2019.05.30
「聞かせる」と「見られる」を 意識したプレゼン術 一段上のスライド、スピーチ、登壇者に
プレゼンテーション(以下プレゼン)で企画内容をわかりやすく伝え、熱意を感じてもらえると、相手の印象やジャッジも違ってくるでしょう。せっかくの企画の魅力を半減させないためにも、見やすいスライド、聞きやすいスピーチ、好印象なプレゼンターであることが望ましいです。
STEP1 相手に与えたい印象を考える
プレゼンで目指すゴール
プレゼンにおける成功は、企画内容をうけて、こちらの思い通りの印象・感想を持ってもらうことです。そうなるためにはどうすればいいのか、というところから伝える構成を考えていきます。
プレゼンを重視していますか?
企画書をつくることばかりに熱中し、プレゼンではただ企画書を読み上げているというケースを散見します。特に企画内容に自信があるからこそ、プレゼンは重視していないということはないでしょうか? プレゼンに力を入れるというのは、口八丁でどうにかしようということではありません。当然、企画内容自体がよいことが大前提です。しかし、プレゼンをおろそかにすると、結果的に損することが多いように思います。効率的な労働という観点からも、企画書やプレゼン資料づくりに毎回やたらと時間をかけるよりは、それらは必要十分なものに整えて、あとはプレゼンの力でその企画の魅力をきちんと伝える方が効果的です。
よりよいプレゼンにするためには、さまざまなスキルがありますが、スティーブ・ジョブズ氏のような強烈に人を魅了する力や、アナウンサーのような流暢な語りを目指す必要はありません。熱意を適切な温度で、内容をわかりやすく伝えることが大事です。プレゼンを上手に行えた場合、クライアントの感想は「プレゼンが上手だったからこの企画を採用した」とはなりません。「熱意を感じたから、わかりやすかったから採用した」となるはずです。内容と熱意の両方が伝わるプレゼンにするに越したことはないでしょう。
少しの練習でプレゼン力は大きく成長する
プレゼンは肉体的な行為であり、スポーツのようなものです。やったことのないスポーツはいくらテレビで観ていても自分でできないのと同様に、プレゼンも練習しないとうまくできるようにはなりません。ただし、そんなに複雑で難しいスポーツではないので、少し練習するだけでかなり上手になります。
ビジネスパーソンにプレゼン指南をする「『伝わるプレゼン』トータル支援パッケージ」というサービスを開発・提供していることもあり、自身でもプロのトレーナーによるプレゼンのトレーニングを体験しています。参加者の方々を見ていても、1~2日トレーニングをするだけで、自信を持って落ち着いてしゃべられるようになり、明らかに効果が出ていると感じられました。
例えば、プレゼンをするときは聞いている人の目を見るとよいとされています。相手の人数が多いときも、一人ひとり順番に目を見ていくと「自分に向かって話している」という印象を持たせられます。だいたい7~8秒見たら、相手に見ているという印象を持たれるので、じっと見る練習もしました。見ている自分はものすごく長い時間に感じますが、見られている方は、大して長く感じないものです。
トレーニングの際には、プレゼンの練習を録画して何度も見直すこともしました。プロによるトレーニングを受けなくても、例えば自分がプレゼンしている映像や音声を聞き返すことで改善点が見つかり、上達していきます。普段、プレゼンを録音や録画することはあまりないかもしれませんし、自分で見たり同じ社内のメンバーに見られたりするのは、とても恥ずかしいのはわかります。しかし、練習したものを見返してみると、プレゼンを聞く側の視点で改善しやすくなるでしょう。また、これからご紹介するプレゼンのためのポイントを押さえつつ、反復練習をすることでかなり上手になっていくのは確実です。
目指すゴールを設定する
ではここから、そもそもプレゼンの目的(ゴール)は何かということを考えていきましょう。これが、プレゼン準備として最初に行うことです。企画を提案するクライアントにどんな感想を持ってほしいか、企画を提案した広告会社や制作会社などが帰った後、クライアントにどんなことを話題にしてほしいかというところから考えます。これが社内の上司に向けたプレゼンであれば、その夜に同僚と行った飲み屋でどんな風に話題にしてもらいたいか、プレス向けの記者会見であれば、どういう見出しや論調の記事にしてもらいたいか、がゴールとなります。そうした目指すゴールどおりの評判を得られることが、プレゼンにおける成功です。
プレゼンで投影するスライドや話す順番の構成も、目指すゴールから逆算して考えていきます。例えば企業の課題解決をするようなプレゼンの場合は、これまでどんな状況であり、それをどう変えたいか、そのためには何をすべきかといったように、起承転結の流れで伝える方が向いているかもしれません。また、新商品や新サービスなどを訴求する場合は、まずは何ができるものなのかという結論から先に伝え、その後に市場のニーズやユーザーインサイトなどの背景を伝える方が向いているでしょう。あわせて、誰にどういう環境で、どれくらいの持ち時間で伝えるのかというところも含めて、プレゼンで伝えるべき情報の量や質などを決めていきます。
プレゼンに絶対解はありません。誰がどういうシチュエーションで聞き、どういう結果をもたらしたいのかによって、やるべきことは大きく変わってくるのです。