「Word+Acrobat DTP出力実践ガイドブック」(山木大志・著、2005/10)をご購入賜り、誠にありがとうございます。このページでは、書籍刊行後の訂正情報やサポート情報を掲載しています。
■ 「Acrobat 6.0と7.0の色変換の仕組みの違い」についての補足説明
本書178ページ以下で、6.0と7.0の色変換の説明をしています。ただ、ここではCMYのみの説明にとどめ、Kに関しては、PDF Referenceを参照することを紹介しました。しかし、「PDF Referenceではわかりにくい」という声もありましたので、ここでKの生成に関して説明を付け加えます。
墨版生成の原理
図3-5-06(176ページ)では、墨版が生成されているものと、生成されていないものがあります。墨版が生成されていないものは、178ページの数式で、CMYの三色のうち、二色あるいは一色しか生成しないものです。逆に、CMY三色を生成するものは、墨版が生成されます。
墨版合成は、PDF Referenceでは、以下の式で行われることが説明されています。
A.
c=1.0-red
m=1.0-green
y=1.0-blue
k=min(c,m,y)
B.
cyan=min(1.0,max(0.0,c-UCR(k)))
magenta=min(1.0,max(0.0,m-UCR(k)))
yellow=min(1.0,max(0.0,y-UCR(k)))
black=min(1.0,max(0.0,Bg(k)))
B.の4つの式の中の「UCR(k)」と「Bg(k)」は関数です。デバイスドライバなどでは、関数を利用して、具体的なデバイスに合わせた結果になるように調整するわけです。
Acrobat 6.0での色変換
本書で説明しているAcrobat 6.0でのRGB→CMYK変換では、「UCR(k)」と「Bg(k)」それぞれの関数は適用されていません。A.の式だけを利用しています。簡単に言えば、墨版の値はCMY三色のうち、最も小さい数値になります。この場合、CMYの値は、Kの値を差し引いたものになります。この理屈を実例で示せば、以下のようになります。
・アクアの例
(1)アクアのRGB値
R=0.2、G=0.8、B=0.8
(2)アクアのCMY値 (1) *本書178ページ参照
c=1.0-0.2=0.8
m=1.0-0.8=0.2
y=1.0-0.8=0.2
(3)アクアのK値=0.2
(4)アクアのCMY値A *前述A.の式による
c=0.8-0.2=0.6
m=0.2-0.2=0
y=0.2-0.2=0
これによって、アクアのCMYK値は0.6、0、0、0.2となり、図3-5-06の値と一致することがわかります。黒と灰色は、178ページの数式では常に等量のCMYを生ずるため、CMYがOになり、K一色となります。
印刷の色は理論的には、CMYの三色で実現できることになっています。しかし、実際にはインキの濃度、インキのノリ、その他の理由により、CMYを同じ値にしても黒にはならず、濃い茶色になってしまいます。そのため、K版が必要になるのです。
これによって、印刷色がよくなるだけでなく、インキの総使用量を抑制できる、裏移りを防ぐなどの効果があります。この考え方を図にすると、別図のようになります。
※最終更新日:2005/10/31
※書籍紹介のページへ