社内の“人”の成長を促進させクライアントの課題を根本からサポートする 事例詳細|つなweB
株式会社エクザム
1995年にWeb制作会社となり、関西圏の企業や自治体のサイトなどの制作を手がけてきた。専門スキルを持つ人材も多数有し、サイト制作に関わる分野を社内でオールマイティに手がける。地元京都の観光情報サイトも自社で複数運営している。

 

“人”の知識や経験値で顧客とユーザーのニーズを満たす

Webにまつわるあらゆる業務に対応できるよう多様な部署を有するエクザム。なかでも特徴的なのが品質管理に特化した部署だ。専門スタッフが掲載情報やシステム、ユーザビリティなどをチェックすることで高品質な成果物を提供している。一般的に品質管理はディレクターが担当するが、同社ではディレクター業務の煩雑化を防ぎ、品質管理能力に長けた人材の専門性を深めるためにこの部署を設けたという。

「私たちの強みは“人”であり、その成長システムです。ITの開発は、人の知識や経験がないと行えません」(大森氏)

社員の外部研修や資格取得も奨励し、支援・補助を積極的に行っているという。

顧客に対しても同様に、クライアントやユーザーといった“人”を起点に考えている。

「Webサイトは情報を載せるものでありツールでもあります。運営する“人”が業務を遂行しやすく、かつ彼らの目的を果たせるものになるようにと常に考えています」(大森氏)

大阪府堺市のロケ地の紹介や誘致活動などを手がける「堺フィルムオフィス」のサイトも、そうした思いを持って制作した事例の一つだ。使いやすさやわかりやすさを追求しつつ、余白を活かしたスタイリッシュなデザインとした。

「クライアントには、Webサイトの機能をより充実させ、映像制作者向けの情報発信力を高めたいという問題意識がありました。それに対して我々はもう一歩踏み込み、どのようにサイトを運用していくべきか、どんなサイトなら顧客や利用者が喜ぶかを考え、そのあり方を定義していきました」(大森氏)

また、日本画家・橋本関雪の絵画などを収蔵する「白沙村荘 橋本関雪記念館」のサイトでは、美意識の高いクライアントの要望に応えるために複数のデザインを提案。最終的にタイポグラフィを活かしたインパクトのあるサイトを制作した。

ブランド刷新のためのリニューアルを手がける宇治茶の老舗「山政小山園」のサイトでは、新たなターゲットとなるユーザーに向けて同社の魅力や差別化ポイントをわかりやすく伝えることに注力したという。このように、多くの場合サイトの根幹部分からクライアントへの提案を行っている。

左から日下部普氏、木下由佳氏、大森寛明氏

 

JPドメイン名のメリットと業態との親和性

堺フィルムオフィスと白沙村荘では「.jp」を、山政小山園では「.co.jp」をドメイン名に採用している。

「日本の方が発信している情報だということや日本に関する情報だということが伝わりやすいこともあり、『.jp』や『.co.jp』を提案する場合が多いですね」(日下部氏)

「『.co.jp』は日本国内の企業でないと登録できないので、信頼性を担保できるというメリットもあります」(木下氏)

サイトリニューアルから手がける案件の場合、従来のドメイン名を引き継ぐことが多いものの、ドメイン名とサイト内容のミスマッチによって変更を提案することもあるという。

「ドメイン名を変えることにはリスクもありますが、日本の伝統産業を扱っているのに『.jp』以外のドメイン名を使っていたサイトに対しては、『.jp』のほうが適しているという判断から変更を提案したケースもありました」(大森氏)

古都京都を拠点に伝統産業や観光情報のサイトにも多く携わってきた同社だからこそ、「.jp」の有用性を深く理解しているのだろう。

最後に今後の展望をうかがうと、Web業界を生き抜くヒントとも言える回答があった。

「Webの世界では、トレンドだった技術があっという間に廃れることもあります。専門性を高めて“知”を深めつつも、時にはその“知”を棄却し、新しい“知”を獲得する柔軟性を持つことが大切だと考えています」(木下氏)

白沙村荘 橋本関雪記念館
白沙村荘は、大正から昭和にかけて京都を拠点に活動した日本画家・橋本関雪の邸宅であり、現在は橋本の絵画や美しい庭園が楽しめる場所となっている。運営者は橋本関雪の子孫にあたる人物で、美への感性が非常に高かったため、複数パターンのデザインを提案した。あえて絵を前面に出さずタイポグラフィが印象的なデザインが採用された
山政小山園
宇治茶の老舗「山政小山園」のサイトリニューアルを手がけた(リニューアル後の公開は2019年1月を予定)。もともとはBtoB向けのサイトであったが、間接顧客ともなり得る一般消費者が目にしても、違和感なく茶葉の魅力が伝わるブランド展開で刷新。「他社との差別化を図り、企業の魅力が非言語でも伝わることが大事」という考えのもと、印象的なビジュアルやキャッチコピーを用いた構成となっている

企画協力:株式会社日本レジストリサービス(JPRS)

久我 智也
※Web Designing 2019年2月号(2018年12月18日発売)掲載記事を転載

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