレンドなどを紹介・考察します。米国サンフランシスコ在住の筆者が、サンフランシスコおよびシリコンバレーの「ベイエリア」を中心に、イケてるスタートアップを中心とした会社、サービスを毎月1つ取り上げながら、その背景や目的、今後日本で起こりうるトレンドについて追究します。

世界に広がるD2Cモデル

さまざまな商品をオンラインで購入することが一般的になってきました。最近では店舗を持たず、オンラインのみで販売するタイプのストアが増えてきています。

D2C (Direct to Consumer)と呼ばれるこのビジネスモデルは、アメリカを中心に世界に広がっています。その意味は、製造するブランドと消費者の間に小売店など一切の中間業者を挟まずに、自社のECサイトのみで直接売るモデルです。自社のサイト上で商品の紹介をし、その商品ができるまでのストーリーや機能性、素材、そして製造工程までを包み隠さず表示し透明性を高めることで、店舗で直接会わなくとも消費者との信頼関係を構築しています。中間業者を挟まないことでブランドは直接消費者に会社のビジョンやその製品誕生に至るストーリーといったブランドコンセプトを伝えることができ、その後の販売や発送、返品などの業務を総括的にカバーできることで、消費者との関係構築がしやすくなります。さらに、顧客データが直接入手できるというマーケティング的なメリットもあります。

そして、D2Cブランドにとってもっとも重要なのが、プロダクトだけではなくユーザーの体験に注目すること。オンラインでページを閲覧するところから購入プロセス、商品を受け取り使い続け、次の商品を購入するまでのすべての工程において一貫したユーザー体験を提供することで、ブランド体験を消費者に届けます。 

今回紹介するCasperは、マットレスのD2Cブランド。これまでの煩わしい体験を根本から覆すことで、ユーザーに新しい体験価値を提供し、現在急成長しているスタートアップです。

2014年に5名のファウンダーたちによってスタートしたCasperは、世界で4兆円規模とも言われるマットレス市場に参入。当時の投資家には「オンラインでマットレスを買う人はいない」とまで言われましたが、現在では世界8カ国に100万人以上の顧客を抱えるまでに成長。評価額も10億ドルを超えるユニコーン企業となっています。

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Casper
数年前より話題になってきた「スリープ・テクノロジー」ベンチャーとして目覚ましい成長をしているCasper。「マットレスの購入体験」を全てユーザー目線から考え直したビジネスで世界中で大ヒットしています

 

「マットレスの購入」をユーザーファーストで定義

彼らの成長の秘訣は、何よりもユーザー視点に立って、その体験を見直したところにあります。

まずは購入体験です。それまでは、だだっ広い店舗に品質も値段も非常に多様なマットレスが並び、値段も不透明でセールスマンからの売り込みが強いのがマットレス小売店の常識でした。消費者はどれを買ったらいいかがわからず、セールスマンから言われるままに選んでしまい、結局購入後に後悔するケースも多発していました。 

それに対してCasperでは、3種類の厚さのマットレスだけを販売することで、ユーザーは些細な差に迷うことがなくなりました。そして、購入後も100日の無料トライアルを設定することで、万が一自分の体にあわない場合は無料で返品できる仕組みになっています。 

商品の配送に関してもユニークな体験を提供しました。バネを使用しないマットレスを開発し、折り曲げることで箱に入れ、自転車でも運べるほどにコンバクトにしたことで、高額な配送費が必要なくなりました。受け取ったユーザーはマットレスを箱から出すだけ。セットアップ時間30~45分程度ですぐに使えるようにもなっています。

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マットレスの購入で起きがちだった「どれがいいのかわからない」や「発送にコストがかかる」といった課題を商品自体や取扱商品のバリエーションを考え直すことで解消することに成功しました

 

デジタル&アナログ体験の融合が世界を席巻する

Casperは「上質な睡眠」をモットーとし、マットレスだけではなくランプや枕などの安眠を生み出すための周辺グッズも販売しています。同社がニューヨークに設置した「The Dreamy」と呼ばれるコンセプトストアでは、Casperが提供するマットレス、シーツ、枕、ブランケット、スリープマスクが用意された空間の中で、25ドル払えば45分間の仮眠を取ることができるようになっています。 

商品よりも体験を提供することにフォーカスを当てているCasperの責任者、エレノア・ノーマン(Eleanor Morgan)氏はこのショールームに関して、下記のように語っています。 

「このコンセプトストアの目的は体験の提供です。もちろんお金を稼ぐことではありません。私たちはこの店舗をもはや従来のリテールだとは捉えていません。睡眠に対して価値を感じ、その価値をCasperと分かちあうことで共有したい人が集まるようなコミュニティの醸成を目指しているのです」

Casperが提供するスムーズな体験がアメリカを中心に世界で大ヒットし、アメリカ最大手のマットレス会社Mattress Firmは破産を申請するに至りました。デジタルとアナログ体験を融合することで、ユーザーに新しい価値を生み出し、従来のモデルを破壊していくトレンドは、今後さまざまな業界に広がっていくと予想されます。 

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Casperがニューヨークに構えるコンセプトストア「The Dreamy」。商品を陳列しアピールするのではなく、「上質な睡眠」を提供するというコンセプトを打ち出したストアになっています
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従来の「商品自体の品質」「価格」といった考えるべきポイント(4P)から、「体験」「コミュニティ」といったユーザー視点の行動、体験を考える「4E」へとビジネスの主流は移って行くと考えられます
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Text:ブランドン・片山・ヒル
米国サンフランシスコに本社のある日・米市場向けブランディング/マーケティング会社Btrax社CEO。主要クライアントは、カルビー、TOTO、JETRO、伊藤忠商事、Expedia、TripAdvisor等。2010年よりほぼ毎週日本から米国進出を希望する企業からの相談を受け、地元投資関係者やメディアとのやりとりも頻繁。 http://btrax.com/jp/

掲載号

Web Designing 2019年8月号

Web Designing 2019年8月号

2019年6月18日発売 本誌:1,559円(税込) / PDF版:1,222円(税込)

動画を作った! そのあとどうするの?

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「つくるだけ」では役に立たない!

Web動画を課題解決につなげる
必勝方程式

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数年前より、Webマーケティング界隈では動画を使った施策が主流となってきました。
主要SNSプラットフォームも軒並み動画への動きを活発化させ、
インスタグラムストーリーやFacebook LIVE、TikTokなどさまざまなサービスが登場しており、
「動画は当たり前」という状況はますます加速しています。

これまでは「動画をつくる」ということに関してお金と時間、人手がかかり大きな障壁となっていましたが、
今ではスマホ1つで撮影でき、動画制作が手軽にできるツールも揃ってきました。
これで動画を使ってWebビジネスができる!…ちょっと待った!大事なことを忘れていませんか?

その動画、どう使ったらビジネスの課題解決に役立ちますか?
「動画をつくる」だけでは儲かりません。
それを本来の自分たちのビジネスの目的や課題(集客、商品売り上げUPなど)に結びつけて初めて意味があります。

せっかくつくった動画をどのプラットフォームに公開したらいいか、
動画を視聴した人にどんなアプローチをすれば購入まで誘えるか、
動画視聴者の動向をどんな数字を見て、どのように判断すればいいか…。

本特集では、せっかくつくった動画を120%ビジネスの結果に結びつけるために必要な考え方、
すべきことなどを系統立てて整理しました。

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集客や販売促進といった「外向け」の動画活用から、採用、研修、インナーブランディングといった「内向け」の
動画の効果的な活用法まで網羅!
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【本号を読むメリット】
・動画を使った効果的な取り組みや戦略の立て方がわかる
・「動画をつくる」「動画を活用する」「動画を運用する」それぞれの目的で効果的な知見を得られる
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【こんな方にオススメ】
■動画を作成したけどイマイチ期待する結果が出ていない企業Web担当者
■動最近話題の動画系サービスをマネタイズにつなげたい企業担当者
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■動画施策を提案したいけど、決裁者に費用対効果がうまく説明できない担当者

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