(続)羽生善治三冠 新春SPインタビュー「新たなる挑戦の始まり」 | マイナビブックス

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(続)羽生善治三冠 新春SPインタビュー「新たなる挑戦の始まり」

2017.01.19

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みなさま、こんにちは。将棋世界編集部の鈴木です。
将棋世界1月号2月号で「羽生善治三冠 新春スペシャルインタビュー」を掲載いたしました。1月号に掲載した「三冠を死守した激闘の軌跡」に続き、2月号に掲載した「新たなる挑戦の始まり」の一部を公開いたします(前編「三冠を死守した激闘の軌跡」はこちら)。


新春スペシャルインタビュー【後編】
羽生善治三冠
「新たなる挑戦の始まり」

【インタビュー構成】小暮克洋
【撮影】中野伴水

試練のタイトル5連戦、最後の関門であった王座戦で糸谷哲郎八段を退け、三冠を死守した羽生善治。感覚の違う若手を相手に、絶対王者の羽生は何を恐れ、どこに勝機を見いだしたのか。ひと区切りがついたいま、羽生の視線はまっすぐ前を向いている。
最新形を指すことへの意欲や葛藤、コンピュータ将棋が台頭してきた現在の将棋界についてなど、率直な思いを大いに語った。




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第64期王座戦五番勝負
[第1局]9月6日、[第2局]9月20日、[第3局]10月4日
羽生善治王座 ○○○3 防衛
糸谷哲郎八段 ●●●0


対応できるかどうか

――王座戦五番勝負は挑戦者に糸谷哲郎八段を迎え、昨年9月に開幕しました。2―3でカド番に追い込まれた王位戦七番勝負と、並行しての防衛戦です。
「糸谷さんとのタイトル戦は初めてでしたし、前回の対局とは1年近く間が空いていて、どういう形になるかは予想ができませんでした。力戦派なのは間違いないので、出たとこ勝負じゃないですけれど、やっていく中でうまく対応できるかどうかが大きいのかな、と思っていました。とにかく、どこから何が飛んでくるのかわからないのが特色です(笑)。終盤の逆転術も独特だと思います」
――糸谷さんへのインタビュー(昨年12月号・第3局観戦記)では、彼は終盤に時間を残す羽生さんの戦い方がむしろ印象的だったと話していましたが。
「いや、まあ、しかし早いですよね。2局目は170手もかかっているじゃないですか。それなのに、糸谷さんがまだ持ち時間を1時間残しているというのは、どういうことなんだろうか、と。終局後に棋譜を見て、愕然としました(笑)。こんな手数になったら、普通はどんな早指しの人でも秒読みになるはずですから。こちらの時間配分については彼がいろんな手を指してくるんで、それに対応するために、もちろん時間を残しておいたほうがいい、というのは大事なことかと思っていました。局面そのものが悪くなってはどうしようもないので、考えるときには考えなくてはいけないんですけど」
――糸谷八段自身は、本当は深く突き詰めて終盤のベタ読み勝負に持ち込むのが得意であると語っています。しかし、今回は成長の一里塚に位置づけて、もちろん勝ちたいけれど、広く浅くいろいろやろうと思っていたようです。彼は中終盤でのごちゃごちゃした力勝負なら強いんだけど、序中盤の力戦形でしくじっている自覚があるようなんです。経験豊富な人には序中盤で差をつけられてしまい、中終盤で自分のペースに持ち込めていない、ということのようなんですが。
「ええ? そうなんですか。毎回、あちらからの誘導で力戦形になっている印象があったので、そんなふうに思っているとは考えたこともありませんでした」

――このシリーズは、第1局の勝利が大きかったでしょうか。第1図から、▲2六角△3六歩▲5三角成と進みました。
「△3五歩と打たれたこの局面までは、自分としては普通に指していたつもりだったんですけど、不思議な気持ちになりました。先手番ですし、もうちょっと主導権が取れていてもおかしくないのに、気がついたらもう、銀を捨ててやっていくしかなくなっていたので驚いたのを覚えています。後手番で1手損している居玉の相手に、なんでこっちが駒損を甘受しなくてはいけないのか。おかしいなあ、おかしいなあ、と首をひねりました」
――第2局は、後手番の羽生さんが珍しく四間飛車を採用しました。
「少し前に銀河戦で優勝した藤井猛九段が、この指し方を連採して勝ち続けていたんです。それを見て、これは意外といい戦法なのではないかと……。昔からある形ではあるんですけど、まだ改良の余地があるのだとわかり、どこかでこの将棋を指したいと思っていました」
――実際に試してみて、どうでしたか。
「うーん、やっぱり指しこなすのは難しいですね。私はスペシャリストではなく、久しぶりにやったということもあるのかもしれませんが。非常にきめ細かいんですよ。序盤早々〝この手がきたときはこの手で〟というところをかなり深く理解していないと大変ですね。何となく棋譜を見たり、調べたりしている程度では難易度の高い戦法なのだなと思いました。ただ実際に指した感じでは、まだまだ可能性がある戦型のような気がします」

申し訳ございませんが、今回はここまで。王座戦の総括のあとには、「最新形への思い」、「将棋を指すことのモチベーション」など、未来への話と続きます。また最後には、ウェブで募集した「教えて!羽生さん Q&A」のコーナーもございますので、ぜひ「将棋世界2月号」でご覧ください。
なお、「将棋世界3月号」(2月3日発売)の予約も開始いたしました。こちらもお楽しみに。