『DVD Studio Pro 2パーフェクトガイド 』ご購入の読者の方へ
このたびは、小社刊『DVD Studio Pro 2パーフェクトガイド』をご購入いただきまして、 大変ありがとうございます。
このページでは、同書 や「DVD Studio Pro 2」に関する情報を掲載していきます。
◎DVD Studio Pro 3の発表と新機能について Text : 竹内愼
(2004年4月23日更新)
■DVD Studio Pro 3と本書の役割
本書(『DVD Studio Pro 2パーフェクトガイド』)は、Mac OS X v10.3.3上で動作するDVD Studio Pro 2.0.5でのDVD制作を念頭に書かれていますが、既に触れましたように、コアとなるほとんどの機能は、そのまま継承されていますので、本書を読みながらDVD Studio Pro 3を操作していただいてなんら支障はありません。オプションの設定など、操作上の相違点につきましては、順次このページで紹介していきますので、ご期待ください。
■DVD Studio Pro 3発表!
4月17日〜23日に米国ラスベガスで恒例のNABが開催されました。
NABは元々プロ用放送機器の展示会/コンファレンスとして有名でしたが、近年はノンリニア編集ソフトなどPC環境で使用される製品の充実が顕著で、Apple、Adobeなどのブースの集客が増えています。今年の話題はなんと言っても「HD(High Definition)」で、各社がさまざまなHD対応製品を発表していますが、その中でもHDを今後のロードマップのテーマとして掲げたという意味で、Appleの製品は注目を集めています。
Appleは、HD対応を鮮明に打ち出したFinal Cut Pro HD、Final Cut ProとDVD Studio Proの連携をさらに強化するMotionと、DVD Studio Pro 3という3つの新製品を発表しました。では、DVD Studio Pro 3はどこが新しくなったか、新機能の中身を見てみることにしましょう。
■DVD Studio Pro 3の新機能
今回のアップグレードでは、当然DVD Studio Pro 2ユーザが感じていた問題点がいくつか修正されているのですが、カスタマイズ可能なトランジション付加機能が追加されたことで、デザイナー、フォトグラファー、映像クリエータ、コンテンツオーサーなど、アマチュアやプロといった垣根を越えて、クリエイティブマインドを持った幅広い人たちをDVD制作の面白さに引き込んでしまうほどの、魅力にあふれた製品に仕上がっています。

○トランジション付加機能
今回のアップグレードの目玉だと思われる機能で、メニュー、トラックやスライドショーの1枚ごとに対して、トランジションの付加と即時プレビューが可能になりました。「アルファ・トランジション」と呼ばれる機能でトランジション効果のカスタマイズもできますので、他のアプリケーションに戻って作業をしなくても、新たな効果の追加や修正がDVD Studio Pro 3の中でできます。作業時間の節約になるだけでなく、DVD Studio Pro 3が、様々な素材を集めてオーサリングするためのコンテンツオーサリング・プラットフォームとでもいえるものに進化したと言っても過言ではないでしょう。
○グラフィック表示
今回のアップグレードでディスク内のオブジェクトの様子をグラフィカルに見ることができるようになり、大変便利になりました。この画面で接続の変更や追加が可能です。これまでのアウトライン表示と切り替えて、さらに柔軟なオーサリングが可能になりました。
各オブジェクトのリンクの様子をアイコン表示する方法は、DVD Studio Pro 1で既に採用されていましたが、今回の機能は、その機能の復活と言うより、ユーザの声を反映させ、他社製品の良いところも積極的に取り入れて新たに開発されたものと言えるでしょう。アップル社の発表では大がかりなプロジェクトの一覧表示やグラフィックプレビューをPDF出力してクライアントに見せることができる点を紹介していますが、ケース・バイ・ケースで目的に応じてグラフィック表示とアウトライン表示の使い分けができる点が大きなメリットといえます。

○DTS対応
プロフェッショナルユーザから要望の多かったDTS(Digital Theater System)サウンドファイルを使用できるようになりました。DTSは、名前の通り劇場映画に良く用いられているフォーマットで、ハリウッド映画のエンドロールの最後でよくロゴを見かけます。
→ DTSのページ:http://www.dtsonline.com/
DVD Studio Pro 2が既に対応していたDolby AC3との違いは、簡単に言えば遙かに高い音声サンプリング周波数を設定することで、より高音質のサラウンド音声を実現している点で、音を重視するDVDコンテンツを制作する際にDTSを指定するクライアントも次第に増えてきています。
これまで採用されていなかった理由は明確に述べられてきませんでしたが、おそらく、ライセンス費用が発生することと、一般的なDVDの視聴環境でDTSサウンドの再生に対応した機器が普及してないとの判断があったからだと思います。DTSに対応したことで、名実ともにDVD Studio Pro 3はプロ用のツールとしてのハードルを1つ越えたことになります。
なお、DVD Studio Pro 3本体はDTS形式のサウンドファイルを読み込めるようになりましたが、エンコード環境は用意されておらず、A.PackやCompressorでDTS音声ファイルにエンコードすることはできませんので注意が必要です。DTS音声ファイルを作成するには、別途専用のサウンドシステムが必要になります。(参考:http://www.japan.steinberg.net/nuendo2/intro.html)
○Compressor 1.2(現時点で無償アップデート可能)
・MPEG-1のサポート
コンテンツクリエイターからの要望に応えた機能として、MPEG-1出力のサポートが追加されました。

※Compressor1.2は既にダウンロード可能になっていますが、MPEG-1のプリセットは用意されていません。ここでご紹介した画面では、新たにプリセットを作成してみました。
書き出せるMPEG-1はエレメンタリーストリームおよびシステムストリームで、設定可能なビットレートは最高2.0Mbps。画角に関しては、「フレームレート」のポップアップメニューで23.976、25、29.97のいずれかを選択した場合は320×240に固定され、フレームレートを「自動」に設定すると自由に数値を入れることができます。今回のMPEG-1対応は、主にDVD制作を行っているユーザにはメリットが無いと思いますが、Final Cut Proを使ってCD-ROM用の映像素材作りを多く手がけている方たちには朗報といえるでしょう。
・HDデータから直接MEPG-2を書き出す機能
元々Final Cut Pro 4には、拡張ボードなどを追加すればSD非圧縮やHDデータを編集する機能がありましたので、Compressorを介してMPEG-2にしてしまえばDVD Studio Pro 2でもHDソースを使ったDVD制作が可能だったのですが、実際にはFinal Cut Pro 4側で画面サイズを変更するなどの処理が必要でした。今回のCompressorの改良で、画面サイズの違いを意識せずにCompressorから16:9アナモフィックのNTSC/PAL規格のMPEG-2が生成できるようになったため、HDデータの「ワンソース・マルチユース」を効率良く行うことができます。
・バッチ処理設定の保存
Compressorはバッチ処理アプリケーションとして大変便利ですが、これまでは、同じバッチ処理の設定を残すには、アプレットを作るしか手がありませんでした。今回のアップデートで、バッチ処理設定も保存できるため、より効率的なエンコード処理が可能になりました。

○ジャケット・ピクチャ機能
DVD-Videoにはジャケット・ピクチャ(Jacket_P)という機能が用意されており、DVDプレイヤーの停止時にテレビ画面に指定した静止画を表示させることができます。DVD Studio Pro 3はこの機能をサポートしていますので、この機能をサポートしたDVDプレイヤーでビットマップ形式で用意した静止画イメージを表示させることができます。必須の機能ではありませんが、市販のコンテンツを制作する場合のオプションとしては有用で、クリップの一場面などをきれいにデザインしておけば、ひと味違ったコンテンツにすることができます。繰り返しますが、設定した静止画は、ジャケット・ピクチャ表示対応のDVDプレイヤーでなければ表示できません。
○フォーマット機能の拡張
書き出せるディスクフォーマットにDVD-RW、DVD+R、DVD+RWが加わりましたので、MacintoshとMac OS Xがサポートするドライブを接続すれば、DVD-RAMを除いた市販のDVDメディアには すべて対応したことになります。もちろん、書き出されたディスクのDVDプレイヤーとの互換性に関しては、プレイヤーと各メディア間の対応状況によりますので、配布媒体として使う場合は注意が必要であることは言うまでもありません。
○iDVD4プロジェクトの読み込み
DVD Studio Pro 2ではiDVD4で用意されたテンプレートを使って作成したプロジェクトを読み込んだ場合、テンプレートが正しく再現できませんでした。今回のアップデートでは、この問題が修正されただけでなく、iDVD4で設定したメニュー/トラック間やスライドショーの画像間のトランジションも正しく再現されるようになりました。
■今回のアップデートの要点は?
DVD Studio Pro 3は、バージョン番号の1の位が上がる、いわゆる「メジャー・アップデート」になりますが、DVD Studio Pro 1からDVD Studio Pro 2になったときのような大幅な変更、改良ではなく、DVD Studio Pro 2ユーザからの声を基に、いわばクリエイター向けのDVD制作ツールとしての位置づけをより鮮明に打ち出したもので、1)DVDコンテンツ制作プラットフォームに求められる機能の整備と、2)HD対応DVDへの布石、の2つがメインテーマになっています。
トランジション付加機能は、非常にクリエイティブなDVD制作を指向した優れた機能で、インターフェースデザインを重視される方には、購入費用/アップデート費用に見合った効率が得られると思います。また、DTSサウンドを使ったDVD制作を念頭に置いていたユーザには、大変なコストパフォーマンスを発揮するDVDオーサリングツールが現れたと大歓迎されるでしょう。
しかし、たとえば圧倒的に処理速度が向上したとか、一般的な仕様のDVDを制作する上でどうしても欠かせない機能が追加された、あるいは、これまでどうしてもできなかったことが今回のバージョンで簡単にできるようになった、というわけではないので、DVD Studio Pro 2ユーザの多くは追加機能の中身を良く検討してからアップデートされても遅くはないと思います。また、HDデータの編集やHDデータからエンコードしたMPEG-2データを使ってDVD Studio Proで現行のSD仕様のDVD-Video制作を行うケースの多いFinal Cut Proユーザの方には、Final Cut Pro HDおよびCompressor 1.2へのアップデートが無償で提供されています。
とは言っても、DVD Studio Pro 3が、Final Cut Pro HDともども、今後確実に形となって出てくるHD DVD(High Definition DVD)に対応していくための布石となるアップデートであることは確実ですので、筆者としては、周辺技術や機器の動向を見ながら、折を見てアップデートされることをお薦めしておきます。