ある夏休み、私は妖怪が住むと言われる山奥の村へ遊びにやって来た。本当に妖怪が居るなんてことはないと思うけど、せっかくの休みにちょっと不思議な体験ができたらいいなぁという軽い気持ちでやって来たのだ。
山奥の村の民宿に着いた。民宿では、やさしそうなおばあさんが出迎えてくれた。おばあさんに何か聞いてみることにした。
おばあさんに妖怪ついて聞くことにした。
私「この辺りに妖怪が出ると聞いたんだけど・・・」
おばあさん「あらやだよ、妖怪なんて。ハハハ。」
おばあさんは、そう言ったが顔は笑ってなかった。何かありそうな感じだ。
私「この辺りってどんな所なの?」
おばあさん「自然がたくさんある良いところですよ。ゆっくりして言ってくださいね。」
おばあさんはにこにこしながら言った。
私「今夜の夕食は何?」
おばあさん「山で取れた山菜料理ですよ。楽しみにしててください。」
おばあさんは、にこにこして言った。
次に何を聞こうか?
おばあさんが怖い顔になり強い語調で言った。
おばあさん「妖怪のうわさ、信じなさるのか?およしなさい。怖い目に会うよ。」
急に態度を変えたおばあさんに私はびっくりして何も言えなかった。
やっぱりこの村には何かありそうだ。そう思った私は夕食までの時間を妖怪調査にあてようと思った。
民宿の正面には小川が流れており、民宿の裏手には山へ続く細い道がある。
どうしようか?
草のにおいが体に絡みついてくる山道を、道沿いに歩き続けた。道はどこまでも続いている。何度も上ったり下ったりの連続でキリがない気がした。
いい加減疲れたので立ち止まると、水音が聞こえた。
私はしばらく小川に沿って歩いた。さわさわと小川が流れている。足元にサワガニが歩いていった。水辺には清涼感がある。悶々と曇っていた空を水が流してくれるような気がした。
緑にうっそうと囲まれた村。元気な虫の鳴き声だけが恐ろしく響いてくる。今にも巨体の怪物が現れて私に襲いかかってきそうな重苦しい圧力を感じた。
そのまましばらく歩いていたが、日が傾いてきたので民宿に戻ることにした。
私は自分の部屋に戻って、畳の上にごろりとした。ちょっと疲れていたのか、うとうとした。
怖い夢を見た。民宿のおばあさんが実はヤマンバだったという内容だ。
包丁を研ぎながら、ほくそ笑み「久々に美味しそうな客が来た。」とぶつぶつ呟くのだ!!
「ご飯ですよ。」・・・おばあさんの声で私は目が覚めた。汗をびっしょりかいている。
私はタオルで体を拭いて食堂へ向かった。
ご飯はとても美味しかった。山で採ったという山菜をふんだんに使った優しい味のする夕食だった。
民宿のおばあさんは優しかった。食後におばあさんから村の昔話などを聞いた。
妖怪がたくさん出てくる話だった。この村に妖怪が居ると言う噂の理由はこれだったのかと確信した。
私はそれから数日をこの村でゆっくりと過ごした。妖怪の夢は見たが、妖怪に逢うことはなかった。それでも、田舎でゆっくりと過ごすことができて楽しい休暇となった。(おわり)