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知的財産権にまつわるエトセトラ Web Designing 2019年4月号

パブリックドメインの活用と留意点 ~青山ではたらく弁護士に聞く「法律」のこと~

身の回りに溢れる写真や映像、さまざまなネット上の記事‥‥そういった情報をSNSを通じて誰もが発信したりできるようになりました。これらを使ったWebサービスが数多く誕生しています。私達はプロジェクトの著作権を守らなくてはいけないだけでなく、他社の著作物を利用する側でもあります。そういった知的財産権に関する知っておくべき知識を取り上げ、毎回わかりやすく解説していくコラムです。

2018年12月30日に施行されたTPP関連法では、著作権の保護期間が50年から70年に延長されました。これにより、2018年12月末に著作権の保護期間が満了してパブリック・ドメイン(PD)になる予定だった藤田嗣治などの著作物の著作権は2038年12月末まで延長されることとなりました。

ただ、法改正の時点で既にPDとなっていた作品の著作権が復活することはありません。例えば、2015年12月末をもって保護期間が満了していた江戸川乱歩の作品などもPDのままです。とはいえ、今回の法改正により、もともと保護期間が70年だった映画以外の著作物はしばらくの間新たにPDとなる作品は出ないことになります。

法改正では、著作権とともに著作隣接権の保護期間も70年に延長されました。著作隣接権とは、実演家(役者、歌手、指揮者、演奏家など)、レコード会社および放送局の権利です。

今回、音楽レコード・CDを例に話をします。音楽レコード・CDでは、使用されている楽曲の著作権のほか、収録されている音源の実演家、音源を制作したレコード会社の著作隣接権が成立していることになります。そして、これらの著作隣接権の保護期間は、実演家については音源の収録日、レコード会社についてはレコード発行日から起算することになっています。

北島三郎さんは現役ですが、1962年発売のデビュー曲「ブンガチャ節」は、実演家である北島さんの権利も、レコード会社の権利も保護期間が終わっています。ただ、作詞家(星野徹)と作曲家(船村徹)の著作権はまだ保護期間内のため、レコード自体がPDというわけではありません。

しかし、クラシック音楽の古いレコードなどの中には、著作権も著作隣接権も保護期間が終わっているものがあります。指揮者としても有名だった作曲家リヒャルト・シュトラウスの生誕150年である2014年には、彼が指揮した演奏を録音したレコードの復刻版CDが発売されました。その中には1920~30年代に録音されて発売された、モーツァルトやワーグナーといった古典の楽曲の演奏がありました。これらの音源は、著作権も著作隣接権も切れてPDになっています。

ですから、皆さんがデジタライズしてWebサイトで配信をしても著作権法上は問題がないということになります。物置に眠っている古いレコードの中にPDとなっているものがないか、探してみてはどうでしょう。もしかすると思いがけないお宝が出てきて一攫千金も夢ではないかもしれません。

ただ、その際には、今回の保護期間の延長、そして海外の作品についてはさらに約10年の保護期間の延長(2015年12月号で紹介した戦時加算)があるため、今回の法改正により保護期間が約80年となっていることに注意してください。

音楽レコード・CD関係者における著作権(著作隣接権)保護の起算日と期間
Text:桑野雄一郎
1991年早稲田大学法学部卒業、1993年弁護士登録、2018年高樹町法律事務所設立。著書に『出版・マンガビジネスの著作権(第2版)』(一般社団法人著作権情報センター 刊 2018年)など http://www.takagicho.com/

掲載号

Web Designing 2019年4月号

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2019年2月18日発売 本誌:1,559円(税込) / PDF版:1,222円(税込)

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Webビジネスの成否に直結する!

CMS 2.0
新時代の常識

顧客との接点やエンゲージメントを高めるために必須のWebサイト。
その基盤となるCMSを、予算や自社都合だけで選んでいませんか?


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今や企業サイトの6割以上がCMS(コンテンツ管理システム)を導入していると言われています。
専門知識がなくてもサイトの更新や管理ができるのが特長のCMSですが、
これをただの「サイト運用ツール」だと思っているなら、
それは大きな機会損失を招いている可能性があります。

顧客へ認知やエンゲージを高めるために必須であるWebサイト、
そのコンテンツを有効に活用するための基盤となるCMSは、
今後のWebビジネスの勝敗を左右する大事なポイントなのです。
さらに、今あるサイト運用上のさまざまな課題も、
CMSを理解することで解消されるのです!


また、現在CMSと呼ばれるものは3,000以上存在しています。
中には業界や用途に特化したものもさまざまです。
そんなCMS、予算や担当部署の都合だけで簡単に選んでいませんか?

では、CMSをビジネスの基盤とし、武器として120%活用するためにはどんなことを考え、
どんな準備や選考基準が必要でしょうか。
そして、限られたリソースや少ないコストで成果を出すにはどうすればいいのでしょうか。



Web Designing 4月号(2月18日発売)では、
新規Webビジネスを立ち上げる際、どんなCMSを選べばいいか、今やりたいことを実現させるために
CMSを乗り換えるならどうすればいいか、既存のCMSをもっと活かすにはどうすればいいかなど、
もはやWebビジネスに欠かすことができないCMSの
これからの活かし方や課題の解決方法をさまざまなシチュエーションに立って解説します。


【対象読者&課題】
■とりあえず無料のCMSにしてみたものの、実際の運用にさまざまな課題が出てきた
■現在自社に導入されているCMSでは、やりたい新規Webビジネスが思うように実現できそうにない
■運用の使い勝手がいいCMSが知りたい
■予算は少ないが、企業サイトだけに素人が適当に作るのは抵抗がある
■CMS構築及びWebサイト制作、そしてその後の運用まで信頼できるパートナーを見つけたい
■「自社で簡単に作れる」という触れ込みを鵜呑みにした結果、現場が混乱&疲弊している


【予定内容】
●CMSこそがWebビジネスの勝敗を左右する

●CHAPTER1 CMSを“知る”
  01_CMSの定義や仕組みを知る
機能の違いやトレンド
02_WordPressが選ばれる理由と利用時の注意点
機能性、開発力で課題を解決
03_CMS導入がもたらすビジネスメリット
投稿の質と働き方を向上

●CHAPTER2 CMSを“選ぶ”
   01_ビジネス最適化につながるCMS選びのための準備
決め手は、選ぶ前の準備作業
02_具体例で学ぶCMSの選び方
「運用」や「保守」を意識した選択

【 CMSとセキュリティ 】 Web制作のプロが教える~CMSとセキュリティ“9つ”の金言
【 編集部が厳選! 】企業サイト・メディアで安心して使える商用CMS 17選!
【 Column 】 管理画面を変えたUXデザイン
【 Column 】 Webサイトのセキュリティのために~知っておきたいハッカーのこと

●CHAPTER3 CMSを“運用/活用する”
01_中長期的に考えるCMSの運用と体制づくり 
持ち腐れにしない、積極的な活用を!
02_これからの新常識は「CMSマーケティング」だ! 
まだWebサイトの更新にしか使ってないの?

【 CaseStudy 】 CMSで実現したリード獲得と新たな営業フロー/「Hint Clip」 共同印刷

ほか

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