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Bay Area Startup News Web Designing 2019年2月号

デザインの考え方をビジネスへ実践 デザインバックグラウンドを持つスタートアップ

海外で起こっている、あるいは起こりつつある新しいビジネスの潮流、近い将来に日本にやってくるであろうビジネストレンドなどを紹介・考察します。米国サンフランシスコ在住の筆者が、サンフランシスコおよびシリコンバレーの「ベイエリア」を中心に、イケてるスタートアップを中心とした会社、サービスを毎月1つ取り上げながら、その背景や目的、今後日本で起こりうるトレンドについて追究します。

デザイン知見を活かし急成長する企業

GoogleやFacebookなど、シリコンバレーの地域ではエンジニアがスタートアップを始めるケースが多いです。その一方で、最近ではサンフランシスコ市を中心に、デザインバックグラウンドを持った人たちによってつくられた企業の活躍が目立っています。TwitterやAirbnb、Pinterestなどがその例です。

もともとデザイナーだった人が中心となりつくったサービスなので、自ずと見た目だけではなく、使いやすさ、いわゆるUIやUXのクオリティも高くなり、ユーザーからの支持を集めやすいのです。そして最近話題のサービスデザインやデザイン思考などの経営とデザインを融合する仕組みで、それらの企業の成長も加速していると言えるでしょう。今回は、デザインバックグラウンドを持つ創業者によるスタートアップを紹介します。

美大出身者で創業したAirbnb

ザイナーが立ち上げた会社としておそらく一番有名なのが「Airbnb」です。創業者のBrian Chesky、Joe Gebbia、Nathan Blecharczykのうち、BrianとJoeは RISD(リズディ:ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン)出身のデザイナーです。美大のハーバードとも呼ばれる有名校であるRISDで出会った2人に、本家ハーバード大学でコンピュータサイエンスを学んだNathanが加わり、Airbnbは生まれました。彼らは「信頼関係のデザイン」によって、「現地の人の家に泊まる」という今までにない体験を実現したのです。

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Airbnb
世界中の人と部屋の貸し借りが出来るコミュニティー・マーケットプレイス。美大出身のBrian Chesky(左)とJoe Gebbia(中央)、ハーバード大出身のNathan Blecharczyk(右)の3人で創業されました

デザイン経営を実践するPinterest

「Pinterest」も同じようなバックグラウンドを持っています。まるで写真をアルバムに貼っていくように、ネットで見つけたお気に入りの写真を保存、分類、共有することのできるPinterestの魅力は、何と言ってもそのデザイン性にあります。まるでファッション雑誌のようなインターフェイスは多くのデザイナーをユーザーとして獲得してきています。

そんなPinterestの共同創業者であるEvan Sharpもデザインバックグラウンドを持ち、「デザイン経営」を実践する1人。コロンビア大学院で建築を学んだ後に、Facebookでデザイナーとして活躍していたEvanは、勤務時間外の空いている時間に仲間とつくっていたのが、後にPinterestとなりました。

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Pinterest
デザイナーから圧倒的な支持を得るSNS。共同創業者であるEvan Sharpは同社創業前、コロンビア大学院で建築を学び、Facebookでデザイナーとして活躍していました

1人のデザイナーが爆発的成長の鍵だったYouTube

もはや我々の生活になくてはならないサービスとなった「YouTube」ですが、その創業メンバーの1人もデザイナーです。共同創業者のChad Hurleyは大学で美術を専攻した後、YouTubeの立ち上げ前まではPayPalでデザイナーとして活躍していました。PayPalのオリジナルのロゴは彼によるデザインです。その後、PayPalでの同僚だったSteve ChenとJawed Karim とともにYouTubeを立ち上げました。彼がデザイナーでなければ、YouTubeがここまで成長するサービスになっていなかったかもしれないとも言われています。

YouTubeが爆発的に普及した2006年に執筆されたTime誌の記事によると、世の中に受け入れられた理由は「簡単さ」と「格好良さ」のバランスが良かったことだったとのこと。

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YouTube
もはや大手企業でYouTube上に自社チャンネルを持っていない方が珍しくなってきた動画サイト。共同創業者のChad Hurleyは元PayPalのデザイナーで、ホームパーティの動画を参加者に送信したいが容量が大きくて送れなかった出来事から、動画を共有するWebサービスを思いついたそうです

優れたツールデザインのSlack

続いては、企業向けチャットツールの「Slack」。ベイエリアでは導入していない会社を探す方が難しいほど普及率の高いチャットツールになっています。その魅力は「手軽さ」と「便利さ」で、業務効率を上げたければ何をするよりもまずSlackを導入しろ、という声があがるほど。もっとも成長速度の速いスタートアップだと言われています。

Slackの創業者であるStewart Butterfieldもデザインバックグラウンドを持っています。彼がSlackで実現した「ビジネスコラボレーションハブ」としてのチャットツールのデザインは、UXの観点から見ても非常に優れています。

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Slack
会社規模に限らず多くの企業で導入されている企業向けチャットツール。創業者のStewart Butterfieldはユーザーからのフィードバックを非常に大切にし、「漠然とした本当の望みは何か」を把握することを重要視していました

創業者が昔からデザイン思考を実践していたTwitter

最後にTwitter。創業者のJack Dorseyはべイエリアでもっとも著名な起業家の1人です。今では起業家としての側面が強い彼も、Twitterを始めた当初は実はファッションデザイナーになりたかったといいます。

結局ファッション業界へと進むことはなかったですが、PradaやDior Hommeのスーツ、そしてRick Owensのレザージャケットを愛する彼のコーディネートから溢れる美意識は、Tシャツにジーンズの多いシリコンバレーの起業家の中で一層際立っています。彼が昔からデザイン思考実践者だったという意味ではビジネスにおけるデザイナーの考え方の重要性を理解していたと言えます。

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Twitter
世界有数のSNSであるTwitterの創始者Jack Dorseyは、モバイル決済サービス「Square」の創業者でもあります。彼のコーディネートはメンズファッション雑誌『GQ』にも取り上げられるほど
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Text:ブランドン・片山・ヒル
米国サンフランシスコに本社のある日・米市場向けブランディング/マーケティング会社Btrax社CEO。主要クライアントは、カルビー、TOTO、JETRO、伊藤忠商事、Expedia、TripAdvisor等。2010年よりほぼ毎週日本から米国進出を希望する企業からの相談を受け、地元投資関係者やメディアとのやりとりも頻繁。 http://btrax.com/jp/

掲載号

Web Designing 2019年2月号

Web Designing 2019年2月号

2018年12月18日発売 本誌:1,559円(税込) / PDF版:1,222円(税込)

Web制作会社の動向でわかる!IT業界の2019年

サンプルデータはこちらから

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アンケートとインタビューで浮き彫りにする
Web制作業界の今とこれから

Web制作のリアル 2019

●この5年、Webの役割はどう変わった?
●どんな業務が増え、どんな仕事が減った?
●Web制作以外で広げたい業務は?
●会社として求める人材像は?
●強化したい知識やスキルは?

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デジタル全盛の今、加速度的にWeb制作の現場も変化しています。
ほんの5年前と比べてもスマホの普及やインフラの進化、さらにはAIなど技術的潮流の変化もさることながら、
それらに伴う消費者の行動変化は今までないスピードになっています。

そんな中、デジタルを駆使した課題解決のプロであるWeb制作会社/Web制作者は、
「サイト制作」だけを請け負う存在ではなくなりました。
ブランディングやプロジェクトの上流から参加するコンサルティング、アプリやビジネスツールの開発、
IoT、AI、はたまた採用やコーポレートアイデンティティの構築まで、その仕事の領域は大きく広がっています。

なぜそんなことが起きているのでしょうか。
Web制作という仕事にはそういった新しい領域の課題を解決し、次世代の要望を実現するスキルとノウハウがあるからです。
デジタルを中心とした現代のビジネスは、そんな「パートナー」を求めているのです。

では、そんなWeb制作会社やWeb制作者は何に力を入れ、これからどこへ向かおうとしているのでしょうか。
本特集では、独自アンケートとインタビューによる調査を実施し、Web制作会社の現在の経営戦略や現場の生の声を徹底収集。
過去5年間からの現場の変化を鑑みながら、Webを中心としたデジタル時代の今と近未来を考えてみようと思います。




■[第1部]Web制作白書2019・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Web制作という仕事が登場して20年強。この仕事の形は大きく変化を遂げてきました。
かつてデザインを中心としたその仕事は、今や単なる制作に留まらぬ、実に幅の広い仕事になっています。
Web制作に携わる人達が何を考え、どう働き、どこを目指しているのか。
その点をさまざまな角度から尋ね、その結果をグラフとコメントで構成しました。

Web制作とは今、どんな仕事なのか。そしてこれからどう変化していこうとしているのか。
その結果からは驚きの今と未来が見えてきます。



■[第2部]時代がWebクリエイターを求め始めている! Web制作の今とこれから・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・「デザイン経営宣言」をWeb制作者観点から読み解く

[Chapter1]Web制作とクリエイティブの今・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・Web業界の変化と活路
 主に仕事の内容について、打ち上げ花火的なプロモーションの激減、クリエイティブという言葉が引き連れる意味の変遷など、
 Web制作が表現からクライアントの課題解決へと向かっている根拠を探ります。

・Web制作12社が考える「いま現場で必要とされる能力とは?」
 現場では、デザイナーであればデザインを、プログラマーであればコーディングを、という枠組みだけでなく、両者の知識やコミュニケーション能力など、職能が
 広がっている状況を把握します。

・デザインの力は企業になにをもたらすのか?_サイバーエジェント執行役員 佐藤洋介
 いまのWeb制作としての職能をどう育てるのかについて、対個人的、組織論的なアプローチで育成についてのヒントを解説します。
 同様に、個人がどのようにその能力を身につけることができるのか、日常の生活、毎日の仕事のなかでいかにアンテナを張り、知見をためていけるのでしょうか。

・Web制作会社進化論~広がる業務領域~


[Chapter2]制作会社が知っておきたい今ドキのクライアント事情・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
予算策定までのプロセス、要件定義の考え方、社内事情。制作会社に発注したい企業にも、「やりたくてもできない」理由があります。
現在の企業がWebビジネスを行う際、どのような課題や障壁があるのでしょうか。

・クライアントとの適切な関係をつくる「予算や見積もりの考え方」
・濃密で長期の関係を築く方法


など

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