パッケージ型?それともクラウド?ECで活躍するCMSの選び方 事例詳細|つなweB

モールか本店か

ECの用途でCMSを選ぶ際、その他のWebサイトが担う役割と同様に、まずどのような目的なのかを明確にしておく必要があります。例えば、ショッピングモールで売りたい場合には、Amazonや楽天、ヤフーショッピングなどに出店します。独自ドメインを使って本店サイトを構築するのであればクラウド型(ASP)サービスを使用するか、パッケージ型を使用してカスタマイズするかになります。

モールやASPのCMSは、独自のカスタマイズはできませんので、提供されているCMSにあわせてページを作成していくことになります。それぞれに特徴的な要素がありますので自社の目的にあっているかが大事です。このように、ECにはECのためのCMS導入時に考えるべきことがいろいろあるのですが、今回はそれらを大きく5つのポイントに絞り(01)、ひとつずつ見ていきましょう。

01 EC用CMSを選ぶには
CMSは一度選んでしまうと、他のCMSに移行するのはかなり大変な労力になります。上記5つのポイントを念頭に置き、実際に無料期間やキャンペーンなどを利用して試してみましょう

 

1. 商品カテゴリと相性はいいか?

まずは、販売したい商品やサービスの性質と使用するCMSとの相性が重要です。例えばファッション商材の場合には、色やサイズのSKU(受発注・在庫管理の最小管理単位)がたくさんあり在庫と一緒にうまく見せたい、またサムネイル画像に全体やアップ、モデル着用、サイズ表なども入れるなど画像を豊富に使いたい、さらに動画も使用して素材感をアピールしたいなどあります。

グルメでしたら大きな画像で食べる直前のシズル感を出したい、データダウンロード系であればそれ専用の機能が必要になります。販売したい商品によってページのデザインやレイアウトは変わってきますので、ユーザビリティを考えた構成ができるかどうかをチェックする必要があります。もちろん、お客様の層によってはスマホのUIを優先する必要があります。スマホでの見え方も重要なチェックポイントです。

 

2. 営業目線でどういうページにしたいのか?

トップページやカテゴリページ、情報ページよりも、ECの場合には最終的に購入へ結びつく商品ページを優先的に考える必要があります。この商品ページは「営業マン」の役割を担うものとして育てていく必要があります。

最初にがっつりデザインや構成などを考えてつくり込むのもよいですが、実際にはユーザーやお客様からの問い合わせ、質問、FAQなどによってページをバージョンアップしていく必要があります。あまり最初にガチガチに構築してしまうと、後で変更した際にレイアウトが崩れてしまうこともあります。ユーザビリティが大事なのはもちろんなのですが、後から追加、変更できてページをつくり込めるCMSが必要です。

ちなみに、ファッション商材の場合にはSS(春夏物)やFW(秋冬物)といった季節でガラリと商品が変わる場合には運用体制も考えておく必要があります。データをアップロードが柔軟にできるかどうかも大きな判断要素でしょう。機能は良いけどFTPでのアップのみしかできないとか、FTPでアップしたら管理画面からそのデータを編集できないなどといった一昔前のCMSもありますので、運用でしっかり回るCMSを選んでください。

 

 

3. マーケティングや検索対策がどこまでできるか?

現在のECでは、LPをつくりメルマガを配信して売上アップするといった単純なマーケティングでは売上をつくることはできません。商材やサービスによって売れる仕組みづくり=マーケティングが変わってきます。どのように商品やサービスを販売していくかは大事なところです。

ECの売上の公式は、「売上=アクセス人数×客単価×転換率」です。CMSが関連するのは転換率ですが、アクセスを集める部分もCMSが大きな影響力を持ちます。例えば、検索対策としてURLやタイトルタグ、メタ要素、301リダイレクト(URLの転送処理)のやりやすさなどは重要です。

クーポンを発行して自動で使えたり、クーポンコードの入力のしやすさはもちろん、このようなイベントを手軽に開催したり、母の日やクリスマス、誕生日などの記念日にあわせたさまざまなセールを行うことはよくあることですが、こういったキャンペーンとページの連動は現在のECでは必須と言えます。CMSと自動連動してなくて、いちいちページを手動で変更することになったら大変です(数年前までは普通に手動変更でした)。

また、Googleアナリティクスやタグマネージャ、Googleサーチコンソールといったツールやリスティング広告、リターゲティング広告、PLA商品広告(商品リスト広告)などさまざまプロモーションとの連携、分析のためのコンバージョンタグの導入など、いかに簡単に導入できて確実にデータを収集できるかどうかは現状のECでは必要不可欠です。

 

4. カスタマイズが必要か?

特徴ある商品や特別な運用を行う場合には、お客様の利便性を高める工夫をするのはよくある流れです。差別化が難しいECではお客様の利便性をアップするために、CMSのカスタマイズも行うことも多くあります。

ですが、本当にそのカスタマイズが必要なのかどうか自体も、よく考えたほうがよいと思います。モールやASPであっても今のECのCMSはかなり高機能になっており、最低限必要な機能はほとんど揃っています。このため、まずはモールやASPのCMSでどこまでできるのか、自社のビジネスにあっているかの検討は必ず必要です。

どうしてもやりたいカスタマイズやデザイン、運用がある場合、その機能を持っている他のCMSをまずは確認検討し、それでもできないと判断した場合にはECパッケージのカスタマイズを検討するほうがよいでしょう。

また、セキュリティ面のリスクも考慮すべきです。カスタマイズを実施すると、そこに脆弱性を持っている可能性が高くなったり、オープンソースのECパッケージのコア部分から脆弱性を突かれる可能性もあり、コア部分にまでカスタマイズを実施するとセキュリティのバージョンアップに対応できない場合も多々あります。

例えば、友だちに勧めるボタンや文字を入力するフォームがある場合などは、エスケープ処理や各ウイルス対策をプログラムをつくる段階でチェックしておく必要があります。管理画面にIPアドレスの制限を入れるといった対策も必要です。グローバルIPアドレスがよくわかっていない場合にはいきなりECパッケージのカスタマイズすることはやめておいたほうが無難でしょう。

 

5. 多言語対応や決済連携はどこまで可能か?

最後のポイントは、多言語化です。最近では、越境ECやインバウンド対応のために多言語、多通貨といったグローバル対応を望む人も多いと思います。多言語も英語だけなら問題ないと思いますが、ハングルや中国語(簡体字、繁体字)対応、タイ語などの対応となるとCMS自体の見直しも必要です。例えば文字コード。世界共通企画のUnicode対応ならばよいのですが、残念ながら日本のEC用のCMSは現在、ほぼ対応していないと言ってよいでしょう。要チェックポイントです。

決済もクレジットカード決済だけではなく、世界で2億人が使っているPayPal決済や中国人が使用するアリペイ決済、Wechat決済などの決済もあります。最近人気のアマゾンペイメント決済やID決済も導入が簡単かどうかもCMSの決め手にもあります。

もちろん、自社の商材やサービスとお客様の状況によって何の決済が必要かになりますが、商品ページからカート内、最終決定画面まで購入のモチベーションを維持していただく必要もあります。途中でカゴ落ちやサイトからの離脱をできるだけ抑えたいので、いかにショートカットで購入できるかは重要なチェックポイントです。

 

売上戦略に基づき早く・確実に

冒頭にも述べましたが、ECのCMSを選ぶ場合には、どこでどのように売上・利益を上げていくのかを考え、その戦略のもと、一番自社にあったCMSというツールを選ぶかになります。最近では多店舗展開用に一括登録できるCMSツールも多くなりました。ECの場合には、商品をインターネット上にアップすることで販売を開始できる状態になりますので、商品をいかに早く確実に、そしてページのアップデートや修正ができるCMSがますます必要になっています。

商品情報をアップする、ページを制作する運用体制とあわせて、自社にあったCMSをお選びください。

 

Text:川連一豊
JECCICA(社)ジャパンE コマースコンサルタント協会代表理事。フォースター(株)代表取締役。楽天市場での店長時代、楽天より「低反発枕の神様」と称されるほどの実績を残し、2003 年に楽天SOY受賞。2004年にSAVAWAYを設立、ECコンサルティングを開始する。現在はリテールE コマース、オムニチャネルコンサルタントとして活躍。 http://jeccica.jp/
川連一豊
※Web Designing 2019年4月号(2019年2月18日発売)掲載記事を転載

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