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谷川俊昭さんインタビュー

2016.05.16 | 島田修二

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みなさんこんにちは。
編集部の島田です。

4月27日に発売された新刊「週刊将棋30年史 ~アマプロ平手戦・対コンピュータ将棋編~」のことはみなさんご存じ、ですよね?



今回、週将アマプロ平手戦のヒーローの一人であり、谷川浩司九段のお兄様でもいらっしゃる谷川俊昭さんにお話を伺う機会がありましたので、その模様を掲載したいと思います。

谷川様は将棋が強いということでも有名なリコーを退社され、現在はネスレ日本の神戸本社にご勤務されているとのこと。お忙しい中ご協力いただきありがとうございました!

それでは、週刊将棋30年史発売記念、特別インタビューのはじまりはじまり~。

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島田「初めまして、本日はよろしくお願いします」

谷川「こちらこそよろしくお願いします」

島田「早速ですが、週将アマプロ平手戦の思い出というか、当時の状況について教えていただけますでしょうか」

谷川「かれこれ30年くらい前の話なので、私も記憶が曖昧なんですが、当時は将棋世界、将棋ジャーナルなど、各誌でアマプロ戦が行われていました。今ではアマチュア棋戦で上位に入るとプロの公式戦に出られるというのは普通のことになりましたが、当時はそういう制度はなかったので、その意味では非常にいい機会を与えてくれた企画でしたね。
特に週刊将棋のアマプロ戦は、勝つとその上の段の棋士と対局できるということで、大いにモチベーションになりました」

島田「私は当時の記事を読んで、アマVSプロの団体戦のような感じに思えたのですが、選手としてもそのような感覚はあったんですか?」

谷川「そうですね。当時はリコーが非常に強いときで、私を含めリコーの方が何人か出場していましたから、職団戦のような雰囲気もありました。また、第4回のチャイルド・ブランドが出てきたときは4人VS10人ということでしたから、これはアマチュアの代表として負けられないぞ、という感じがアマチームにあったように思います」

島田「実際にプロ棋士とやってみてどうでしたか?」

谷川「私も当時は脂が乗っているときで、やればなんとかなるという感覚はありました。当たり前ですけどプロは本筋の手をやってくるので、ある意味アマチュアよりぶつかりやすい、やりやすい面はあったかと思います。佐藤康光さんとやった対局(第4回アマプロ平手戦、結果は谷川さんの勝ち)などは角換わり棒銀の定跡形(下図)になりましたから、序盤はやりやすかったですね」



島田「谷川さんは対振り飛車でも棒銀をよく使われていましたね」

谷川「そうですね。加藤一二三先生に倣った、わけではないんですが(笑)。私は初期のころの私の弟と同じで、『早く終盤になればいい』というタイプで、穴熊など序盤の長い将棋は苦手で、薄い玉でどんどん戦いを起こしていくのが好きなんです」

島田「谷川さんは第1回から第4回まで連続で出場されて、結果は4勝4敗でしたね」

谷川「そうです、全部1つ勝ってその次に負ける、というパターンでした。でも他紙も含めたアマプロ戦のトータルでは3割も勝っていないので、週将のアマプロ平手戦は相性のいい大会だった、ということになりますね」

島田「3割も勝っていないといってもすごい人と当たってますし、すごい人に勝ってるじゃないですか」

谷川「ええ、やはり佐藤康光さんに勝ったのは後の名人ですから、将棋ジャーナルで羽生さんに勝てたことと合わせて思い出深いです」

島田「ではその佐藤先生の対局から印象深い場面をあげていただけますでしょうか」

谷川「そうですね。▲4四銀打(下図)としたところでしょうか。



ここから△4二飛▲3三銀不成△4五飛▲4四銀引不成と銀不成の二段活用で飛車を詰ますことができました。



△4七飛成と成ってきても金を上がって。この辺は飛車が好きな私らしい手順かなと思います」

島田「銀が不成で戻ってきて、面白い手順ですね。終盤で一場面あげるとすればどこでしょう?」

谷川「やっぱり▲4四歩(下図)と突いたところでしょうね。角取りと飛車成りを見ています」


※以下、△5八銀不成▲7九玉△4四角▲7四飛△8七歩▲5二金!まで谷川アマの勝ち

島田「鮮やかですねー。かっこいいです」

谷川「いえいえ」

島田「週将アマプロ平手戦というと、やはり一番盛り上がったのは第2回、ということになるかと思います。小林アマが四段から七段までプロを連破しました」

谷川「小林君の受け主体の腰の重い将棋がプロ棋士相手に力を発揮したということだと思います。連戦連勝で、次は誰が出てくるんだ、というのがいつも話題になっていました。田丸さんや南さんはよく引き受けてくださったと思います。

島田「小林さんをプロにしたらどうか、という話も書いてありましたね」

谷川「ええ、彼がプロになったらどこまでやれるんだろう、と考えたことはありました」

島田「谷川さんご自身は当時プロになりたいという考えはなかったんですか?」

谷川「きちんと勉強すればどうなっていたか分かりませんが、私の場合は弟もいましたし、今さらなっても、という気持ちもありましたので、それは考えませんでした」

島田「なるほど。ちなみに現在は将棋とどのように関わっていらっしゃいますか?」

谷川今はただの観るファンになってしまいましたね。私は活躍期間が非常に短いアマチュアでして、30代前半に仕事で海外に1年くらい行ったんですがそれから戻ってきたらとんと勝てなくなってしまいました。そこで勉強すれば持ちこたえたのかもしれないんですが、もともと勉強して強くなろうというタイプではなかったので駄目ですね。やっぱり将棋は勝てないとつまらないですから、30代後半からはほとんど指さなくなってしまいました」

島田「今は年に何局くらい指されるんですか?」

谷川「いや0ですよ。ここ5年間でも人に呼ばれて1局指したくらいです」

島田「なんと!そうなんですか」

谷川「ええ、だから今はただの観る将棋ファンです。最近はもっぱら麻雀ですね。競技麻雀の大会に参加して、上位を目指して頑張っているところです」

島田「観る将棋ファンですかー。なんだかとてももったいないような気もするんですが・・・。いや、もうこうなったら麻雀で日本一目指してください!」

谷川「ハハハ。まぁ頑張ります」

島田「今日は長い時間ありがとうございました。いろいろと貴重なお話をしていただきまして」

谷川「いえいえ、こちらこそありがとうございました」

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谷川さんとお話させていただいて、才能の塊のような人だと感じました。
現在は将棋から離れてしまっているということで少々残念ですが、そのうち麻雀の世界でその名を轟かすことでしょう。

そんな谷川さんの活躍が読める「週刊将棋30年史」は現在絶賛発売中です!
週刊将棋が切り取った、一つの時代を振り返ることができる記念碑的一冊、ぜひ読んでみてください。