パブリックドメインとは? 活用方法と留意点 事例詳細|つなweB

パブリックドメインとは、著作物や発明などの知的創作物について、知的財産権が発生していない状態または消滅した状態のことを差します。日本語では、公有(こうゆう)という訳し方をされることがあります。2024年2月現在、日本における著作権の保護期間(原則的保護期間)は、著作者が著作物を創作した時点から著作者の死後70年までと定められています。つまり、著作者の没後70年が経過した著作物は著作権が消滅するためパブリックドメインとなり、誰でも複製、出版、転載などが出来るようになります。

2018年12月30日に施行されたTPP関連法では、著作権の保護期間が50年から70年に延長されました。これにより、2018年12月末に著作権の保護期間が満了してパブリック・ドメイン(PD)になる予定だった藤田嗣治などの著作物の著作権は2038年12月末まで延長されることとなりました。

ただ、法改正の時点で既にPDとなっていた作品の著作権が復活することはありません。例えば、2015年12月末をもって保護期間が満了していた江戸川乱歩の作品などもPDのままです。とはいえ、今回の法改正により、もともと保護期間が70年だった映画以外の著作物はしばらくの間新たにPDとなる作品は出ないことになります。

法改正では、著作権とともに著作隣接権の保護期間も70年に延長されました。著作隣接権とは、実演家(役者、歌手、指揮者、演奏家など)、レコード会社および放送局の権利です。

今回、音楽レコード・CDを例に話をします。音楽レコード・CDでは、使用されている楽曲の著作権のほか、収録されている音源の実演家、音源を制作したレコード会社の著作隣接権が成立していることになります。そして、これらの著作隣接権の保護期間は、実演家については音源の収録日、レコード会社についてはレコード発行日から起算することになっています。

北島三郎さんは現役ですが、1962年発売のデビュー曲「ブンガチャ節」は、実演家である北島さんの権利も、レコード会社の権利も保護期間が終わっています。ただ、作詞家(星野徹)と作曲家(船村徹)の著作権はまだ保護期間内のため、レコード自体がPDというわけではありません。

しかし、クラシック音楽の古いレコードなどの中には、著作権も著作隣接権も保護期間が終わっているものがあります。指揮者としても有名だった作曲家リヒャルト・シュトラウスの生誕150年である2014年には、彼が指揮した演奏を録音したレコードの復刻版CDが発売されました。その中には1920~30年代に録音されて発売された、モーツァルトやワーグナーといった古典の楽曲の演奏がありました。これらの音源は、著作権も著作隣接権も切れてPDになっています。

ですから、皆さんがデジタライズしてWebサイトで配信をしても著作権法上は問題がないということになります。物置に眠っている古いレコードの中にPDとなっているものがないか、探してみてはどうでしょう。もしかすると思いがけないお宝が出てきて一攫千金も夢ではないかもしれません。

ただ、その際には、今回の保護期間の延長、そして海外の作品についてはさらに約10年の保護期間の延長(2015年12月号で紹介した戦時加算)があるため、今回の法改正により保護期間が約80年となっていることに注意してください。

音楽レコード・CD関係者における著作権(著作隣接権)保護の起算日と期間
Text:桑野雄一郎
1991年早稲田大学法学部卒業、1993年弁護士登録、2018年高樹町法律事務所設立。著書に『出版・マンガビジネスの著作権(第2版)』(一般社団法人著作権情報センター 刊 2018年)など http://www.takagicho.com/
桑野雄一郎
※Web Designing 2019年4月号(2019年2月18日発売)掲載記事を転載

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