企画立案時、問題や課題の精度を上げる方法とは? 事例詳細|つなweB

精度の向上(1)問題を検証する

「問題」を定義し精度を高める

ヒアリングから「問題」を特定していく際、どういう視点でまとめていくかによっても、問題の定義は大きく違ってきます。「現状」「あるべき姿」をどういう視点で捉えるのかによって、企画の方向性は大きく変わるでしょう。一つの問題に関しても、マイルストーン、大局的な話、局所的な話、会社全体の話、商品単体の話、予算の話、人材や社員教育の話といったあらゆる位相と関わってきます。例えば、前のページのWebサイトリニューアルを定期的にしたいという例では、問題は「コストがかかりすぎること」としています。しかし、「社員のリソースが割かれすぎること」や、「社内でリニューアルするようにしたいがそのスキルを持つ者がいないこと」といったように、予算ではなく人材を軸に問題を定義していくこともできます。

その手順は、ヒアリングで担当者からバイアスの少ない情報を引き出したら、それを「現状」「あるべき姿」「問題」のどこに近いか分類します。分類をしていく中で、各種情報をきれいに分類できる視点がわかってきます。それは必ずしも一つではない場合が多く、複数設定する必要がある際はその優先順位も決めていきます。気をつけなくてはいけないのは、あるべき姿に寄り添いすぎたり、特定の問題を出すために無理やり「現状」を作らないようにバランスを取りつつ視点を定める必要があることです。

こうした手順を経て問題を定義しても、いざクライアントに提案したら響かなかったり、試してみたら手応えがなかったりして、やっぱり適切ではなかったという結果になることはあります。そうした際は、場合によっては追加ヒアリングなどをしてより詳細な情報を得て、同じ工程を繰り返していきます。問題の定義は一度決めたら確定というものではなく、違っていそうであれば随時調整していきます。

このように速く判断し何度も反復して検証していくアジャイルな方法は、いまや企画に関わらずサービス開発や商品開発でも一般的になりました。検証を素早く繰り返すことで、選択肢の範囲が狭まるので、精度を上げていくことができます。

問題や仮説は検証し、違っていたら別の仮説を 検証することを繰り返し、精度を上げていきます

 

精度の向上(2)仮説を検証する

検証を繰り返し「仮説」の精度を高める

「問題」や「課題」を特定していく際に、「きっとこういう問題があるから、現状になっている。この課題を改善すればあるべき姿になれるはずだ」という「仮説」がその理由づけになります。企画においては、ある一定以上の精度があるだろうと予想している考え方のことです。

仮説は検証して精度が高いか否かを判断していくものなので、KPIなど評価指標を定めておくことが大切です。クライアントやユーザーの意見で評価していくこともあります。

そもそも仮説は仮の説なので、間違いというものはありません。こちらもやはり、アジャイルに検証を繰り返し、精度を上げていきます。いかに正しい仮説を一発で導き出せるかよりも、もしイマイチだったらまた新たな仮説を立てて検証する、というサイクルを回せる運用になっていることの方が重要です。

また、仮説をどの順番で検証していくのかという優先順位をつけていく必要があります。場合によっては、複数の作業の担当を割り振って、同時に行うこともあります。また、仮説を実行した結果新たな仮説が生まれることもあります。

仮説も、ヒアリングなどのさまざまな情報を元に立てていきます。その際に、情報がデータやユーザー調査などによる「事実」なのか、「推測」(結果の考察、誰かの意思や意見などを含む)なのかという点は分けて考える必要があります。検証が必要なのは、事実ではない推測の部分になるからです。そこが曖昧になってしまうと、何を検証すればよいのか不明確になってしまいます。また、検証の結果が出た際にも、そこから何を考えればよいのかが捉えづらくなります。

リリース後も改善を重ねられるWebやアプリなどと違い、プロダクトを販売するようなプロジェクトではリリース後の変更は難しくなります。その場合は、予算と時間が許せばプロトタイプをつくるなどしてできる限り具体的な形にし、検証を繰り返すようにします。Webなどでも、よいUI/UXデザインを提案してもなかなか具体的にイメージしてもらえない場合もあるので、実際にサイトを形にして提示すると、よりスムーズな検証が行えます。

一つの課題からいくつかの仮説が立てられる場合、優先順位を決めて検証していきます。最初の仮説を検証しイマイチであれば次の仮説を検証しと繰り返していくことで、課題の範囲が限定され精度が上がります。また、仮説の実行から新たな仮説が生まれることもあります
平田順子
※Web Designing 2019年6月号(2019年4月18日発売)掲載記事を転載

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