2019.01.30
クライアントと濃密で長期の関係を築く方法 8年間「週1度、必ず会ってミーティング」を実施。成果と継続を実現する秘訣とは?
2010年以降、デジタルを中心に出版業界初の試みに挑み続ける星海社を、裏側で企画と仕組みで支えるのがSINAP(シナップ)。両者のタッグはすでに9年目。丸8年で互いの関係性はどう変わり、さらに深化したのか?
SINAP×星海社
大川 貴裕_Takahiro Okawa
(株)シナップ 取締役 クリエイティブディレクター
太田 克史_Katsushi Ota
(株)星海社 代表取締役副社長 COO
ビジネス戦略に携わる機会が増えUX重視の仕組みづくりがメインに
SINAP(シナップ)は、東京・神宮前に拠点を置く、UX重視の成果物制作や継続的なデジタルマーケティングに強みを発揮するデジタルクリエイティブプロダクション。設立当時の2004年に遡ると、当初はフリーランスとして活躍していたディレクター、デザイナーたちによって設立されたWeb制作会社だ。クライアントの課題解決を意識した広義のデザインでアプローチする姿勢は大事にしつつ、Flashを使ったスペシャルサイトが活況だった時代、SINAPもその潮流どおりのWebサイトを手がける機会も多かった。
「2007年~2008年になると、サブプライム住宅ローン危機、リーマンショックで広告系の案件が減少。さらにiPhoneの登場でFlashの案件はなくなっていきました。Web業界が“変化”を求められた時期でした」(SINAP・大川貴裕さん)
増えてきたのがスマートフォンを活用したWebサービス案件。もともと単純な制作案件よりビジネスプランニング案件に携わっていた背景から、今後の企業のビジネス戦略に、Web戦略の占める位置が大きくなると直感できたそうだ。
「UXデザインという言葉が流行る前から、スマホなどのUXを意識したアプリやビジネスの仕組みづくりに携わっていたのが活きて、時代の流れとうまく噛み合えましたね」(大川さん)
出版社が新たな挑戦へ!両者の決断が今につながる関係に
2010年、そうした経緯を辿ったSINAPが、同年7月に起業予定の出版社、星海社と出会い、以後丸8年間、毎週一度SINAPオフィスで両者合同ミーティングが現在進行形で欠かさず開かれるほど、濃密なパートナーシップが築かれていく。技術トレンドの移り変わりが激しい昨今、ここまで深く継続的な関係性は珍しいだろう。
両者の関係性から貴重なヒントを得るために、もう少し星海社の背景を知っておきたい。星海社は起業前から、デジタルを担うパートナーを探していた。インターネットやデジタルが盛んな昨今、出版界は紙中心など従来路線の脱却がなければ衰退しか待っていない状況。デジタル中心で勝負したい新規出版社として、数あるパートナー候補からなぜSINAPを選んだのか?
「SINAPさんから、“新たな出版の常識をつくるなら”と、かなり突っ込んだ提案をしていただけたからです。“この相手なら本気で一緒に闘える”と思いましたね」(星海社・太田克史さん)
「当時は特に出版業界とデジタル業界に大きな溝があったので、当初は“言ってもわかってくれないのでは?”と悩みつつも(笑)、従来の概念を覆したいという星海社の創業理念に適った本気のデジタル提案をすると、想像を越えた柔軟な反応があって、動き出しました」(大川さん)
8年前を思い起こすと今ほど電子書籍が普及しておらず、まだリッチコンテンツはFlashという時代にFlashでなくHTML5対応サイトを立ち上げ、レガシーのフィーチャーフォンは見切ってスマホ対応を中心に据える。極めつけは小説のDRM(デジタル著作権管理)フリー化も行った。
「ガラケー対応は細かくやるべきという時代で、ガラケー対応した方が利益が出るのに、私たちの理念を優先したSINAPさんの真摯な提案姿勢が、関係性の象徴になっています」(太田さん)