「箱庭」から学ぶ、長続きオウンドメディアの掟 事例詳細|つなweB

私は、女子クリエイター向けオウンドメディア「箱庭」に立ち上げから携わっています。2018年で7年目に突入し、もう老舗Webメディアの仲間入りです。たった数年で更新を停止するオウンドメディアも多い中、ここまで来れたのには正直驚いていますが、しっかりとした目的意識を持って運営してきたからこそ、継続できたとも分析できます。本連載では、「箱庭」を運営する中でさまざまな問題を乗り越えた経験から、オウンドメディア、Webメディアの制作・運用に関わる人が参考になるような話をいたします。

 

オウンドメディアの出発点は「なぜ必要なのか」

あなたが自社のオウンドメディアを立ち上げることになった場合を想像してみてください。まず、「オウンドメディア」でWeb検索したり、書店でオウンドメディア関係書を探したりすると思います。

オウンドメディア関連の書籍やブログ記事は、作り方や広報・マーケティングのアプローチを軸に語られていることが多く、「オウンドメディアの必要性」を考える視点が抜けている気がします。立ち上げる際、「なぜ必要なのか」を考えことは不可欠です。

また、オウンドメディアの存在意義は変化し続けます。「なぜオウンドメディアが必要か」「どんな影響を及ぼし、どんな効果があるのか」はその都度考えられるべきでしょう。

 

弊社の場合、エディター、プランナー、デザイナー、エンジニアといった様々なクリエイターが在籍しています。7~8年前、SNSをはじめ、クリエイター個人からの情報発信を推奨するようになったので、メンバーはデザインやITに関する情報をどんどん発信していました。

ある時、メンバー個人が発信した情報が私にとって大変有益だったので、「こういった情報を集めてメディア化できないものか」というアイデアが生まれ、「箱庭」を立ち上げるきっかけになりました。

ターゲティングより「強み」の発掘が重要

オウンドメディアを立ち上げる動機として一般的なのは、「商品を買ってもらいたい!」「サービスを使ってもらいたい!」「会社を認知させたい!」といったものです。この場合、「商品」「サービス」「会社」にとっての「強み」を的確に把握することが、オウンドメディアを運営するにあたって重要になります。

例えば、「環境に優しい素材で作られたワイシャツ」の場合、エコでサステナブルなイメージが強みだと考えられます。この商品を紹介するためのオウンドメディアを作るとすれば、ロハスピープルのようなエコ意識の高い読者がターゲットになりそうです。このように、強みを発掘して初めてターゲティングが可能となります。

オウンドメディアを立ち上げるには、明確かつ訴求性の高い強みが必要です。強みが曖昧だと、ターゲティングもままならなく、オウンドメディアとしての存在感も示せません。弊社でいうと、「会社の認知度を上げる」という目的の前に、「デザインに詳しいクリエイターがいる」という会社にとっての強みがありました。そのため、立ち上げ当初は、社員であるクリエイター個人を全面に推し出したコンテンツを作っていました。

社員クリエイターによる箱庭の制作風景

フェーズごとの「役割」を設計する

強みが認識できていれば、あとはメディアの果たす「役割」が重要となってきます。ここでいう役割とは、オウンドメディア運営事業に対し、会社内でどう意味付けをするかという話です。

運営上、費用対効果の問題は常に付きまといます。広報ツールとして定性的な効果で割り切るのか、それとも、メディア自体を収益化し定量的な効果を求めるのか。そもそも、コンテンツマーケティングの側面をもつオウンドメディアでは、収益のような目に見えた結果をすぐに出すことは困難といえるでしょう。

結果が見えにくい中、オウンドメディアの更新を継続するためには、納得感のある役割を掲げたうえで、運営メンバー全員の共通認識とする必要があります。

「箱庭」では、最初に成長過程を描き、フェーズごとの役割を示しました。「兼任で運営→集客の徹底→企画の横展開→事業化の模索→収益と貢献の可視化」といった具合に、スモールスタートから徐々にマネタイズしていくイメージです。初期は「社員の表現の場」、中盤以降は「読者に貢献できるメディア」と役割を変え、事業として継続させたのです。

箱庭が描いた成長過程

コンテンツや集客を考える以前に、「なぜ必要なのか」を問い直し、強みを発掘して、社内での役割を明確にすることが、長続きするオウンドメディアにとっては大切です。

次回以降は、オウンドメディアのニーズや成長過程をテーマにする予定です。そして、本誌では編集力をあらゆるビジネスに応用する「一億総編集者計画」という連載も書いておりますので、そちらもぜひチェックして頂ければと思います!

 

Web Designing連載「一億総編集者計画」

酒井新悟

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