【将棋世界】女流棋士の現在地 砂原奏女流2級|将棋情報局

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【将棋世界】女流棋士の現在地 砂原奏女流2級

國學院高等学校在学中に女流棋士となり、現在は慶應義塾大学法学部で学ぶ砂原奏女流2級。アマチュア時代には小・中・高の全国大会を制し、第16回白瀧あゆみ杯争奪新人登竜門戦では準優勝を果たした。学業と対局を両立する砂原女流2級に、女流棋士としての現在地を聞いた。

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好きなことを職業にできた嬉しさと大変さ

──2023年に女流棋士になってからの数年間を、どのように振り返りますか。

「好きなことを職業にできたのは、すごく嬉しいです。ただ、その分大変なこともあると、この数年で痛感しています」

──大変なことというと?

「対局で勝ち続けなければ、この仕事を続けていけませんし、学業との両立も大変です。厳しい世界だと思うこともあります」

──大学に入ってから、将棋との向き合い方は変わりましたか。

「勉強がより忙しくなり、仕事の幅も広がりました。いまは、学業、対局、イベントなど、いろいろなことを調整しながら過ごしている時期だと思います。大学に通いながら将棋でも結果を残している先輩方を見習って、自分も両立したいです」

──アマチュア時代には、第16回白瀧あゆみ杯争奪新人登竜門戦(2022年)で予選優勝されました。

「予選を抜けられたこと自体が、まず驚きでした。女流棋士の先生方は格上だと思っていましたが、女流棋士になったときには勝っていかなければならない相手でもあります。本戦も頑張りたいという気持ちでした」

──本戦では鎌田美礼女流2級、野原未蘭女流初段を破り、決勝で和田はな女流1級と対戦され、準優勝でした。

「決勝までの過程が本当に大変でした。女流棋士の先生方は簡単には勝たせてくれませんし、粘りや力の入り方が違うと感じました。白滝あゆみ杯はそういう点で、女流棋士として戦っていくことのビジョンが少し見えた経験であり、そこで結果を残せたことは自信になりました。着物を着させていただけたのもうれしかったです」

「粘り」を武器に、序盤を磨く

──ご自身の棋風をどのように捉えていますか。

「粘り強い将棋で勝つことが多く、そこは長所だと感じています。負けそうになっても、簡単に勝たせないという意志は強いほうだと思います。ひっくり返して勝つこともあります」

──最近の女流順位戦でも、200手近くまで指された将棋(中倉宏美女流二段戦、結果は勝ち)がありました。

「序中盤はあまり自信がなかったのですが、手数と時間が延びると勝ちやすいのかなと思いますし、周りからもそう言われます」

──持ち時間は、長い将棋と短い将棋のどちらが好みですか。

「昔は長いほうが好きでしたが、最近は短いほうが好きです。自分は序盤型というより終盤型なので、短いほうが実力を発揮しやすい気がします」

──終盤が強い一方で、課題は序盤だと考えているのでしょうか。

「はい、持ち時間が短いと序盤でやや失敗しても大丈夫なこともあるのですが、持ち時間が長いと序盤で失敗すると結構大変なことになります。今は、序盤の勉強もするようにして、勉強方法は変わってきたと思います。もう少し終盤の負担を減らしたいです」

──慶應義塾大学の将棋部から受ける影響もありますか。

「大学将棋は序盤研究をとても大事にしているので、参考になります。授業の空きコマに指しに行ったり、研究会にも参加したりしています」

──慶應義塾大学将棋部は強豪という印象があります。

「2025年度の学生王座戦では優勝していました。強い方が多く、自分も鍛えられています。男子が圧倒的に多く、本格的な部活動なので、初心者の方には少し入りにくいかもしれません(笑)。でも、初心者や女子も大歓迎です」

──普段はどのように勉強されていますか。

「実戦をかなり指しています。大学の将棋部で指したり、インターネットで指したり、同年代の女流棋士に対局をお願いしたりしています。同世代で活躍されている方を見るのは、とてもよい刺激になります」

女流順位戦の現在地

──女流順位戦について伺います。リーグ戦を1年通して戦う難しさはありますか。

「モチベーションの維持が難しいです。最初のほうで負け続けると、その時点で昇級の可能性がなくなってしまいます。今期は最初の1、2局で連敗して、かなり落ち込みました」

──どのように立て直しましたか。

「全体の成績はもうあまり見ないようにして、目の前の一局一局を大事にしようという感じでした」

──現在は4勝3敗です(インタビュー時)。

「可もなく不可もなく、という感じです。連敗した頃から考えると、勝ち越しか指し分け以上にはできそうなので、何とか頑張ったかなと思います。ただ、昇級に絡めていないのは悔しいです。最終戦も残っているので、次期につながるように頑張りたいです」

──印象に残っている対局はありますか。

「3敗目の将棋は悔しかったです(6回戦、八木日和女流1級との対局)。途中まではうまくいっていると思っていたのですが、力の差が出たというか、実力差を感じた将棋でした」

──相手と先後があらかじめ決まるリーグ戦は、準備しやすい面もありますか。

「相手も先後も決まっているので、私は準備しやすいことを前向きに捉えています。ただ、相手から研究されることは、あまり考えていなかったです(笑)」

目標とする存在

──福間香奈女流五冠、西山朋佳女流三冠をどのように見ていますか。

「お二人とも奨励会を経験され、厳しい勝負を重ねてこられたのだろうと感じます。タイトル戦の記録係を務めることもありますが、盤の前の熱気や緊張感もすごくて、『負けたくない』という気持ちが伝わってきます。西山先生は大学の先輩でもあり、大学関係のイベントでお話しさせていただくことがあります」

──憧れる棋士・女流棋士を挙げるとしたら。

「高校の先輩でもある和田あき女流二段です。高校生で女流棋士になられていたので、それを目標にして自分も頑張れた部分があります。A級に在籍されていた経験もお持ちですし、女流棋士会の役員として普及にも力を入れていらっしゃいます。実力面でも、将棋以外の活動でも尊敬しています」

──最後に、今後の抱負をお願いします。

「まだ頑張れるところがたくさんあるというのが本音です。いま、女流2級なので、まずは初段を目指すことが第一歩です。順位戦はなるべくいい成績で終えて、来期に昇級を目指せるような位置にいられるよう頑張りたいです」


 終盤での粘りを強みに、序盤の精度を磨きながら次の一局に向き合う砂原女流2級。学業や普及活動にも意欲的に取り組みつつ、まずは女流初段を目指す。これからのさらなる活躍が楽しみだ。

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著者

皆瀬しょうこ(著者)
藤井聡太竜王・名人の活躍をきっかけに将棋観戦の面白さに魅了され、実戦にも取り組むようになる。
観る将と指す将の両方の視点から、棋士の人間味と盤上の奥深さを楽しんでいる。趣味は棋譜並べ。