糸谷・斎藤が振り返る、全タイトル戦~『平成30年版 将棋年鑑 2018』より|将棋情報局

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糸谷・斎藤が振り返る、全タイトル戦~『平成30年版 将棋年鑑 2018』より

『平成30年版 将棋年鑑 2018』の巻頭特集は「羽生善治 永世七冠への軌跡」「記録部門独占!藤井聡太の1年」「新しい波 菅井王位、中村王座インタビュー」「糸谷・斎藤が振り返る、全タイトル戦」「特別講座 1年間の流行戦法総まとめ」の豪華5本立て。本記事では、関西若手実力者の糸谷哲郎八段、斎藤慎太郎七段がこの1年を大いに語った「糸谷・斎藤が振り返る、全タイトル戦」の一部をご覧いただきます。

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 今年も羽生の棋聖、王位、王座の連続防衛戦で始まったタイトル戦だったが、菅井、中村太の奪取により絶対王者羽生の時代もついに終わりを迎えるかに見えた。しかし、羽生は不死鳥のごとく復活を果たし竜王を奪取、名人挑戦者にも名乗りを上げる。終わってみれば羽生は二冠を保持、それ以外は6人の棋士が6つのタイトルを分け合うという戦国時代に突入した。
 大きな時代の転換点となったこの1年を、棋界を牽引する若手棋士糸谷哲郎八段と斎藤慎太郎七段の関西コンビに大いに語ってもらった。

第88期棋聖戦(6月1日~7月11日)
羽生 善治棋聖 ○○●○3 防衛
斎藤慎太郎七段 ●●○●1

硬くなった初タイトル戦

糸谷「挑戦者決定戦がわれわれですから」

斎藤「いきなりすごい(笑)」

糸谷「斎藤さん、羽生棋聖と五番勝負を戦われていかがでしたか?」

斎藤「初めてのタイトル戦でしたし、羽生棋聖と対戦するのも第1局が2回目だったので、正直、ほぼ初手合いという印象でした。普段以上に慎重になってしまったかなと思います。最初の第1局は特に硬くなっていました。あっという間に時間がたち、気づいたら終盤になっていた、という印象です」

糸谷「初めてのタイトル戦でしたら和服ですとか、気になる要素も多いと思います」

斎藤「途中で和服が着崩れていないかなと、多少気になるところはありました」

糸谷「全4局を通してずっと秒読みになっていましたよね」

斎藤「第1局は中盤くらいで秒読みになってしまい、最後の正確性がなかったのは悔やまれます。第1、2局はそのあたりで苦しんでしまいました」

糸谷「第2局も早い段階で残り10分になっていましたね」

斎藤「中盤でどうしても手を選び切れないですとか、そういった局面が多かったです。タイトル戦になると、普段以上にそういった簡単に決断できない状態になってしまうというのを、今回のシリーズで学びました」

糸谷「逆に第3局は5分余して勝ちましたね」

斎藤「第3局までに他の棋士の方から、行儀が良すぎるというか、相手が考えればこちらも考えるような、読みが合いすぎているのではないかと言われました。ここにきてやっと伸び伸びやろうという気持ちを持てました。第3局に関しては、序盤であまり指したことのない作戦を思い切って選んでいきました」

糸谷「挑戦の一局だったということですね」

斎藤「そうですね。徐々にタイトル戦ってこういうものなんだと、やっと気づけたかなと。第3局に勝って1番返したとはいえ、連敗スタートはどうしても厳しかったですね」

─シリーズで印象に残る局面は?

斎藤「唯一勝利できた第3局の終盤でしょうか。▲7三金(第1図)と打った手があったのですが、偶然にも浮かんだというか、緊張していたのでずっと読んでいたわけじゃなかったのですが、パッとひらめいてすんなり指すことができました。この一手で急に良くなったと感じ、手もしなっていたと思います。そういう意味でも印象に残っています」

─羽生棋聖と五番勝負で時間を共にされていかがでしたか?

斎藤「ほとんどお会いすることのなかった先生で、盤を挟んでみてもなんというか、伝説の人というイメージはありましたけど、感想戦でも和やかに話してくださいました。タイトル戦の感想戦ですと、その後の対局のこともあるので序盤はあまり検討されないのかなと思ったのですが、細かくその時々のことを話されていましたので、勝負師であると同時に、将棋が大好きなのだなということが伝わってきました。シリーズ通して印象的だったのは、こちらのミスは見逃してもらえないなということです。それが顕著に出たのが第4局でした。序盤の作戦が良くなく、苦戦に陥ってしまい、そこからの差はどうしても埋まらず、30手目前後くらいからの微差を守りきられました。自分なりに粘り続けられたとは思いますので、そこはポイントとして次に生かそうかなとは思います」

 

 

将棋年鑑本誌ではここから、王位戦、王座戦、竜王戦、王将戦、棋王戦、叡王戦、名人戦の総括、女流棋界の1年についてへと進みます。

締めくくりはやはり、1年を振り返る際に避けては通れないこの人について。

 

藤井聡太七段の活躍

─話題の多かった2017年度の将棋界を振り返ると?

糸谷「やはり藤井七段でしょう。去年のこの欄を見ても藤井さんって書いているんですけど(笑)。今年も藤井さんのニュースだけで1ページ以上が埋まるでしょうが、中でもやはり朝日杯での優勝は見事でした。羽生竜王との準決勝は悪い局面もあったかなと思いますが、最後の広瀬章人八段との決勝戦は素晴らしい内容でした」

斎藤「決勝戦などは割と1分将棋が長かったと思うのですけど、本当に見事でした」

糸谷「トッププロと互角以上に戦って、おまけにあの成績ですから。ポカ負けのようなことがないんですよ。ミスが少ない。なんというかあの若い世代の方は、昔だと荒削りという表現になると思うんです。羽生先生の若いころの棋譜を見ていても、すごい手も多いけど、序盤では先ほど言った荒削りな手も多いんです」

斎藤「終盤の逆転術で勝たれている将棋が多いですよね」

糸谷「ところが、藤井さんはそうじゃないんです。序中盤もうまくてリードを守って勝つ将棋が多いんです。残り時間があっても、キッチリ決めきるのは簡単なことではないです」

斎藤「序盤がしっかりしていて終盤は負けにくく指している。そりゃ勝ちますよね」

糸谷「すごい高勝率ですよね。最高勝率記録を塗り替える可能性もありますよ。連勝記録をさらにのばす可能性も……」

斎藤「それは他の棋士が頑張って止めないといけません(笑)」

 

 

この特集の全文は『平成30年版 将棋年鑑 2018』でお読みいただけます。

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